別れに立ち会う人は幸運である
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旅人
「もうお別れだね」
なまえの瞳からぽろぽろと涙が落ちた。別れがあるなんて考えてすらいなかった。ずっと一緒にいられると思い込んでいた。別れなどと言う言葉が、そんな行動がこの世に存在するとは考えたくもなかった。他の多くと別れても妹と同じようになまえとはずっと共にいられると思っていた。
好きだったから。彼女のことが好きだった。他人が彼女の短所を指摘しても俺は気にならなかった。そんななまえも好きだった。なまえの泣く姿は見たくない。
愛とか恋とかよくわからないけれど、きっとこれがそういうものだとようやく気がついた。妹へ向けるような心配で大切で、微笑ましい感情とは違うものだとはもう知っていた。なまえに対してはもっと……ぐるぐると言葉にできない感情が渦巻いていて、俺はそんな俺を知りたくなかった。だから、ずっと目をそむけていた。
ちゃんと向き合えばよかったと思ったけれどもう遅かった。その時、地面にポトリと落ちたのは……。
あの時のなまえの涙を今更拭えるはずもなく、俺となまえの道が交わることは二度となかった。
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