君のことだけはそっとしておいてほしい
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璃月港の埠頭にある旅館を出たなまえは旅館の従業員にもらった観光マップを握りしめていた。さてどこに行こうかと考えながら一歩を踏み出そうとした時、聞き慣れた声が聞こえた気がして周りを見渡した。そして、会えたらいいなと思っていた彼の姿を見つけた。璃月港に入るための橋の向こうに見えた彼の姿に思わず声を上げていた。
「……、タルタリヤさん?」
そうやってタルタリヤが声をかけられたのは旅人について璃月港を出た時のことだった。後ろから名前を呼ばれ振り返ると橋の向こうに見覚えのある姿が見えた。璃月にいるはずのない彼女の姿にタルタリヤは驚いた。
「え……なまえ、ちゃん……?」
「なまえ? なんだ公子の知り合いか?」
タルタリヤの言葉にパイモンが言葉を発する。返された言葉にぱっと表情を輝かせて近寄ってきたなまえはやけに嬉しそうだった。
「やっぱり! タルタリヤさんだ……! 璃月港にいるとは聞いてたけど本当に会えるなんて思わなかった!」
「……いや、俺もそう思ってたよ。なまえちゃんこそどうしてここに?」
本当に驚いているタルタリヤになまえはくすくすと笑う。
「そりゃ商売のためだよ。知ってるでしょう、私がおもちゃを売っているってこと!」
「おもちゃを……?」
2人の会話にどこかで聞いたような……、とパイモンがなまえの言葉に反応して首を傾げる。空の視線がタルタリヤに突き刺さる。
「パイモン。タルタリヤが自称してた職業だよ」
「ああ! あれかー。あの時はオイラ達も大変だったよな……」
空の助け舟にパイモンはこの前の慌ただしい日を思い出した。タルタリヤの弟が璃月に密航してきて帰るまでのあの出来事を。それに気付いたタルタリヤは気まずそうに頬をかく。
「ハハハ……、あの時は君達にずいぶん世話になったね。でもちゃんとそれに見合う報酬は渡しただろう?」
「まあ……そうだけど」
タルタリヤの言葉にテウセルと遊んだ時にもらったモラの余りと彼から貰った報酬という大金を思い出した。
そして3人の会話を聞いていたなまえはタルタリヤから届いた手紙のことを思い出す。
「あれ? もしかしてこの間タルタリヤさんの手紙に書かれていた旅人さん達ってあなた達のこと?」
「えっ! オイラ達のこと知ってるのか?」
「テウセル君が璃月に来た時に色々お世話になったって聞いたよ」
なまえが記憶を辿りながら驚くパイモンに答えた。
「テウセルのことまで知ってるのか?」
「もちろん。あ、自己紹介がまだだったね。私はなまえ。さっきも聞いたと思うけどスネージナヤでおもちゃを売ったりしているの」
なまえの言葉に空とパイモンは顔を見合わせた。
「つまり、」
「おもちゃ販売員ってことだな!」
そう言って空とパイモンはタルタリヤを見た。2人の視線に肩を竦めてタルタリヤは観念したように口を開く。
「……俺がテウセルにおもちゃ販売員って言ってるのはなまえちゃんの影響もあるんだよ。テウセルは彼女の話を聞くのが好きなんだ」
「おもちゃ販売員だけど私の専門は小さいおもちゃなの。璃月でいうと……うーん、でんでん太鼓とかそういうところかな。タルタリヤさんがテウセル君にあげるような大きいおもちゃは専門外なんだ」
タルタリヤの言葉になまえが言葉を引き継ぐ。
「へー、おもちゃにもやっぱり専門とかあるんだな」
「うん。お人形ひとつとっても着せ替え人形とかおすわり人形とかいろいろあるからね」
なまえは先日璃月で仕入れたおもちゃの数々を思い出しながら丁寧に2人に説明する。そんな彼女の言葉に空達は感心したように声を上げた。
「ところでなまえさんはいつまでこの璃月にいるの?」
「もう大体の仕入れと販売は終わったの。予定よりも早く終わってこれから璃月を観光しようと思って。明日か明後日には帰るつもり」
なまえがこの先の予定を伝えるとパイモンが思いついたように声を上げた。
「そうなのか? じゃあ公子に案内してもらえよ!」
「えっ?! いいよ! 皆でどこかに行くつもりだったんでしょ?」
「今日じゃなくても大丈夫だよ」
「俺もなまえちゃんが望むなら璃月を案内するよ」
なまえが遠慮して断るが空は平気だというし、タルタリヤもまたなまえに判断を委ねた。その言葉になまえは考えるそぶりを見せた。少し沈黙が降りる。
「……せっかくだけど私は大丈夫。今日はひとりで璃月港を見てみたいの」
そう言ってなまえは結局パイモンの提案を断った。
「でも、帰ってきたら少し話がしたいから会えないかな?」
なまえはそう言って3人を見た。