からかい上手の少女達
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「――恩を受けたらその恩は返さなくちゃいけない」
「え?」
「俺は君たちにもらってばかりだ」
初対面のなまえにも、一番辛い時期に手を差し伸べてくれた神里家にもトーマは何も返せない。
ずっと助けてもらってばかりであった。
モンドでは味わったことのない孤独と辛さを乗り越えられたのは救いの手を差し伸べてもらったからだ。
何の後ろ盾もない、しかも他国の人間を助けてくれた彼らにトーマは何も返せずにいる。
「だから、俺は恩を返さなきゃいけない。父さんは俺に忠誠について教えてくれた」
受けた好意は返すべきだ。
父のいう忠誠という言葉。
「モンドにいる時はそれが何かわからなかったけど、今ならわかる気がする。神里家の人達になら俺はその忠誠を誓えると思う」
自由気ままなモンドにいてはわからなかったその言葉の真意をトーマが本当の意味で理解したのはこの瞬間だったのかもしれない。
だから、彼の口から出たその呼び名は特別な者に対するものであった。
「お嬢!」
「え? お、お嬢?」
綾華は突然呼ばれたその呼び名が自分に向けてのものだとは思わなかった。
しかしトーマは真っ直ぐと綾華を見つめていた。
「俺! お嬢や若をはじめとした神里家の人々に恩を返す!」
「(お嬢って、やっぱり私のこと!? じゃ、じゃあ若とはお兄様の……??)」
「なまえ様もありがとう!! あなたのくれた好意は絶対に返す! 困ったこととかあったら……いや! 何もなくても呼んでくれたら必ず君のもとに行くよ!」
混乱する綾華を他所にトーマは興奮した様子でなまえの手を握りしめた。
家族や綾人以外の異性に手を握られることなどなかったなまえは明らかに狼狽えて、しかし嬉しさで頭がいっぱいなトーマはそれに気づかなかった。
モンドでは手を触れることなど日常茶飯で慣れたものだったからでもある。
握られた手の大きさに父や綾人とはちがうものだと理解してなまえは恥ずかしくなる。
「わ、私のことは……なまえでいいよ……トーマさん」
トーマの勢いに押され気味ななまえはなんとかそれだけを返した。
思ったよりもずっと元気づけられたようだと手を握って謝意を表してくるトーマの様子に恥ずかしさを抱きながら真っ赤になっているであろう顔を隠すように俯いた。
そんななまえの姿を落ち着きを取り戻した綾華が何だか物言いたげな目で見ているのが見えてさらに体温が上がった気がした。
トーマがそんなつもりではないことをわかっていたのに。
あとがき
「え?」
「俺は君たちにもらってばかりだ」
初対面のなまえにも、一番辛い時期に手を差し伸べてくれた神里家にもトーマは何も返せない。
ずっと助けてもらってばかりであった。
モンドでは味わったことのない孤独と辛さを乗り越えられたのは救いの手を差し伸べてもらったからだ。
何の後ろ盾もない、しかも他国の人間を助けてくれた彼らにトーマは何も返せずにいる。
「だから、俺は恩を返さなきゃいけない。父さんは俺に忠誠について教えてくれた」
受けた好意は返すべきだ。
父のいう忠誠という言葉。
「モンドにいる時はそれが何かわからなかったけど、今ならわかる気がする。神里家の人達になら俺はその忠誠を誓えると思う」
自由気ままなモンドにいてはわからなかったその言葉の真意をトーマが本当の意味で理解したのはこの瞬間だったのかもしれない。
だから、彼の口から出たその呼び名は特別な者に対するものであった。
「お嬢!」
「え? お、お嬢?」
綾華は突然呼ばれたその呼び名が自分に向けてのものだとは思わなかった。
しかしトーマは真っ直ぐと綾華を見つめていた。
「俺! お嬢や若をはじめとした神里家の人々に恩を返す!」
「(お嬢って、やっぱり私のこと!? じゃ、じゃあ若とはお兄様の……??)」
「なまえ様もありがとう!! あなたのくれた好意は絶対に返す! 困ったこととかあったら……いや! 何もなくても呼んでくれたら必ず君のもとに行くよ!」
混乱する綾華を他所にトーマは興奮した様子でなまえの手を握りしめた。
家族や綾人以外の異性に手を握られることなどなかったなまえは明らかに狼狽えて、しかし嬉しさで頭がいっぱいなトーマはそれに気づかなかった。
モンドでは手を触れることなど日常茶飯で慣れたものだったからでもある。
握られた手の大きさに父や綾人とはちがうものだと理解してなまえは恥ずかしくなる。
「わ、私のことは……なまえでいいよ……トーマさん」
トーマの勢いに押され気味ななまえはなんとかそれだけを返した。
思ったよりもずっと元気づけられたようだと手を握って謝意を表してくるトーマの様子に恥ずかしさを抱きながら真っ赤になっているであろう顔を隠すように俯いた。
そんななまえの姿を落ち着きを取り戻した綾華が何だか物言いたげな目で見ているのが見えてさらに体温が上がった気がした。
トーマがそんなつもりではないことをわかっていたのに。
設定
なまえ
綾華とは従姉妹同士。父親は社奉行所属ではない。綾人とも仲が良く、年も近いのでよくお話してたりする。
神里綾華
なまえの従妹。なまえのことが大好きで彼女とはよく遊んでいる。まだ両親は健在なのでなんでもできる神里家のお姫様ではない。白鷺の姫君と呼ばれるずっと前のこと。
トーマ
モンド人。稲妻にやってきたけど、ツテもなく困っていた時に神里家に助けてもらった。
神里綾人
なまえの従兄。次期社奉行として父について色々学んでいるので忙しい。忙しくなければ絶対に立ち会っていたと後になまえと綾華に語った。