しあわせを願って
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ディルックがなまえと結婚したことを世間が知った時、世間はその結婚を歓迎しなかった。反対の理由はただひとつ。彼女がラグヴィンド家に相応しくないという評価があったからだ。ディルックの生家であるラグヴィンド家はグンヒルド家と並ぶモンドにおける貴族の名家である。だからこそ、その出自には煩いところがある。当の本人に何の落ち度がなくても家名というのはついてまわるものである。
「……ごめんなさい」
なまえは人生で何度目かの告白に断りを入れていた。何度目かと言ったが幾人もの人から好意を寄せられているわけではない。自分に好意を向けてくる物好きなどいるわけがない。そう思っていたけれど彼は違った。西風騎士団の団服を着たその人は本来であればなまえとは敵対関係にあると言われるような人物である。
「それは……僕が君の“敵”になるからか?」
「……敵だなんて、そんな……ただあなたに対して感謝はしていますがそれ以外の、感情はないというだけです」
彼の名前はディルック・ラグヴィンド。西風騎士団の若き騎兵隊隊長である。
なまえとディルックの出会いは単純だ。魔物に苦戦するなまえをディルックが助けただけのこと。だけどまさか騎士団がなまえを助けるとは思わなくて彼女はとても驚いた。しかも無事に魔物を倒したあと助かったという安堵からか、それとも疲れからか腰が抜けてしまったなまえを運ぼうとまでしてくれた。それはさすがに断ったがなまえが回復するまでの間、危ないからとそばにいてくれた。
「あの……。どうして、私を助けてくれたのですか?」
「僕は騎士だ。魔物に襲われている女の子を助けるのは当たり前だろう」
そう。当たり前である。騎士団はモンドの人々を守るのが仕事である。しかし、その当たり前の範疇に自らが含まれていないとなまえは思っていた。
「でも、……私は、ローレンスです。騎士様だってきっとご存知だったでしょう。罪人を助けるなんて……変です」
彼のその燃えるような赤髪を見ればラグヴィンドの人間だと一目で分かるようになまえもローレンスだとわかるようにその印章をつけている。だからディルックはなまえがローレンス家の人間だと知って助けたのだ。
「僕は君がローレンスだとしても困っていれば必ず助ける。それは騎士として当然のことだからね。それに千年も前の出来事で君を罪人などというつもりは僕にはない」
「……騎士様は、」
他のモンド人とは違う。そう思ったがなまえは言葉に出せなかった。言い淀んだ彼女の姿を感じ取ったのか、彼はなまえに話しかける。
「僕の名前はディルック。ディルック・ラグヴィンド。騎士様じゃ誰かわからないし呼びにくいだろう。名前で呼んでくれてかまわない」
「ディルック様……。私はなまえ・ローレンスです。先ほども申しましたがローレンスの人間です。……モンドにはあなたのような方もいるのですね」
なまえにとって初めてまともに会話した一族以外の人間。それがディルック・ラグヴィンドであった。こうして敵対しているはずの2人は出会ったのだった。
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