雪原に揺蕩う幻を追いかけて
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あとは高い山の頂上とかに咲いてる清心の花! あれは苦いから食べないほうがいいぞ……。食べるならやっぱりスイートフラワーだよなあ……」
そんなことを言いながらパイモンはスイートフラワーの甘さを思い出す。
白い花弁の甘い甘いスイートフラワーはその名に恥じぬ料理にも使われる列記とした甘味である。
鳥肉と合わせたスイートフラワー漬け焼きを頭に思い描くことになる。
あの料理はなんて筆舌にも尽くし難い美味である。
そしてお手軽料理でもあった。
美味しさを思い出せば自然とよだれもたれてくるものである。
「……パイモン、よだれ」
「!」
空がその様子を呆れながら見つめて口から垂れている涎を指摘した。
スイートフラワーでご飯への欲求が高まったようだ。
そんなパイモンの様子を見てタルタリヤが何かを思いつき、そして彼らに一つの提案をする。
「もし、君たちが璃月の花についてもっと詳しく教えてくれるならお礼に琉璃亭に連れて行くよ?」
「ほ、本当か?」
「もちろん。俺は約束を破らないことは君たちだって知っているはずだろう?」
そう言われて空は今までを思い起こした。
たしかに彼は口にした言葉は守った。
……黙っていたことは多かったけれど。
「た、旅人!! 公子に教えてやろうぜ! お、オイラ何だか急にコイツに親切にしたくなった!! あ、オイラ達の持ってる璃月の花も見せてやってもいいんじゃないか?」
「……パイモンはゲンキンだよね」
タルタリヤの一言で態度をコロリと変えたパイモンは空に向かってそう提案しながら彼の持っていたバッグをゴソゴソと漁り出す。
それを止めることはしないが空は呆れたようにパイモンの行動を見守っていた。
「公子! これが琉璃百合だ! 自然の物はとーってもレアなんだからな! それでこっちは瑠璃袋だ!これは崖の……」
「へえ……、なるほど。じゃあ、こっちが……」
パイモンが出してきた花の説明を聞きながらタルタリヤはそれらを興味深そうに眺めていた。
ファデュイの新人の訓練やらなんやらで璃月郊外に行くことは多けれど、花にはあまり目をやっていない。
彼の望むことは戦いであり、平和という言葉と繋がるような花は彼の興味を惹く物ではなかったから。
けれどなまえはそうではなかった。
彼女が好きなものはタルタリヤとは全く違うものだ。
タルタリヤは花に興味がない。
例え彼の大切な家族が冬国では貴重なその植物を温室で大切に育てていたとしても彼にはあまり興味の湧かないものだ。
けれどなまえは望んだ。
璃月の花が知りたいと彼に伝えた。
だから、彼には璃月の植生について知るべき理由ができた。
「他には? 何かある?」
「……霓裳花はこれのこと。……もし、良ければあげようか?」
空の提案に花を見つめていたタルタリヤは弾かれたように顔を上げた。
そして、空を見た。
純粋な驚きだけで構成された彼にしては珍しいその瞳に空は驚いた。
「――いいのかい?」
「うん、予備は持っているし。そのなまえさんが花が好きなら現物を見たほうが喜ぶと思うんだ。タルタリヤが良ければだけど……」
「ありがとう、相棒」
やっぱり相棒は気が効くね、そう言ったタルタリヤはもういつも通りの感情の読めない瞳に戻っていた。
そんなタルタリヤにパイモンが「オイラだって頑張ったんだぞ!!」と張り合ってきたのでタルタリヤはパイモンのこともまた誉めていた。
「……なまえもきっと喜ぶよ」
それからそう小さく呟いたタルタリヤは彼に似合わずとても優しげな手つきでその花を手にしていた。
仄かに花の香りがする手紙
設定とあとがき