別れに立ち会う人は幸運である
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トーマ
「もうお別れだね」
忠誠はトーマの中でとても大切なことだ。
それは彼の父が幼いトーマに大事だと教えたことだから。だから、モンドにはもう帰らない。帰れないではなく、帰らない。もちろん長期の休暇があれば帰ることはあるけれど、骨を埋めるのは稲妻だ。
それはトーマが決めた決意だった。人生の中で一番辛い時期を救ってくれた人々に恩返しがしたかったから。だからなまえがどんな気持ちでこの稲妻にやってきたのか考えようともしなかった。それになまえは最後まで教えてくれなかった。
違う。トーマは知ろうとしなかった。むしろ、彼は嬉々として稲妻や神里家のことを彼女に話した。なまえも楽しそうに笑ってくれていた。
そうトーマには見えていた。さよならとは言わなかったのはもしかするとまた会いに来るという無言の再会の約束だったのかもしれない。そう期待して、楽観的に考えていたのだ。
しばらくして、モンドにいる母から届いた手紙。その中でもう二度となまえに会うことはないのだと知ってしまってトーマはどうにも平静でいられなかった。なまえはずっと泣いていたのかもしれない。トーマが気づかなかっただけでなまえはずっと……。
それなのに彼は自分のことばかりを彼女に話していた。皆を守ると豪語していたのに、ただ一人の幼馴染の苦悩を読み取れなかった。手紙を持つ両手が知らず知らずのうちに震えていた。
でも、そんな自分を誰にも見せたくない。その理由も誰にも話せぬまま、ただ静かなところに行きたかった。
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