ハレの日には晴れが良い
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――
風が大木の葉を揺らすたびに葉と葉が擦れる音がする。ふたりは今風立ちの地の大木の下にいた。
「――じゃあ帰ろっか! アフタヌーンティーに間に合わなかったら怒られちゃうもんね」
そう言って立ち上がったなまえの後にジンは続いた。人がいないところを歩くために囁きの森をこえて星落としの湖に行った。リサとの約束があるために最後は帰りの時間を計りやすい風立ちの地で話をしていた。本の返却期日を過ぎたら怒るリサのことだ。アフタヌーンティーに間に合わなければ怒られるのは目に見えている。
「……」
ジンはもう一度大木を見上げた。誕生日になると母と来た思い出の地だ。それをなまえに言ったことはないから偶然だったと思うが、今日も来ることができて良かったと思った。
「ジン~?」
少し先を歩いているなまえから声がかかる。ジンは返事をして彼女を追いかけた。それからモンド城に到着し、歩きながら騎士団本部へ向かう。もう少しで到着かと思ったその時、騎士団本部の方向から聞き慣れた声が聞こえてきた。
「あ! なまえお姉ちゃんとジン団長帰ってきたよー!」
ぶんぶんと手を振るクレーがアンバーと一緒に騎士団本部の前に立っていた。
「クレーと、アンバー……?」
「ちょうど良かったみたいだね」
まさか出迎えがあるとは思わず驚いているジン。なまえが2人に向かって手を振った。
「ジンさん! なまえさんお帰りなさい!」
「おかえりなさい!」
「お出迎えありがとー、2人とも!」
なまえが2人へ駆け寄っていった。そのまま2人に抱きついたなまえをジンは呆れたように見ていた。何かを話している3人を見ながらジンは歩み寄る。ジンが到着すると3人は1列になってジンを出迎えた。なまえがわざとらしくコホンと咳をして神妙な顔をした。
「さて、偵察騎士アンバー」
「はい!」
「代理団長代理が命じます! ジン代理団長に目隠しを!」
「はーい!」
楽しそうな声で元気よく返事したアンバー。その姿を見てジンはようやくリサだけではなく騎士団員全員がグルではないかと思った。
「クレーは私と手をつなごうね」
「はーい!」
目隠しを手に近寄ってくるアンバーの後ろでなまえとクレーが手をつないでいた。クレーの逃走防止だろうとジンは思った。
「ジンさん失礼します!」
ジンの後ろに立ったアンバーは彼女に目隠しをしていた。
「ジン団長じっとしててね!」
塞がれる視界にクレーの声が前から聞こえた。
「さ、アンバー! ジンを連れてっちゃって!」
「はーい! じゃあ、ジンさん! 手を離さないでくださいね!」
「……ああ、わかった」
アンバーはジンの手を引く。戸惑いながらもジンはアンバーに従った。ジンとアンバーを見送って、一呼吸置いてクレーと手をつないだなまえが騎士団本部に入ると声をかけられた。
「よお。うまくいったようだな」
「……あ、ガイア」
「時間もぴったり。さすがね、なまえ」
「がんばった甲斐がありましたね!」
「みんなが頑張ってくれたおかげだよ。私はジンを連れ出しただけだから」
声をかけてきたのはガイア。その後ろにはリサとバーバラもいた。騎士団の皆はなまえがジンを連れ出している間にいろいろと準備をしていてくれたのだ。
「あとはジンの反応だけだね」
「クレーも頑張ってたから喜んでくれると良いんだけど」
リサはクレーの頭を撫でながら心配そうに呟く。そしてその場にいる全員はドキドキしながらジンとアンバーが入った部屋の方へ向かった。
――
あまり歩いていないから騎士団本部から出てはいないだろう。椅子に座らされたジンはこれから何が起こるのだろうか全くわからなかった。
「ジンさん、目隠しとりますね!」
そう言ったアンバーの声の通りに目隠しがとられた。一体何があるのだろうかと思っていたジンだったが見えた光景は思いもよらぬものだった。机に並べられたのは、騎士団の書類の山……ではなく、包装されたプレゼントらしき数々と美味しそうな料理だった。すべて慣れ親しんだ料理にアレンジが加えられている。
「……これは、」
「誕生日おめでとうございます!」
アンバーが自分のことのように笑った。
「……そうか。誕生日か」
ジンは噛みしめるようにそう言った。人に祝われるというのはなんだかむず痒い気持ちになる。
「(……あれ? なんか思ってたのと違うなー)」
そんなジンの態度が思っていたものと違うため少し戸惑っているアンバーがいた。ジンならいつものようにありがとうと言って笑い返してくれるものだと思っていたからだ。そんな2人の耳に後ろから聞こえて小さな笑い声。
「だから言ったでしょ?」
2人が振り向くとそこにいたのはなまえだった。
「損はさせないから期待しててよ、って」
扉の横に立っていたなまえ。彼女の横の開いた扉の向こうにリサやガイア、騎士団の面々が見えた。そしてなまえは続けてジンに向かって口を開く。
「お誕生日おめでとうジン」
ジンは知らない。騎士団ではジン代理団長を祝うためのサプライズパーティーの準備がされていたこともなまえがジンを外に連れ出す役割だったこともそれを知らなくても問題なんて何もない。だって、これからジンの誕生日パーティーが盛大に開かれることには変わりはないのだから。開け放たれた部屋に次々に入ってくる団員の姿にジンはなまえが言った「豪華仕様」という言葉を思い出した。
あとがき
風が大木の葉を揺らすたびに葉と葉が擦れる音がする。ふたりは今風立ちの地の大木の下にいた。
「――じゃあ帰ろっか! アフタヌーンティーに間に合わなかったら怒られちゃうもんね」
そう言って立ち上がったなまえの後にジンは続いた。人がいないところを歩くために囁きの森をこえて星落としの湖に行った。リサとの約束があるために最後は帰りの時間を計りやすい風立ちの地で話をしていた。本の返却期日を過ぎたら怒るリサのことだ。アフタヌーンティーに間に合わなければ怒られるのは目に見えている。
「……」
ジンはもう一度大木を見上げた。誕生日になると母と来た思い出の地だ。それをなまえに言ったことはないから偶然だったと思うが、今日も来ることができて良かったと思った。
「ジン~?」
少し先を歩いているなまえから声がかかる。ジンは返事をして彼女を追いかけた。それからモンド城に到着し、歩きながら騎士団本部へ向かう。もう少しで到着かと思ったその時、騎士団本部の方向から聞き慣れた声が聞こえてきた。
「あ! なまえお姉ちゃんとジン団長帰ってきたよー!」
ぶんぶんと手を振るクレーがアンバーと一緒に騎士団本部の前に立っていた。
「クレーと、アンバー……?」
「ちょうど良かったみたいだね」
まさか出迎えがあるとは思わず驚いているジン。なまえが2人に向かって手を振った。
「ジンさん! なまえさんお帰りなさい!」
「おかえりなさい!」
「お出迎えありがとー、2人とも!」
なまえが2人へ駆け寄っていった。そのまま2人に抱きついたなまえをジンは呆れたように見ていた。何かを話している3人を見ながらジンは歩み寄る。ジンが到着すると3人は1列になってジンを出迎えた。なまえがわざとらしくコホンと咳をして神妙な顔をした。
「さて、偵察騎士アンバー」
「はい!」
「代理団長代理が命じます! ジン代理団長に目隠しを!」
「はーい!」
楽しそうな声で元気よく返事したアンバー。その姿を見てジンはようやくリサだけではなく騎士団員全員がグルではないかと思った。
「クレーは私と手をつなごうね」
「はーい!」
目隠しを手に近寄ってくるアンバーの後ろでなまえとクレーが手をつないでいた。クレーの逃走防止だろうとジンは思った。
「ジンさん失礼します!」
ジンの後ろに立ったアンバーは彼女に目隠しをしていた。
「ジン団長じっとしててね!」
塞がれる視界にクレーの声が前から聞こえた。
「さ、アンバー! ジンを連れてっちゃって!」
「はーい! じゃあ、ジンさん! 手を離さないでくださいね!」
「……ああ、わかった」
アンバーはジンの手を引く。戸惑いながらもジンはアンバーに従った。ジンとアンバーを見送って、一呼吸置いてクレーと手をつないだなまえが騎士団本部に入ると声をかけられた。
「よお。うまくいったようだな」
「……あ、ガイア」
「時間もぴったり。さすがね、なまえ」
「がんばった甲斐がありましたね!」
「みんなが頑張ってくれたおかげだよ。私はジンを連れ出しただけだから」
声をかけてきたのはガイア。その後ろにはリサとバーバラもいた。騎士団の皆はなまえがジンを連れ出している間にいろいろと準備をしていてくれたのだ。
「あとはジンの反応だけだね」
「クレーも頑張ってたから喜んでくれると良いんだけど」
リサはクレーの頭を撫でながら心配そうに呟く。そしてその場にいる全員はドキドキしながらジンとアンバーが入った部屋の方へ向かった。
――
あまり歩いていないから騎士団本部から出てはいないだろう。椅子に座らされたジンはこれから何が起こるのだろうか全くわからなかった。
「ジンさん、目隠しとりますね!」
そう言ったアンバーの声の通りに目隠しがとられた。一体何があるのだろうかと思っていたジンだったが見えた光景は思いもよらぬものだった。机に並べられたのは、騎士団の書類の山……ではなく、包装されたプレゼントらしき数々と美味しそうな料理だった。すべて慣れ親しんだ料理にアレンジが加えられている。
「……これは、」
「誕生日おめでとうございます!」
アンバーが自分のことのように笑った。
「……そうか。誕生日か」
ジンは噛みしめるようにそう言った。人に祝われるというのはなんだかむず痒い気持ちになる。
「(……あれ? なんか思ってたのと違うなー)」
そんなジンの態度が思っていたものと違うため少し戸惑っているアンバーがいた。ジンならいつものようにありがとうと言って笑い返してくれるものだと思っていたからだ。そんな2人の耳に後ろから聞こえて小さな笑い声。
「だから言ったでしょ?」
2人が振り向くとそこにいたのはなまえだった。
「損はさせないから期待しててよ、って」
扉の横に立っていたなまえ。彼女の横の開いた扉の向こうにリサやガイア、騎士団の面々が見えた。そしてなまえは続けてジンに向かって口を開く。
「お誕生日おめでとうジン」
ジンは知らない。騎士団ではジン代理団長を祝うためのサプライズパーティーの準備がされていたこともなまえがジンを外に連れ出す役割だったこともそれを知らなくても問題なんて何もない。だって、これからジンの誕生日パーティーが盛大に開かれることには変わりはないのだから。開け放たれた部屋に次々に入ってくる団員の姿にジンはなまえが言った「豪華仕様」という言葉を思い出した。
設定
なまえ
友人。リサには誕生日にジンをどこかに連れ出して欲しいといわれただけで代理団長代理はガイアと冗談で話してたら採用された。代理団長代理ごっことても楽しかった。
ジン
代理団長。誕生日についてはあまり祝う日だと認識していない。でも今回は豪華仕様でびっくりした。なまえが来て嫌な予感が当たらなかったのは初めてかもしれない、とその日寝る前に思った。でも考えていた予定はすべて白紙になったが悪い気はしない。代理団長代理の語呂感が実は結構気に入ってたりする。
騎士団員の皆さん
ジンを祝うために前々から準備していた。そのために少しずつジンがやるべき仕事のうちジンがやらなくても大丈夫な物は分担して終わらせていた。ジンにばれないように皆で集まらず、騎士団に所属してないなまえに皆の連絡係になってもらっていた。今回無事にサプライズ成功して嬉しい。