からかい上手の少女達
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――
遡ること10日前。
なまえと綾華はなまえの家の縁側で並んで座っていた。
従姉妹同士と言うこともあって2人はとても仲が良く、高い頻度でお互いの家を行き来し遊んでいた。
その日もまた同じように綾華はなまえの家を訪ねていた。
なまえの母が用意した西瓜を食べながら綾華は最近神里家に現れたトーマという異国の少年の話をなまえにした。
そして、それから彼のおかれている現状について説明をした。
「それでトーマさんを元気付けたいの?」
「うん、何か良い案はないかな?」
そう言って尋ねてくる綾華になまえは彼女の頼りになる兄の姿を思い浮かべた。
「うーん、……綾人は何か言ってた?」
「お兄様は……今は忙しいみたいで、考えておくとは言ってたんだけど……なまえにも聞いてみようと思ったの」
なまえの問いに綾華もまた兄のことを思い浮かべた。
優しくて頼りになる兄は社奉行である父のもとで跡取りとして勉強もあり忙しい身だ。
相談をしたのはしたのだが、やはり忙しい兄に負担をかけたくないと思った綾華は自分で考えようと思ったのである。
……そう思ったのだが、いくら考えても良い案は浮かばず、結局兄と同じように頼りにしているなまえに相談を持ち掛けたのだった。
それを聞いてなまえも考え始めて、しばらくすると彼女が何か思いついたようだ。
「そっか。なら、…………」
ごにょごにょとなまえは綾華に耳打ちして、それから二人はこそこそと何かを楽しそうに話し出した。
そうして二人はトーマという他国の彼を元気づけるための作戦を考え始めたのだ。
楽しそうに内緒話をする二人を通りかかったなまえの母は優しく見つめていた。
そうしてトーマを笑顔にするためだけに二人は木漏茶屋を貸し切りにすることに成功したのだった。
そのような経緯でなまえ達がトーマを元気づけたい一心で行ったということを説明するとトーマはほっと胸をなでおろしていた。
「なあんだ、そうだったのか。太郎丸が本当に話していたのかと思ったよ」
「ごめんねトーマさん。一度やってみたかったけどここの茶屋に新規のお客さんで試しても怒らなさそうな人ってなかなかいなくて」
怒った?と聞いてくるなまえにトーマは笑顔を返した。
なまえはそうやって付け足すことであくまでも自分がやってみたかったのだと言うことで初対面のトーマに対して気をつかっていた。
そんな彼女の言葉にトーマはようやく笑顔になった。
「びっくりしたけど、俺なら平気」
「本当! 良かったあ……。あっ、そうだ、ごめんなさい。まだ名乗ってなかったね。トーマさん、私はなまえ。綾華と綾人とはイトコなの」
「なまえのお父様と私のお母様が姉弟なんです!」
そうなまえを改めて紹介しながら綾華はとても嬉しそうに彼女の腕に抱きついた。
それだけで神里綾華という少女が目の前のなまえを慕っていることは理解できる。
「実はトーマを元気付けるためにお兄様となまえと三人で一緒に考えたんです」
綾華もトーマの顔が綻んだことで安心していた。
稲妻から出たことのない綾華は他国に一人でいることになったトーマの気持ちは推測することしかできない。
「私はあなたに何があったかは知りません。なまえなんてトーマのことを知らないのに一生懸命案を出してくれて、だから私たちはトーマが楽しそうに思ってくれるならそれで良かったんです」
まだ少女である綾華がトーマの気持ちの奥深くにある孤独を感じることはできない。
それでも、彼の寂しさや悲しさは見ているだけでわかるものだ。
だからこそ、綾華は……いや、綾華だけではなく神里家をはじめとしたトーマを知る皆は木漏茶屋を貸し切りにすることを許し、少女たちの作戦に何も言わずに認めたのだった。
「……俺のために?」
「ええ、お恥ずかしい話ですが私はこのように誰かを笑顔にさせるようなことを考えるのは苦手なんです。お兄様もお父様の跡を継ぐためにお忙しいので、なまえがほとんど1人で考えて場を作ってくれたんです」
「笑顔になる前に混乱させちゃったけどね」
なまえが照れ隠しのように言葉を付け足した。
そんな彼女の様子に綾華はふふっと小さく笑いながらトーマへと話を続ける。
「あなたが少しでも稲妻を好きになってくれるように。この国はあまり他国の人に対して開放的ではありませんから」
それは稲妻人の気質であった。
のちに雷電将軍が鎖国を実施することになるがそれとは別にトーマのいたモンドよりも、貿易で賑わう璃月よりもずっと他国人に対して「よそ者」という意識が強い。
それは必ずしも悪いことではないがモンド人の母の血が濃く出ているトーマには辛い現実であった。
稲妻に帰ってしまった父を追ってきたけれど父は見つからず、トーマに対する風当たりはきつかった。
頼る術も伝手もなかった時に手を差し伸べてくれた神里家。
食べるものも住むところも何もかも助けてくれた。
それだけでも彼らに感謝してもしきれないのに、トーマが沈んでいるから元気づけようと頭を悩ましてくれたことを知って彼らの優しさを知った。
だからこそ、トーマは父の言葉の意味を知った。