二者択一はままならぬ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
――――
背後に嬉しそうな帰終の声が聞こえる。
帝君と語り合う声は弾んでいて評価された嬉しさで溢れている。
こういうときなまえが静かなのはいつものことだ。
彼女にとって仕掛けの術の話は難しく、わからない時は話半分に違うことを考えていることが多い。
そう思うと同時にこちらに近づく足音に足を止める。
「留雲ちゃん……!」
「なまえか」
「うん。……あの、」
「……わかっている。妾とて自信作だとは言いながら帰終のほうが出来が良いと思ってはいたのだ」
何かを言いたげななまえを遮るように妾は口を開く。
受け答えはしても振り向かないのは少し意固地になってしまっているからだ。
妾のからくりよりも帰終のほうが優れていると帝君は判断なされた。
帝君は公正な判断に長けている。
それが彼の本質なのだ。
だからこそ、その判断は信頼を得ており皆が帝君を敬うのだ。
そして何より妾自身仕掛けの術を嗜むものとして帰終の実力を知っていた。
「帰終の仕掛けの術は妾よりも優れている」
なまえが来たことで口には出したくなかった言葉が漏れた。
なまえには不思議な力がある。
それこそあの“目”の力を使わずとも。
彼女がその力ありきの娘ではないことを妾は知っていたのだ。
その時ぎゅっと、衣服が引っ張られる感じがした。
思わず振り向いてしまった。
なまえが妾の服を掴んでいた。
「なまえ、妾の服に皺が寄る。離してくれると嬉しいのだが」
「……留雲ちゃん、ご飯食べに行こう」
「……?」
妾の言葉を無視したなまえ。
なまえはこのようにたまに突拍子のないことを言うことがある。
「私お腹空いちゃった。マルコシアスに美味しいもの作ってもらおう」
「……そうだな。それも良いかもしれぬ」
突拍子のないことは言うがそれが何の意味のないことというわけではない。
なまえは妾のためにそう言ったのだとすぐに気づいたのはなまえの付き合いの長さゆえのことであった。
「悔しい気持ちは美味しいご飯に混ぜて皆で食べちゃおうよ!」
「……そうだな」
これからもう少し術の研究をしようかと思ったが、明るく誘うなまえの声に料理を食す方が良い気がしてきた。
マルコシアスの料理は竈神というだけあってとても美味く、妾もその料理は気に入っている。
「それでまたいろんな仕掛けの術を見せて! 私にも教えてね。だから、今からご飯食べよ! 帰終ちゃんと旦那様も呼んで、……他の皆も一緒に、ね?」
小首を傾げたなまえに急な展開に戸惑いながらも頷いた。
そんな妾になまえは笑顔を見せた。
「あっ!それとも……2人の方がいい? それなら盛り上がってる2人はほっといて……、こっそり行っちゃう?」
自身の口元に人差し指を押し当てて意地悪そうになまえが笑いかけてきた。
妾もなまえも2人で行ったとしてもどうせ後から2人はやってくるのだとわかっていた。
なまえのことが大好きな2人は何も言わずに消えた彼女を探しあてるだろう。
そして、帝君がなまえと共にいることで周りに仙人たちも集うはずだ。
そうしたらまたいつものような宴が始まる。
マルコシアスも張り切って料理を作るだろう。
それを知っているから妾はなまえの提案に首を振る。
詰まっていた感情が溜息と共に外に出た。
体が軽くなった。
そんな気がした。
おちゃめななまえの態度に沈んでいた心も少しだけ軽くなった。
そんな妾の様子に気づいたのかなまえは掴んでいた妾の服をパッと離す。
「それなら待ってて! 盛り上がってる2人を呼んでくるから!」
そうして、振り返って2人の名を呼びながら彼らのもとへと走っていった。
こういう時、妾はなまえには勝てぬ。
彼女はその見た目よりもずっと、それこそ妾よりもずっと長生きだと知っているから。
風に吹かれて舞い落ちる葉を見ながら妾は待つことにした。
先程まで目に入らなかったのに、木々やその向こうの雲海が視界の前に広がったのはきっと妾の心に余裕ができたからだろう。
視界の向こうでなまえが帰終と帝君のもとにたどり着いたのが見えた。
それからなまえはいつものように帰終と仲良く腕を組んで空いた片手で帝君を引っ張りながら2人を連れて来るのだろう。
設定
なまえ
帰離原の居候魔神(仮)。2人をはじめとしたさまざまな仙人たちから仕掛けの術等の話を聞くのは好き。ちょっと作ったりもするけど他の仙人たちには足元にも及ばないほど下手である。だからこそなまえが何か作ると皆アドバイスしたくなって彼女の周りには仙人達が集うことが多い。ちなみに帝君を無理矢理引っ張って走り回れるのはなまえだけだともっぱらの噂。
帰終
塵の魔神。なまえにとってはずっと笑っていてほしい友達。色々な物をつくるのが好きで、同じように仕掛けの術に没頭する留雲借風真君とは時折、議論や批評をしたりして切磋琢磨してたりする。なまえにも仕掛け時の術の楽しさを知ってもらおうと簡単なからくりを教えたりしたりするがなまえはいつまで経っても上達しない。でも楽しくしてくれてるからいいかと思っている。
留雲借風真君
仙人。なまえにとってはずっと尊敬に値する友達。彼女もなまえに仕掛けの術を教えているが一向に上達しない。原因はまったくわからないがなんとか上達できるように色々工夫している。だが残念ながらその兆しは見られない。
帝君
岩の魔神。なまえにとってはずっと大好きな旦那様。皆に頼られる公明正大な人物で彼の判断なら大体納得して受け入れられている。なまえに対しては少し心配性な面が見られたりする。