別れに立ち会う人は幸運である
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神里綾華
「もうお別れだね」
神櫻の花びらが舞っていた。鳴神大社の麓にある社奉行所はひらひらと花びらが中まで入ってくることがある。それを見ると綾華は思い出す。美しい神櫻に似た簪をつけた人のことを。
ずっと尊敬していた。何もできぬ綾華がこういう人になりたいと密かに思っていた憧れの女の子。本に出てくるような姫君みたいなお淑やかで可憐という言葉が似合うその人。
綾華が彼女……なまえにそういうと体が弱いからそう見えるからだよと笑っていた。その笑顔もどこか儚くて、また彼女みたいになりたいと一層憧れた。けれど、そうではなかった。いまならちゃんと理解している。なまえがあの様な笑顔ができたのは渇望しながらも全てを諦めていたからだった。
矛盾しているがそういうことだった。俗世を諦めていたから、儚く浮世離れした雰囲気を醸し出していたのだ。ひらひらと神櫻が綾華の伸ばした手のひらに着地した。彼女が憧れたなまえを象徴するあの美しい簪は今は綾華の部屋の箪笥に大切にしまわれている。
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