黄金の代償
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ーーしばらくの間、雪山には来ない方がいい
アルベドが私にそう言ったから、素直に従って今は彼とは別行動をしている。アリスの導きで西風騎士団に入った彼とは違い、私は錬金術師でもなかったから騎士団には入らずに自由気ままに生きている。その方が騎士団に入るよりもずっと彼と共にいられるから。彼が雪山に行く時もいつもなら私も共に着いて行っていた。けれど、今回は彼がそういうからモンド城内に残った。彼が雪山に行くと長く帰ってこない。だから会えないのは寂しいけれど、アルベドが何の理由もなく私に雪山に立ち入るなとは言わないから我慢した。
そして、何日かした後たまたま往来であったスクロースが昨日アルベド先生に会ったのだと私に教えてくれた。いつものようにわからないところを教えてもらったとそう言っていた。彼女の目はアルベドへの尊敬の念が多分に込められていて私は彼が他人から慕われるのを見ると嬉しくなる。実は少しだけ嫉妬しているのは内緒だ。でも大丈夫。だって、彼女が知らないアルベドを私はたくさん知っているのだから。
しかし何よりも私が気になったのは雪山に行ったはずのアルベドがモンド城にいたという事実であった。アルベドは雪山に行くというとしばらくはモンド城に戻ることはない。だから彼がここにいるはずがないのだ。では、スクロースが嘘をついているのか。それもあり得ない。彼女が私に嘘をついたことなど一度もないし、彼女は私に対してとても親切でいてくれるから。
――だったらなぜ?
そうは思ったけれど少ない情報ではその理由を推理することはできなかった。
「なまえ」
その後、しばらくしてその疑問が解けることはなく、私はそれと対面していた。その姿を見たときは気がつかなかったけど、心のどこかで小さな違和感があった。しかしそれが私の名を読んだ瞬間、完全に目の前のこれが彼ではないと理解した。そしてこれが何なのかも私は知っていた。
「……なまえ?」
けれど私は何もしなかった。私の彼の姿をとったそれに気づかぬふりをした。
「どうしたの、……あなた」
これはあの『黄金』の欲求を満たすためだけに作られたものだ。私の彼と同じ。でも、彼とは違い失敗作として捨てられた。彼女はそういう人だ。自分の欲求を満たすためならどんなことでもできる人。だからかもしれない。すぐにそれだと指摘しなかった。それにスクロースが彼に指導を受けたと聞いていたから私も彼の芝居に付き合うことにした。それでも私は彼の名前は呼べなかった。だっていくら姿形が彼でも、これは彼じゃない。そして、これが何という名を持つものなのかも知らなかったから私には目の前の彼の名を呼ぶことすら許されていなかった。
「雪山に行っていたんじゃないの?」
「……うん、少し気になることがあって」
「そうなの? ……珍しいこともあるのね」
これはおそらくずっと狙っていたはずだ。観察していたと思う。私の彼になる為に静かにそっと見守っていただろう。だから、アルベドが雪山からすぐに降りてこないことも知っていたのだ。
「……なまえ、キミは……――」
「あなた」
何かを言おうとしたそれの言葉を私は遮った。そして、何も知らないふりをした。口をつぐんだ彼を見てもしかしたら彼は私が私の彼と2人だけの時はそう呼ぶことを知っていたのかもしれないと思った。
「ねえ、あなた」
私はさりげなく、いつものようにそれの手をとった。形も感触もアルベドと同じだった。クレーは今、反省室にいる。だから、クレーの安全は保障されている。これが私に何をしても、クレーに影響はない。あの妹のように可愛い幼子が危険に晒されるようなことはない。
それに私はこれと初対面ではない。これが自我を持つ前に『黄金』の彼女と共に見ていた。私は彼女の友である。同郷のよしみだ。錬金術師の考えなど理解できない。彼女のこともアルベドのことも好きだけど、私は錬金術は嫌いだ。ゼロから何かを作り出すなどそんなことはしてはいけない。それは人の領域ではないことだ。今でもそれは変わらない。
それでも『黄金』は私の友だった。そんな友に生み出された彼ら。まさか、成功させるなんて思わなかった。あのフラスコに生命が宿るなんて、そんな人智を超えた所業が許されるはずもなく……。……。……あまり考えるのはやめよう。それからの事なんて考えてもむなしくなるだけなのだから。
「一度帰ろう? 外は暑いから涼しい場所に行こうよ」
私は何も知らないかのように、アルベドに接するように彼に問いかけた。家の中に入れるなんてアルベドが聞いたら怒るかな。でも、これの真意がわからない以上は野放しにはできない。そんなことを考えながら私は一歩踏み出した。彼も私に続くように歩いた。しばらくして握った手をそれは握り返してきた。少しだけ意外だった。思わず彼を見ると目が合う。何も言わずに頷いただけのそれの手にもう一度力を込めて、私は彼と共に家へと向かった。
設定※魔神任務第3幕5章「カリベルト」の重大なネタバレありますのでお気をつけください※
なまえ
純粋なカーンルイア人。瞳はコンタクトか何かをして偽装している。『黄金』の友人ではあるが魔女会は未加入。ずっと一緒にいたわけではないけれどアルベドと一緒にモンドに来てそのまま居着いた。錬金術は好きではないけれど、『黄金』の所によくいたから錬金術のことは実は真理まで理解している。もちろん彼女の侵した罪も知っている。ガイアのことも知っているがアルベド以外には話していない。
アルベド
なまえの恋人。ほぼ夫婦みたいなものだけど見た目に限れば2人とも歳が若いため恋人ということにしている。今は雪山ソロキャンプ中。
???
アルベドのそっくりさん。なまえは『黄金』の友人であったこともあって早い段階でアルベドではないと見抜き、それが何かだと気づいた。偽装は完璧。彼に会う前にスクロースに会ってその様子を聞いていたためになまえは彼を即排除ではなく家に連れて帰ることにした。
スクロース
アルベドの弟子。有望株の内気な女の子。忙しいアルベドに色々教えてもらえて嬉しかったがそれが偽物だったとは気づいていない。間接的に偽物を助けることになった。
クレー
なまえとアルベドの妹(仮)。アリスが騎士団に預けていったので2人と一緒に住んでいる。アルベドと同じようにクレーも騎士団に所属している。先日、郊外で楽しくドカーンしたのでジン団長にみつかり自ら反省室で自主謹慎中につき、家にはいない。