呪われた夜を超えて
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そのころ、望舒旅館のオーナーに助言を得るために階下に来た空達。彼らはヴェル・ゴレットの隣にいた旅館の支配人である淮安のふたりと話していた。
「今年の海灯祭もそろそろ終わりだけど、やっぱり行かなかったのね」
「……はあ。ここ数年、あの方が海灯祭に行ったのを見たことがありません」
残念そうに魈について話す望舒旅館の2人。だが淮安の言葉にヴェル・ゴレットが思い出したように口を開いた。
「そういえば、なまえ様が旅館にいらっしゃった時にはご覧になったみたいね」
「「……なまえさま?」」
「そうでしたね。普段は海灯祭の時には当旅館には顔を出されませんがあの年は珍しく、ここにいらっしゃいましたね」
なまえという言葉に空とパイモンは反応を示した。ヴェル・ゴレットの言葉を引き継ぐように2人の疑問を解決してくれたのは淮安であった。それを聞いてまた新たな疑問が湧き上がる。
「なまえと一緒なら……海灯祭に行くのか?」
パイモンの疑問は当然のものだった。空もパイモンも、なまえと魈の関係性を知らない。迎仙儀式で起こった事件で仙人の協力を得る時に2人は共にこの旅館にいた。なまえが空達に託した願い、そして先程の魈の様子……。そこから考えても2人がただならぬ仲であることは容易に想像できた。
「でも、なまえさんは用事があるって」
「だよな……でもさっき魈が言ってただろ?『ひとりで行っても』って。それってなまえとなら見に行ってたってことか?」
「そうかもしれない。だけど」
「……そうだよな。なまえはここに来られない大事な用があるみたいだし」
なまえと魈の2人で明霄の灯を見に行けるのなら彼女は空に魈を連れて行って欲しいなどと頼まなかったはずだ。
「それなら海灯祭に行くよりも、海灯祭をここに持ってくる方が簡単かもしれませんね」
空達の会話を聞いていた淮安が冗談まじりで言った。その一言がパイモンに天才的な閃きを与えた。
「それだ! 魈が海灯祭に行かないのなら、海灯祭を持ってくればいいんだ!」
パイモンが良い案だと自画自賛する中、淮安は戸惑いを隠せなかった。だがその戸惑いもパイモンの言葉によって覆される。
「たくさんの美味しいものときれいな霄灯。あと……うん、過去の英雄、それと昔の友人たち。――これが海灯祭のすべてだろ?」
パイモンは空と共に海灯祭について色々学んだ。その経験で得た海灯祭の知識だった。場所が重要ではないとパイモンは思ったのだ。パイモンの言葉に胸を打たれた淮安とヴェル・ゴレットは2人に旅館の敷地内の人通りの少ないそれなりの広さがある場所を提供してくれた。そこに簡単な屋台と霄灯の飾り付け、さらに料理まで用意してくれた。中でも屋台をあっという間に建てた淮安の木工技術は目を見張るものがあった。とにかく、これで旅館で海灯祭を行う準備は整ったのだった。あとは魈を連れてくるだけだ。魈に再び会いに行き、旅館の下に海灯祭を持ってきたことを伝えた。チ虎魚焼きと杏仁豆腐があると伝えたおかげかはわからないが魈は下に降りてくれた。空達の思惑はうまくいったようだ。それから一緒に食事をした。
「よし、ご飯も食べたし、次は明霄の灯を見に行こう」
パイモンと空の今日の一番の目標は魈に明霄の灯を見てもらうことである。
「魈も一緒に行こうよ」
「お前たちだけで行け。我は興味はない」
そう断られるが、空もパイモンもなまえのためにも引き下がるわけにはいかない。
「じゃあ、せめて近くまで送ってよ」
「オイラたちを送るくらいはしてくれてもいいだろう?」
そこまで言ってパイモンは困ってますというような顔をした。
「ここから璃月港までは遠いし、郊外は危険だ……そうどこもかしこも危険だらけ!!」
大袈裟なほどに怯えた動作をしてパイモンは空に目配せをした。空も「そうだそうだ」と言うように何度も首を縦にふって頷いた。2人ともなんとか魈を璃月港まで来させようと必死である。結局根負けしたのは魈だった。
そうして璃月港の近くまで空とパイモンを送り届けた魈は2人と別れた。
彼らが璃月港内へと入るのを見届けた時、明霄の灯が灯された。無数の霄灯が浮かび上がり、移霄導天真君を
――私のわがままに付き合ってくれてありがとう
あの時も同じように無数の霄灯の下にいた。けれど今と違いなまえも一緒だった。彼女が見たいというから魈はついて行った。今と姿の変わらない思い出の中のなまえが笑う。魈の思い出の中のなまえも笑顔が多い。
「……」
彼女の笑顔を思い出して、無数の霄灯をみて。空とパイモンの言葉を思い出して魈の胸の内に温かい何かが感じられたような気がした。自身も気づかぬうちに魈の口角は少しあがっていた。