別れに立ち会う人は幸運である
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楓原万葉
「もうお別れだね」
無理矢理にでも連れていくべきだったのだろうか。優しい万葉にしては柄にもないと他人に言われても、これから赴く先が決して日の当たるところではないとわかっていたとしても。彼女にとってはその方が幸せだったのだろうか。告げられた言葉に素直に頷くことはせずに強引に連れていくべきだったのかもしれない。
――目狩り令が解かれた。
万葉はようやく指名手配が解除されて稲妻の地を大手を振って歩けるようになった。念願だった友の墓参りも終えた。そして、向かった先。行きつけの料理屋。
そこで再会した主人夫婦になんとも言えない顔で渡された手紙。ぐちゃぐちゃに皺が寄ったそれを誰かが丁寧に伸ばした跡が見えた。そしてもう稲妻にいる意味はなくなった。
死兆星号と共に行くのもいいだろう。ほとんど何も考えることなく、璃月へと向かう船に乗った。同船した旅人や北斗が話しかけてきたけれどその内容はほとんど覚えていない。懐にしまったその手紙の存在だけがずっと心を支配していた。
――濡れてほとんど何も読めなくなった手紙。
その中に書かれていた彼女の真実はこれまでもこの先も、ずっと誰一人として手に入れられることはない。
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