希望の枝葉
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「なまえも一緒に踊りましょう」
手を引いて共に踊ってくれた時、私は彼女がやさしい人だと思った。この赤紫の花を私の頭に挿してくれた時も名は体を表すというように花のように美しくて優しい人だとそう思った。
それは今もずっと変わらない。
だから私は、彼女はずっと一つの恨みを抱いていたことを最後まで気がつくことができなかった。
―――
昼間なのに空が暗い。こんなにも暗いのはあの災いのせいだ。黒い黒い漆黒が地下からやってきたせいだ。そしてこれは、あれに似ている。この世界にもたらしてはならないあの災いと似ている。私がここにいるのもその災いのせい。彼女が決意してしまったのもそのせい。彼らが死んでしまったのもそのせい。災いがすべてを変えてしまった。
「ごめんなさい、なまえ。迷惑をかけるわ」
「大丈夫。大丈夫だよ。だから安心して、私が必ず守るから」
これは最後に交わした言葉。謝る必要なんて万が一にもないと思ったけど、それは言えなかった。それが彼女の優しさであり、美徳だったから。
「ありがとう……、なまえが私の眷属でいてくれて本当によかった」
「私もあなたの眷属になれて……よかった……」
あなたと私、たった2人だけの秘密。世界を揺るがす秘密。墓場まで持っていかなければならない秘密。
「アランナラ達も大丈夫。あの『虎』は森を守ってくれるよ。だから無事に暮らしていける」
そうは言ったけど私はこの漆黒から彼らがすべてを守れるなんてとても思えなかった。これはそれほど強大なものだ。私が思えなかったのだから聡明な彼女も私の言葉が嘘であることは見抜いていたと思う。
「そうね、……そうよね。彼はアランナラ達を守ると約束してくれたもの」
でも、彼女は私の言葉に理解を示してくれた。それはこれからの行く末を彼女が介入することができないことを知っていたからだ。これは別れ。この国の誰もが慕った彼女の最期。
「……あのね、なまえ」
「なあに」
「私も、守るわ。×××を守ることがスメールの民達をはじめとした全てのものを守ることに繋がるはず。だから、私が……――」
これは遺言。私だけが知る彼女の遺言。その先の言葉は大切に持つその枝ごと私の胸の中に深く刻まれた。そしてマハールッカデヴァータはこのスメールから姿を消した。