呪われてあれ、我が生よ
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夢を見たような気がする。
「どうせ死んでも良いって……。そう思っていたんでしょ?」
いや、これは間違いなく夢なのだ。
聞こえた声と背後にあらわれた気配がそうだと伝えていた。
「あなたが今生きているのは死ぬためだって」
次いで後ろからまわされた暖かな手。
「……だから、私はあなたに呪いを残した」
その手の持ち主が誰かわかっていたから魈にしては珍しく拒絶どころか何も動きを見せなかった。
その手を簡単に受け入れて、背中に当たるぬくもりに気付いても何もせずにしたいようにさせた。
「――」
それから彼の耳に届いたのはのはもう誰も呼ばない彼の本当の名。
それを紡ぐ声は記憶と寸分も違わず安堵した。
彼女のことを忘れていないと確認できたから。
「……なまえ、」
その声に呼応するようにまわされた手に己の手を重ねた。
それから、ただその姿を確かめたくて振り向くように魈は後ろを見ようとした。
けれどその前に背中に頭を押し付けられた。
だから彼女の顔を見ることは叶わなかった。
「――あなたが」
彼の行動を遮るようにしたなまえはその行動を咎められる前に口を開いた。
「あなたがずっと生きていられるように」
返答を望まず一方的に話しかけてくるだけの声は記憶の中と寸分たりとも変わらない。
夢の中だから当然だろうと思われるかもしれないが、これは夢であって夢ではないことも魈は知っていた。
背中からまわされた腕に力が込められているのはなまえ自身の意思であることを知っていた。
彼女はもう死んでいる。
生きて璃月の地では会えないと知っているからこそ、もう一度顔が見たかった。
だが彼女はそれを良しとしなかった。
振り向かせることはなく、そのために背後から抱きつかれた。
だから彼が確認できるのはなまえの腕とその声だけだった。
見える手の形も懐かしく、あれからどれほどの時が経ってしまったのかと思いを馳せずにはいられない。
「今もずっと好きよ……あなた」
「……っ」
その言葉に彼が動揺したのは彼女の言葉が意外性を帯びたものだったから。
なまえが愛してくれていたことは知っていた。
彼もずっと同じ気持ちだったから。
あの時まで同じ気持ちを分かち合い、共有して生きてきたから。
だからこそ彼は動揺を隠し切れなかった。
そして振り返ることなく口を開く。
もう振り向くことはできない。
顔は見せたくなかった。
きっと情けない顔をしている。
彼女にすら見せたくない。
前を向いていた顔が少しだけ俯いて、魈は小さく口を動かした。
「……――――――」
「……うん、大好き」
そして彼が呟いた負い目はなまえにしか聞こえなかった。
それで良かった。
彼の弱音を聞くのは彼女だけの特権だったから。
そんな彼の弱気を知ってなまえは彼に回した手に少しだけ力を込めた。
安心させたい。
大好きな彼だけはずっと忘れないでほしかった。
「……忘れてないよ。私はあなただけの……」
そうして答えたなまえの答えを知るのも彼だけの特権だった。
それからしばらくの間、魈はなまえに抱きしめられていた。
暖かい温もりだけが2人を繋いでいた。
でも、そんな時はいつまでも続かない。
本来ならば2人が出会えるはずがないからだ。
本当はずっとこうしていたかった。
それはできないことは2人とも理解していた。
夢の中では生きていけないことも知っていた。
だから別れは必ず訪れる。
「――――お別れだね、魈」
「なまえ……」
「大丈夫だよ。私はずっとあなたを見守っている。だからまた会える……」
それは今ではない、そう遠回しに語りかけられた。
だから名残惜しむ暇も、振り返る暇もなくなまえとの再会は幕を閉じる。
「約束したもの。あなたがいつか死ぬその時まで……――――ずっと、」
眠いわけでもないのに視界は暗くなる。
離れたくないとそんな言葉も彼女の言葉に肯定することもできずに彼の視界は切り替わる。
「ずっと……お待ちいたしております」
なまえの言葉は魈の耳にやさしく響く。
そんな声に見送られるようにして魈の目の前は真っ暗に変わる。
それと同時に魈は……救われた。
目の前に見慣れた景色が現れて彼はまだ生きているのだと悟った。
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なまえ
魔神。かつて魈と同じように岩神に手を貸していた。しかし人々を救うために犠牲となり死んだ。他の多くの魔神と同じように魂だけの存在となって地中にいる。いつの日にか彼と共に死ぬために。
魈
仙人。なまえと死に別れてからもずっと彼女のことを忘れていない。だから彼女に呪われたまま。いつか必ず彼女と共に死ぬと決めている。でもそれは今ではない。