ワルカからやってきた三人組
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蛍の目が覚めた時、テントの中にはすでになまえはいなかった。いつもなら彼女の不在に心配をしてしまうが、今日は逆にほっと息を吐いた。そして安堵した。
この顔を見られずに済んだから。ひどい顔をしていると自覚しながらも夢の余韻に浸るように彼女は動かなかった。それからしばらく先ほどまで見ていた夢を引きずって、ぼんやりとしていた。足音が近づいてきたことに気がついたのもそんな時だった。その音と共に近づいてくるのは慣れた気配。見なくてもわかる。仲間のものだ。
「――起きろ。あいつは先に森に入ったぞ」
「…………」
かけられた声に反応していると示すために蛍は顔を上げた。そして視線を彼にうつす。蛍に声をかけてきたのは彼女が想像していた通り、ダインスレイヴだった。彼はなまえと同じように蛍と旅をしている仲間だった。
「なんだ起きていたのか」
「うん……」
起き上がっていた蛍を見たダインスレイヴは返事をしなかった彼女に対して当然の反応を返した。なかなか起きてこない仲間である蛍に声をかけたのはなまえがすでにこの場にはいなかったからである。今朝方何かを感じて早く目が覚めたらしいなまえは不寝番していたダインスレイヴにそのことを話すと森に行きたいと言った。
それから彼女は3人分の朝食を用意して、それを食べ終えると先に森のほうへと向かっていったのだ。朝からやけにやる気に満ちたなまえに蛍の分の朝食を押し付けられたダインスレイヴはとりあえず彼女が起きるのを待っていた。しかしなかなか彼女は起きてこず、不審に感じたダインスレイヴは蛍のもとへと来たというわけだ。そして、テント内にいる彼女と目を合わせてようやく蛍の異変の理由に気が付く。
「……血縁者の夢でもみたのか?」
「……」
彼の目に映る蛍の顔には真新しい涙の跡。ダインスレイヴの問いかけに、彼女は何も答えずにうつむいた。蛍が兄を探していることは当然ダインスレイヴも知っていた。カーンルイアで別れたっきりの兄の事が心配だと折に触れて話していたから。
「……まあいい、貴様はここで休んでいろ。俺はなまえを追って、そのまま森の奥を調べてくる。……あの方向音痴が待っていればいいが」
涙の跡が滲む蛍を残してダインスレイヴは森の方へと向かうことにした。彼女には1人の時間が必要だ。そう思うと同時に、森に先に入ったであろうなまえのことが気になった。先程彼が口にしたようになまえには方向音痴という致命的な欠点があった。無事に旅を続けるためにもなまえを早く見つけて捕まえとかなければならない。
気落ちしている様子の蛍のことは気になるが、それでもその実力は本物だ。兄の夢を見て彼のことを思い出し、感傷に浸っていたとしても、いざ戦闘になれば気持ちをうまく切り替えられる。だから1人にしておいても大丈夫だろうとダインスレイヴはなまえの元へと向かうことに決めた。そして立ち去ろうとする彼に蛍は一言だけ口にした。
「……なまえのことよろしくね」
それに蛍にとってのなまえもまた行方不明の兄同様に大切な存在だと知っていたから。蛍はいつもなまえのことを心配していた。そしてダインスレイヴもまた同じようになまえを気にかけている。先に森へと向かったなまえのあとを追いかけるように彼はこの場から立ち去った。