夢のような夢の外
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「……鍾離、先生ですか?」
「ああ。往生堂に来れば会えると聞いたんだが」
目の前に立つ男の用件を再度確認した時、やはりまた謝らなければならないと彼女は思った。
「申し訳ありません。鍾離先生は現在、休暇中なのです。ですから当分の間往生堂には来られません」
「休み? どこに行けば会えるんだ?」
「それが……、先生はいま郊外旅行中なのです。璃月のどこかにはいらっしゃると思うのですが」
「……旅行?! うーん、困ったな……。いつ帰ってくるかとかはわかるのか?」
往生堂の客卿である鍾離先生は博識である。
璃月の大抵のことは彼に聞けば間違いない。
……と、この国の有識者は口を揃えてそう言う。
それほど彼の知識は正確である。
それ故に璃月人や璃月の外から来た何かを探す人は大抵鍾離のことを紹介されることになる。
目の前の男もそうやって紹介を受けたのだろう。
「堂主によれば1ヶ月ほど休暇申請をされているとのことですが、どうなさいますか?」
「……いまどこらへんにいるとかはわからないか? 旅程とかは知らないか?」
往生堂はその生業の特殊性から夜間営業である。
昼間、扉は閉じられている。
しかし木札に要件を記入し往生堂へと投げ入れれば渡し守と呼ばれる案内役の往生堂の従業員がひとり往生堂内から現れる。
そして今回のように昼間に来た客人の対応をするのだ。
「申し訳ありません。誰かの案内とかでしたらわかるのですが……、今回の旅行は生憎と先生の個人旅行なものですから……」
「ふむ、そうか……。旅の日程はあと2週間ほどなんだ。はあ……、仕方ない。他の識者にお願いするよ…」
渡し守を務めている女性は肩を落として帰る男を申し訳なく見送りながらも、またかと心の中で思った。
「(鍾離先生を訪ねてこられる方には申し訳ないわ。けれど、せっかくなのだから先生には満喫してきて欲しい)」
鍾離が休みをとって幾日か経過した。
その間に彼を訪ねてきた人が幾人かいたのだが皆先ほどの男のような経緯で気落ちしながら往生堂を後にしていた。
そのほとんどが考古学者や評論家であり、彼に顧問してほしいという依頼がほとんどだ。
彼に対する依頼は往生堂経由で引き受けていることもあり、いつもなら料金について話した後、引き受けるのだが生憎今はそうもいかない。
「(だって、奥様との郊外旅行なのだから邪魔はいけないわよね)」
そう件の我らが客卿殿は現在、最近突然現れた奥方との郊外旅行中なのだ。先生は否定されたがそれが蜜月旅行であるというのは往生堂の従業員全員の認識であった。