あなたをそっと、愛してる
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眠ってしまった胡桃を生と死の狭間の住民達が心配そうに囲んでいた。
疲れ切った幼い少女を起こすのも忍びなく、かといって風邪を引かぬように布の一枚もかけてやりたいが幽霊故にそれすらもできない。
どうするものかとただ見つめるなか、彼女の姉であるなまえがそろりと近づいてきた。
それに気がついた住民達がなまえが通れるように場所を開ける。
胡桃の意識が夢の中にあることをしっかりと確認してなまえは夢の中にいる妹の前にしゃがみ込んだ。
「大きくなったね」
「なまえちゃん。いいのかい?」
「……はい。私はただ見守りたいだけ。姉がこんなところにいたらショックを受けると思いますから」
なまえは疲れて眠る胡桃を顔を撫でるように手を動かした。
けれど死者と生者は相入れない。
触れ合えないことを知っていながら、なまえはごっこ遊びのように撫でるふりをせずにはいられなかった。
「この子は……。きっと、素晴らしい堂主になります」
「なまえちゃん……」
なまえができなかったこと。
胡桃に押し付けてしまった。
その罪悪感もなまえが未練を残す要因のひとつだ。
たとえ胡桃が望んで堂主を志したとしてもなまえが死ななければ彼女の好きな詩を吟じる時間をもっと取れたかもしれない。
こんなに幼いうちに葬儀を取り仕切ることもなかっただろう。
「……ひどいお姉ちゃんでごめんね」
なまえの言葉に誰も何も言えなかった。
――
温かい何かに包まれているようなそんな気がする。
感じたことのない、でもどこか懐かしくて。
「(おじいちゃんの背中も暖かかったなあ)」
そんなことを思って、それと同時に思い出した。
「――おじいちゃん!!」
はっと目を開けて慌てて体を起こす。
いつの間にか寝ていた。
体には毛布1つかかっていなかったのになんで暖かく感じたのだろうか。
わからない。
周りを見渡すけれど遠巻きに透明な人々が胡桃を見ているだけで答えは出ない。
「お、お嬢ちゃん。風邪ひいてないかい……?」
「毛布をかけてやりたかったけれど俺たちじゃかけられなくてな……」
そんな言葉を聞きながら周りを見渡すけれどやっぱり祖父の姿はなかった。
もし祖父がいたなら、胡桃のそばにいてくれるはずだから。
「……おじいちゃん」
小さく名前を呼んでも来てくれない。
「彼ならもうここにはいないよ」
悲しみを体現する幼い少女を見かねて見守っていた霊のひとりがそう言った。
先程尋ねた時はいないとしか言わなかったけどその詳細をはじめて口にした。
「お嬢ちゃんが来る前にここから去って行ったよ」
つまり、祖父は成仏したのだ。
歴代の堂主は誰ひとりこの場所にはいなかった。
だから、祖父も同じだったのだろう。
本当はもう一度会いたかったけれど、それが正しい道だ。
だから、喜ぶべきことである。
胡桃の赤く泣き腫らした瞳からまたひとつ涙がこぼれた。
でも胡桃はすぐさまその涙をぬぐった。
――帰ろう
突然家を飛び出して皆が心配しているかもしれない。
近くに置いてあった荷物を背負って心配してそばにいてくれたこの場所の住人だという彼らに礼をした。
そして、この場所を立ち去ることにした。
幼い胡桃はまだ未熟であった。
生と死の狭間に慣れていない。
だからこそ、彼らの向こうでそっと彼女を見守っていたなまえに気づかなかった。
設定とあとがき
疲れ切った幼い少女を起こすのも忍びなく、かといって風邪を引かぬように布の一枚もかけてやりたいが幽霊故にそれすらもできない。
どうするものかとただ見つめるなか、彼女の姉であるなまえがそろりと近づいてきた。
それに気がついた住民達がなまえが通れるように場所を開ける。
胡桃の意識が夢の中にあることをしっかりと確認してなまえは夢の中にいる妹の前にしゃがみ込んだ。
「大きくなったね」
「なまえちゃん。いいのかい?」
「……はい。私はただ見守りたいだけ。姉がこんなところにいたらショックを受けると思いますから」
なまえは疲れて眠る胡桃を顔を撫でるように手を動かした。
けれど死者と生者は相入れない。
触れ合えないことを知っていながら、なまえはごっこ遊びのように撫でるふりをせずにはいられなかった。
「この子は……。きっと、素晴らしい堂主になります」
「なまえちゃん……」
なまえができなかったこと。
胡桃に押し付けてしまった。
その罪悪感もなまえが未練を残す要因のひとつだ。
たとえ胡桃が望んで堂主を志したとしてもなまえが死ななければ彼女の好きな詩を吟じる時間をもっと取れたかもしれない。
こんなに幼いうちに葬儀を取り仕切ることもなかっただろう。
「……ひどいお姉ちゃんでごめんね」
なまえの言葉に誰も何も言えなかった。
――
温かい何かに包まれているようなそんな気がする。
感じたことのない、でもどこか懐かしくて。
「(おじいちゃんの背中も暖かかったなあ)」
そんなことを思って、それと同時に思い出した。
「――おじいちゃん!!」
はっと目を開けて慌てて体を起こす。
いつの間にか寝ていた。
体には毛布1つかかっていなかったのになんで暖かく感じたのだろうか。
わからない。
周りを見渡すけれど遠巻きに透明な人々が胡桃を見ているだけで答えは出ない。
「お、お嬢ちゃん。風邪ひいてないかい……?」
「毛布をかけてやりたかったけれど俺たちじゃかけられなくてな……」
そんな言葉を聞きながら周りを見渡すけれどやっぱり祖父の姿はなかった。
もし祖父がいたなら、胡桃のそばにいてくれるはずだから。
「……おじいちゃん」
小さく名前を呼んでも来てくれない。
「彼ならもうここにはいないよ」
悲しみを体現する幼い少女を見かねて見守っていた霊のひとりがそう言った。
先程尋ねた時はいないとしか言わなかったけどその詳細をはじめて口にした。
「お嬢ちゃんが来る前にここから去って行ったよ」
つまり、祖父は成仏したのだ。
歴代の堂主は誰ひとりこの場所にはいなかった。
だから、祖父も同じだったのだろう。
本当はもう一度会いたかったけれど、それが正しい道だ。
だから、喜ぶべきことである。
胡桃の赤く泣き腫らした瞳からまたひとつ涙がこぼれた。
でも胡桃はすぐさまその涙をぬぐった。
――帰ろう
突然家を飛び出して皆が心配しているかもしれない。
近くに置いてあった荷物を背負って心配してそばにいてくれたこの場所の住人だという彼らに礼をした。
そして、この場所を立ち去ることにした。
幼い胡桃はまだ未熟であった。
生と死の狭間に慣れていない。
だからこそ、彼らの向こうでそっと彼女を見守っていたなまえに気づかなかった。
設定とあとがき