新参者の光来
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それから少しばかりして、ようやく落ち着いたなまえは胸に手を当てて皆に向き直った。
「はあ……、ごめんなさい皆さん。まさか閑雲ちゃんがこの姿で璃月港を歩いているなんて思わなくて、驚いてしまいました」
人間の姿、ではなく「この姿」と言葉を濁したなまえの様子から見ても、すっかり落ち着きを取り戻せたようだ。
「オイラ達も奥蔵山で聞いた時は驚いたからな。それにはじめ見た時は閑雲を訪ねてきた他の仙人だと思ってたよな」
「うん、なまえさんも気にしなくても大丈夫だよ」
数日前の出来事を思い出しながら、パイモンと空がなまえのフォローをする。2人の言葉や戸惑うなまえに優しく接してくれた鍾離と閑雲の優しさにまた感謝の念が湧いてくる。
「それなら良かった……あ、ご飯食べに行く途中だったんですよね! ごめんなさい、皆さんわざわざ寄ってくださり、ありがとうございます」
「かまわぬ。妾もなまえに会いたかったからな。それに甘雨と申鶴もきっと喜ぶだろう」
「甘雨ちゃんと申鶴さんも一緒なんだね。ふふ、楽しみだなあ……」
閑雲の二人の弟子は璃月港に住んでいる。しかし同じ璃月港にいるといっても、いつも会えるわけではない。だから閑雲の弟子に会うのもなまえにとって楽しみである。そこまで話して、余裕ができたなまえは閑雲の横で静かに成り行きを見守っていた彼女の新しい幼い弟子を見た。動揺して混乱していた姿を初対面の子供に見られて恥ずかしい気持ちもあったが、その気持ちは隠してなまえは彼女について改めて閑雲に問いかけた。
「それでそちらの……漱玉さんが閑雲ちゃんの新しいお弟子さんなの?」
「うむ。2日程前に弟子にしたばかりの子だ。よろしく頼む」
「なまえさん、よろしくお願いします」
「はい、こちらこそよろしくお願いしますね漱玉さん」
先ほどの失態と言える動揺について謝った後、閑雲の仲介を経て漱玉に改めてなまえは挨拶をする。礼儀正しく答えた漱玉になまえは幼いながらにしっかりしているなと感心した。それから改めて閑雲が予約している店に向かう道すがら、なまえはふと疑問を覚えたので彼女に尋ねてみることにした。
「そういえば、どうして急にご飯を食べに行くことになったの?」
「妾が宝物を売ったことでモラが入ってな。それで皆に声をかけた。鍾離殿もその場に立ち会われていたからお誘いしたのだ」
「え、そうなの?」
閑雲の答えになまえは不思議に思った。
それはつまり、鍾離も売買現場に立ち会ったということになる。
「ああ、実は紹租殿の依頼人というのが彼女だったんだ」
「そうだったのですか?まさか、あの方の依頼人が閑雲ちゃんだったなんて思いもしませんでした」
閑雲に引き続いて鍾離がなまえに紹租の依頼人が彼女だったことを告げる。そのことになまえは納得した様子で閑雲や空達との思いがけない再会の理由に納得を示した。
「実は璃月港に住むには何かと入用だと聞いていたのだ。モラを得るために幾つかの宝物を売ろうと思ったのだが、相手が妾の態度に不審を抱いておったようだ。それゆえに鍾離殿に依頼したのだと話しておったわ。しかも、妾と鍾離殿が知り合いだとわかれば鍾離殿の事まで疑ってきおって……」
そこまで話したとき、閑雲は両腕を組んだ。少し語気が荒いように感じるのはその時のことがよほど不快だったのだろう。
「ふん、まったく不敬な奴であった。まあ、最終的には改心したようであったから、そやつに宝物を売ってやったがな」
「そうだったんだ……。でも、旦那様が向かわれた先に閑雲ちゃんがいたなんて、世間って狭いのね」
閑雲が持っている宝物は彼女がずっと保管していたものだ。彼女が仙人であるということを明かさずに取引を行なったために、そのような誤解が起こってしまったのだろう。仕方ないと言えば仕方ないが、宝物が本物だとわかっているからこそ、疑惑の目が向けられるのは良い気分でない。しかもそれが敬愛すべき帝君にも向けられていることが発覚したなら尚更である。紹租の方もまさか仙人と神に同時に対面しているなどとはつゆほどにも思っていないだろう。
「それに閑雲ちゃんが食べに行こうって言うなんて珍しいね」
「そうか?」
「うん。だって、閑雲ちゃんなら作っちゃうでしょ?」
なまえは彼女が作った数々の作品を思い浮かべた。たしか調理に関するものもいくつかあったはずだ。そう思ってなまえが閑雲に尋ねると、彼女は今回のこの食事会について皆を歓待する以外にもある理由があることを教えてくれた。
「ふむ……、他の皆にはすでに話してあるのだが、実は腌篤鮮というものが気になっておってな」
「腌篤鮮? あれ、それって旦那様の……。閑雲ちゃんは食べたことなかった?」
腌篤鮮といえば鍾離の得意料理でもある。折に触れてなまえに披露してくれる料理でもあるから、よく知っている。時間のかかるものだけど、それだけの価値はあるものだ。とても美味しくて、ほっぺが落ちそうという比喩を毎回のようにする料理でもあった。たしか去年の海灯祭の頃に削月築陽真君と理水畳山真君と共に作ったとかなんとかで、なまえの分も持って帰ってきて振る舞ってくれた。その際に使った調理器具の名前は「からくり調理神器」。……。
「(あの2人は借りっぱなしなんだろうなあ……)」
なんだかんだ言って楽しく過ごしているであろう削月築陽真君と理水畳山真君の姿を想像した。閑雲が腌篤鮮の味を知らないということは、そういう事なのだろうとなまえは結論づける。もしもその時に返していたならば、作った料理のお裾分けはするはずだから。
「うむ、先程も鍾離殿にも同じような指摘を受けたが、妾には食べた記憶がないのだ」
「えっ、そうなんだ。あ、でも確かにそうかもしれないね」
あの2人も仕掛けの術は、からきしだと言っていたこともあって閑雲の作る物に一目も二目も置いている。ピンばあやの幼い弟子のために作った月桂からわかるように閑雲はからくりを他者のために作ることも多い。彼女自身も使ってもらうためにいろいろなからくりを作っていることもあり、貸すことを厭う性格ではない。そんな彼女の寛容さになまえも助けられてきた。
「だって閑雲ちゃんは面倒見がいいものね。もし、また機会があれば旦那様の腌篤鮮も味わってみてね」
「ああ、是非頂きたいものだ」
なまえの言葉に閑雲も頷いた。その時、目的の店先に立つ彼女の二人の弟子の姿が見えた。
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なまえ
お茶を飲みながら待っている嫁。美味しいお茶を飲んでほっこりしていたら璃月港にいるはずのない友が長い間見ていなかった姿で現れたのでとても驚いた。
鍾離
なまえと一緒にお茶を飲んでいたら鑑定依頼を持ち込まれた。まさかその先で友人に出会うとは思わなかった。
閑雲
転居にあたって資金を得たかった仙人。自慢の弟子達や友人達がこぞって璃月港に住みだしたので興味津々だった。同じように隠居しているはずの老骨どももこっそり遊びに行って璃月港を満喫していることを知っていた。自身は遊びに行くのを通り越して、引っ越すことにした。良いタイミングで新たな弟子もでき、上手にごまかす事もできるので一安心。だがおそらく旧友達は皆、彼女の本音を大体察している。
漱玉
閑雲の新たな弟子。諸事情により、家族と離れることになったので師匠と共に住むことに。新しいお洋服を師匠に作ってもらってルンルン。
空
閑雲に聞いていたので、彼女の引っ越し先を見に来た。とりあえず本日のパイモンの食費を考えなくて良くなったので一安心。
パイモン
頭の中では様々な美味しい料理が輪になって踊っているであろうと簡単に想像できるほどの食いしん坊。美味しいものにはとても敏感。