しあわせを願って
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旅人との邂逅(Traveler/Aether & Paimon)
「お腹空いたぞ~」
空とパイモンがモンド城に着いた時、……いや着く前からパイモンは空腹を訴えていた。
だからモンド城に着いた時にこの小さな相棒が真っ先に空に提案したのはご飯のことであった。
「なあ、旅人ー。鹿狩りで何か食べようぜ~」
お腹空いたと何度も耳元で話すパイモンに根負けした空は鹿狩りに向かうことにした。
鹿狩りに行くことになったらパイモンは目に見えて元気になった。
先程までの様子とは打って変わった相棒の姿に空は溜息を吐いた。
「サラー!オイラお腹空いたぞ~!」
鹿狩りにたどり着き、そこの店員であるサラにもまた空腹を訴える。
その時、鹿狩りの従業員であるサラは定位置であるカウンター内ではなく、客席で誰かと話していた。
「あら、栄誉騎士の旅人さん。いらっしゃい」
「……栄誉騎士?」
空達に気づいたサラが歓迎の言葉をかけると彼女と話していた相手も反応を返した。
立っているサラとは違いその相手はテーブル席に座っていて、目の前に置かれている料理を見れば客だと言うことは一目で理解できた。
ジンやエウルアぐらいの歳の若い女の人が座っていた。
空もパイモンもモンド城内を走り回っていたが彼女を見るのは初めてだった。
それは向こうも同じらしい。
「あれ、なまえさんは初対面ですか?」
「なまえ?」
「はい。時々うちをご利用してくださる方なんですよ」
サラが呼んだ名前にはやはり聞き覚えがなかった。
なまえよりも早くにパイモンが首を傾げるとサラはなまえのことを話してくれた。
するとなまえが空達にひとつ質問をする。
「栄誉騎士とは……えと、風魔龍……ではなく東風の龍を助けたという方ですか?」
「おう! この西風騎士団の栄誉騎士である空がトワリンを救ったんだぞ!!」
「ウェンティとジンさん、それにディルックさんも一緒にね」
なまえの問いに答えるパイモンと空。
その答えになまえが嬉しそうに目を細めた。
「まあ……ではあなたがあのモンドを救ってくださったと言うお方なのですね。そうだ。おふたりがよろしければ、ご一緒しませんか?」
話がしたいと言うなまえに誘われて空とパイモンは彼女と同席することにした。
それからサラに料理を注文してからなまえと同じテーブルに座った。
「私のわがままを聞いてくださってありがとうございます。改めまして私はなまえと申します」
同席を了承してくれた空達になまえはにこりと笑ってみせた。
改めて自身の名を名乗る姿はどこか品があって、その所作を見ていると彼女がただの一般人ではないと思わされた。
そんななまえにならって空とパイモンも思わず姿勢を正してしまう。
「俺たちも鹿狩りで食事する気だったから気にしないで、なまえさん。俺は空。こっちはパイモン。パイモンは非常食なんだ」
「おい! なんでいつも非常食って言うんだよ! オイラはお前の案内役で最高の仲間だろ!!」
「よろしくなまえさん」
「ふふっ、仲がよろしいのですね。空さん、パイモンさん、よろしくお願いいたします」
改めて自己紹介をするなまえに空もまたいつもの通り名乗って、パイモンと漫才のようなことをした。
それになまえは2人の仲の良さが見えて心が和んだ。
「空さん、パイモンさん。おふたりのことはディルック様とエウルアから聞いてました」
「えっ? ディルックさんと……エウルア?」
まさか会えるとは思わなかったとも話すなまえ。
そんな彼女から思いもかけない人物の名前が出されて空とパイモンは顔を合わせた。
ディルックとエウルアとはまた接点のなさそうなふたりであるから余計に不思議に思う。
「なまえは2人と知り合いなのか?」
「はい。エウルアは私の従姉妹なのです」
「「えっ!!」」
パイモンの問いかけになまえがエウルアとは従姉妹だと答えるからまさかの答えにびっくりして思わず声が出た。
空達もエウルアとはこの前知り合ったばかりであった。
エウルアの家名はローレンスという。
モンドに残る忌まわしい歴史。
その代表たる一族ローレンス。
その末裔が自由を司る西風騎士団所属の遊撃隊長であるエウルアだ。
「……この前は伯父が失礼をいたしました」
「いやいや、あの時はオイラたちもエウルアにはずいぶん助けられたんだ」
そうだよな? とパイモンが空に同意を求めると彼も頷いた。
その答えになまえは空とパイモンを謙虚な方々だと褒める。
「ですが貴方達の助力のおかげで助かったとエウルアが申しておりました。ですから、私からもお礼を伝えたかったのです。……ありがとうございます」
「え? あのエウルアが……? ほ、本当に……?」
なまえの言葉にパイモンが信じられないと言わんばかりに声を振るわせた。
「? ……ああ、そうでしたね。ふふ、貴方方はきっともうご存知でしょうがエウルアはとても優しい子なのです」
さすが従姉妹というべきなのだろうか。
エウルアのことをよく知っているらしい。
彼女は口癖のように「復讐」や「恨み」などという不穏な言葉を重ねるがその言葉の真意は別にあることをすでに空とパイモンは知っている。
従姉妹であるなまえもそうなのだろう。
彼女との仲の良さを端々に滲ませてなまえはクスクスと笑った。
「……ん? ちょっと待ってくれ。話は戻るけど、じゃあなまえはローレンスの一員ってことなのか?」
なまえの言葉にパイモンは彼女が先ほど口にした「エウルアの従姉妹」という単語を頭に描いた。
パイモンの質問になまえは隠すことなく頷いてみせた。
その表情には少しだけ陰りを見せながら。
「はい。私の生家です。今は……、勘当されてしまいましたが」
「か、勘当……?」
「い、一体何したんだ? 騎士団に入ったエウルアでさえローレンスのままなのに……」
勘当されたというなまえの言葉に2人は目を見開いた。
ローレンス家のイメージとしては勘当自体は行いそうではあるが、西風騎士団に与するという明らかなる裏切り行為に走っているエウルアが未だに勘当されていない。
それなのに、見るからに戦えなさそうな彼らが目の敵とする騎士団でもなさそうで人畜無害にみえるこの目の前のなまえが勘当されたとはとても信じられない。
相当ローレンス家を逆なでするようなことをしたとしか思えないが、彼女は人畜無害な見た目に反してとてつもないことをしたのだろうか。
それが何なのかは当然、皆目見当も付かない。
「私が一族を裏切るような真似をしたのです。……仕方のないことです」
そう言ってなまえは少し寂しそうに笑った。
それがとても悲しそうに見えて、空はおろかパイモンもなぜとは聞くことができなかった。
あとがき
これはゲーム時間軸に入っているのですでに結婚後なのです。というわけで注意のところは元ローレンス家のお嬢さんという記載となっておりました。
そして設定を変えて申し訳ありませんが、サラさんがローレンスに物売らなかったとは信じたくない私なので、サラさんはなまえさんに普通に物売ったりお喋りしてます。
次のお話はこのお話の直接的な続きです。