踏み出せば青い空
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「空くーん! パイモンちゃーん! こっちこっち~!」
手を振って空とパイモンを呼び込むなまえの姿は隣にいる美少年も相まって通行人達の注目の的だ。
「なまえ! ……魈も! 本当に来たんだな!」
「うん、2人とも誘ってくれてありがとう。もう楽しみで早く来ちゃった」
嬉しそうに笑うなまえの片手にはしっかりと美少年こと魈の手が繋がれている。ここはテイワット最大の貿易港、璃月港の入り口。今日も千岩軍が門番として立つそこに彼らはいた。
「ここに来るのいつぶりだろ……魈は海灯祭の時に来たって言っていたけど……」
その言葉にパイモンは首を傾げて、空は窃盗未遂犯の事件の解決を頼まれたあの一瞬だけ滞在したことかなと思った。あの一瞬で来た事になるのかどうかは大いに疑問である。そんなことは知らないなまえはとにかく興奮してはしゃいだ雰囲気を隠し切れてなかった。
「私は全然来ることができていなかったから、すごく楽しみだったの!」
興奮しているなまえを見て空もパイモンも思わず笑みがこぼれた。魈の雰囲気もなんだかいつもより柔らかい。いや、なまえといる時は比較的そんな雰囲気ではあるなと空は思いなおした。
璃月港に共に来て欲しい。そう魈が空に話を持ちかけたのは空の塵歌壺の中での事だった。ピンばあやからもらった塵歌壺を良い感じに内装することができた空は出会った知り合いに声をかけまくって塵歌壺に招待することを決意した。望舒旅館で出会ったなまえと魈の2人もその対象で、声をかけてみるとなまえが早速行きたいと目を輝かせた。
「……塵歌壺? 空くんたち塵歌壺持っていたの?」
「おう! ピンばあやにもらったんだぞ!」
望舒旅館に魈と共にいたなまえは空が塵歌壺を持つことに驚いた。なぜなら塵歌壺は仙人の力で作れるものである。外景の力で壺の中に空間を作り出す仙人独自のものである。
「それでやっとオイラたちの塵歌壺の中が良い感じになってきたんだ! だから、お披露目しようと思ったんだ」
「お披露目……? どういうこと?」
パイモンは新築祝いのパーティー程度の感覚でお披露目といったのだがなまえは首を傾げた。パイモンの言っていることがわからなくて魈を見たが、彼もよくわからないらしい。なまえ達仙人にとって塵歌壺とはそんな内装を整えるものではなかった。基本的に仙人は質素な生活をするのが当たり前で、必要最低限のものを置いておくからだ。
「俺たち内装とか張り切っちゃって、なかなかいい出来になったから他の人にも見てほしいなと思って」
「わざわざピンばあやが用意してくれたオイラ達の新しい家だからな。家の中も外もいろいろ物を配置したんだ!」
「……ふんふん、なるほど。そういうことだったのね。私は行きたいな。空くんとパイモンちゃんの新しいお家見てみたい」
空とパイモンが詳しく説明してくれたおかげで合点が入ったなまえはにっこりと笑った。気合を入れて飾り付けるなんてやっぱり凡人らしいなとなまえはとても楽しくなった。凡人が塵歌壺を彩るとどんな風景になるのだろうか。
「なまえ! オイラが隅まで案内してやるぞ!」
「うん。是非見てよ。魈はどうする?」
「……仕方ない。なまえが行くなら我も行こう」
乗り気ななまえにパイモンが嬉しそうにくるりと回った。それを見て空は今まで興味なさそうに黙っていた魈にどうするかと尋ねると、少しだけ考え込むように黙った後、なまえが行くならとため息をついた。相変わらずの2人に仲がいいなあと空とパイモンは心の中で微笑ましく思っていた。そのような経緯で2人は一番乗りで空の自慢の塵歌壺の客人となったのだった。
「わあ……! すごい……魈すごいね!」
「そうだな」
空の塵歌壺は質素な仙人の塵歌壺とは違った。庭の部分には木や建物が建てられており、一つの小さな都市のようだ。見たことのない建築様式の物も見えるが他国のものだろうか。生憎璃月の外に出たことのないなまえにはわからなかった。そして邸宅も豪邸とも言えるほど大きくなまえは感嘆の声を上げた。
「塵歌壺の中ってこんな風にもできるんだね!」
「ふふん! そうだろ? オイラも一緒に手伝ったんだぞ」
「パイモンはほとんどベッドで寝てただけだったような……」
「おい! ちゃんと手伝っただろ!」
えっへん! と自分が褒められたかのようなパイモンに空が小さくつぶやいた。そんな空の言葉を聞き流すことなくしっかりとパイモンはいつものようにツッコミを炸裂させた。
パイモンの宣言通り、なまえは塵歌壺内に設置された建物の説明をパイモンから聞いていた。
「パイモンちゃん、あちらには何があるの?」
「あそこには鍛冶場があるんだぞ!」
「ええっ! 鍛治までできるなんてすごいね!」