真実を知るのは今日ではない
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「!」
体に衝撃が加わって私は目を覚ました。目の前にはセンパイの顔があって驚いて離れようとするが、なぜか離れられない。がっちりと抱えられて、……センパイに助けられたのか。
「ほらな。約束通りちゃんと受けとめてやっただろう?」
そう言うセンパイは誇らしげに見えた。結果から言おう。猫は無事に保護できた。そして私は木から落ちた。お話としては決まりきったものだし想像もついただろう。あれだけのお膳立てがあったのだ。落ちないわけがない。
いや、待て。それでは私がわざと落ちたみたいになっているが断じてそうではない。片手に猫を抱えて慣れない作業が私の足を滑らせたんだ。あまりの高さに気が遠くなったわけではない。……すみません嘘です。心の中まで自分を偽る必要はない。高さなんて関係ない。地面に足が付いてないというのは怖い。本当に怖かった。気を失って足を踏み外した。だけど断じてセンパイに抱えて欲しかったわけではない。
そうやって自分に言い訳を連ねるけれど要は私はセンパイに助けられたのだ。なんにせよ私は眠りこけたままの猫を腕に抱いたまま落ちて、センパイはそんな私を抱えて助けてくれた。センパイは私との約束を守ってくれたのだ。
「……猫、全然起きませんね」
「ああ、その猫は自分の欲望に忠実だと評判だからな。まったく大した奴だぜ」
やれやれと言いたげに話すセンパイはやっぱりわざとらしく映る。
「センパイ……まさか猫が起きないと最初から知ってたんですか?」
「さあてね。ところで俺は騎士団に戻ろうと思うがお前はどうする?」
私の質問にセンパイは答えてくれない。何て奴だ。逆に質問してくるとは信じられない。でも、助けられたんだからそんな文句は言えない。それはそうと、私にはセンパイの質問に答える前に私もセンパイに言いたいことがあったんだった。
「……それよりもうおろしてもらっても良いですか?」
「おっと。そうだったな」
そう言ってセンパイは私をおろしてくれた。久しぶりの地面に私はやっぱり地上が一番だと思った。
「とりあえず、ありがとうございました」
「とりあえず、という言葉が気になるが……まあ気にしないことにしてやるよ」
「そうしてください。……そうだ、センパイ帰るんですよね? 私も帰るので一緒に帰りましょうよ。遅くなったら飼い主も騎士団の皆も心配すると思いますから」
そう言って私と猫とセンパイはモンド城へと帰還することとなった。
――
モンド城に着いた後、騎士団本部に行く前に例の猫は無事に飼い主のもとへ返した。本来なら後方支援担当の騎士に猫を預けるのだが、この猫は脱走の常習犯であった。そう言う事情もあり飼い主とは既に顔見知りだ。だから最近は直接届けに行っている。安否確認は早いほうがいいもんね。それなのに例の猫は飼い主に返してもまだすやすや寝ていた。大物になるに違いないと思った。そのあと何か用事があるらしいセンパイと別れて1人騎士団本部へと向かった。
「ご苦労だったな。かなり遠いところまで逃げていたと聞いたが」
「大丈夫でした。ただ、猫が木の上にいて…それで少し時間がかかってしまいました」
実はあの猫の飼い主はジン団長の知り合いなので一応ジン団長にも連絡することにしていた。事務仕事をしているジン団長は書類から顔を上げて私の話を聞いてくれた。
「……ああ、なるほど。あの猫は猫の中でも特に気まぐれだからな。降りてくるまで待っていたのか?」
ジン団長は私が木に登れないことを知っている。
「いえ。ガイアセンパイが来て、なんか発破かけられて何とか木に登って捕まえました」
「……ガイア?」
「はい」
まさかセンパイがあんなところにいるなんてそりゃジン団長も思わないよね。本当にあの人なんであんなところにいたんだろう?
「……そうか、ガイアが」
「センパイが何かありましたか?」
「……いや、なんでもない。報告ご苦労だったな」
「はい。では失礼します」
含みのある言い方に首をかしげるがジン団長は何も答えてくれなかった。彼女が何も言わないということは大したことではないのだろう。私は気にするのをやめた。ジン団長の部屋から退出したらちょうどジン団長に用があるらしいリサさんと出会ったので少し話をして、私は騎士団本部を後にした。あーあ、結局センパイがなんであそこにいたのかまったくわからなかったな。
「……ガイアの奴。用事ってそういうことか」
なまえと別れた後にジンのいる部屋に入ったリサはジンがそう呟いたのを確かに聞いた。
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なまえ
騎士団メンバー。戦闘は比較的得意な方だが、のんびりしたモンドではあまり必要のない力である。モンド城外の事件を担当することが多い。ガイアのことは表向きはセンパイと呼んでいるが胡散臭い「奴」と思っている。
ガイア
騎兵隊隊長。部下は全員隊長を置いて出征してしまった。なのでおそらく比較的暇な人間となまえは勝手に思っている。ちなみになまえから胡散臭い奴だと思われていることは知っている。猫が起きないことも知っていた。なぜわざわざなまえの所まで来たのかは本人しか知らない。
猫
抱えられても起きない眠り猫。つついたぐらいじゃ起きないので抱えたまま持ち主に返すのが正解。他人には起こされても絶対に起きない図太いタイプの猫。飼い主にはとても可愛がられている。猫も飼い主のことは大好きだが蝶々を追いかけてたらいつの間にか帰り道がわからなくなることが多々ある。
ジン
代理団長。猫の飼い主の知り合い。今回のガイアの行動に何かを気づいた様子。さすがの観察眼か。それとも趣味の影響か。