1滴のお酒よりも1モラが欲しい
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私はディオナから嫌われている。ものすごく悲しい。それもこれも、あの吟遊詩人のせいである。あの吟遊詩人が私に持ちかけたひとつの依頼。それがこの悲劇の始まりだった。
「やっほー! お姉さん」
「……ウェンティ。お姉さんはやめて」
そうコイツだ。この吟遊詩人が私にあんな依頼を持ちかけなければ、ディオナから嫌われずに済んだのに……!
「じゃあ、なまえ。……今日もいいかな?」
「……」
ニヤリ。妖しく笑った吟遊詩人はいつも通り私にモラを差し出した。私はいつだってこのモラの誘惑に負けてしまうのだ。
――
「まったく! 陽も落ちないうちからお酒を飲みにくるなんて信じんらんにゃい!!」
「ちがうの! ちがうのよ~ディオナあ~!」
「何が違うの? 本当に信じらんにゃい!! なまえもパパも大っ嫌い!!」
ドン、と音を立てて置かれたグラス。そこに並々と注がれるお酒。そのグラスを横目に私はディオナに語彙力のなさを痛感させられる言い訳をしていた。キャッツテールのバーテンダーとしてカウンターを挟んで向こう側にいるディオナは同郷の友達である。狭い所なので住民みんなとは顔見知りでディオナがもっと小さい頃はよく遊んでいた。バーテンダーとしてカウンターに立つのにディオナは酒を憎んでいる。それはディオナの大好きな父親が飲んだくれになってしまったからだ。
「はい! ディオナ特製キャッツテールスペシャル!!! これは特別に赤トカゲとスライムのピュレ入りだから!!」
「ハハハ……。ありがとう」
「……ふんっ!」
注いだお酒の名前を聞くと明らかに美味しくないような中身まで教えてくれた。見た目からしてそんなトカゲとか入っているなんて思えない。礼をいうとディオナはプイッとそっぽを向いて次の注文を作り始めてしまった。もう会話をしてくれなさそうなディオナの様子にしょんぼりと肩を落とした。そのまま出されたグラスを持ってカウンターから離れた席へと足を運ぶ。
「やあ、待ってたよ~」
ひらひらと手を振るのは吟遊詩人ことウェンティだ。私がディオナに嫌われることになった原因(とは言っているが本当はモラの誘惑に勝てない自分が悪いのだ)。そして私の依頼主である。
「今日のお酒はなにかなー?」
「……キャッツテールディオナスペシャル。赤トカゲとスライムのピュレ入りだって」
「おお! やっぱり君とくると彼女も気合い入れてくれるね! いろんな美味しいお酒が飲めてボクは嬉しいよ!」
ウェンティがお金を払ってまで私をなぜこのキャッツテールに連れてくるのかは2つ理由がある。ひとつは彼が猫アレルギーだから。そしてもうひとつは彼が言ったことでもあるがディオナは私の注文の時だけなぜかいつも違うものを入れてくるからだ。
「私ディオナに嫌われてるんだけど…」
「嫌われている……? まさか! そうだったら、彼女がこっち見てるわけないじゃないか!」
「え……?」
芝居がかった口調で少し大げさに話すウェンティに私は驚いた。ディオナがいるカウンターに背を向けて座っていたのでウェンティの指摘に振り向いた。
「……!!」
目が一瞬あったと思えばまた不機嫌そうな顔をしてプイッと顔を逸らされた。やっぱり目を合わせてもらえない。悲しい。
「……ね?」
「……いや、『ね?』って言われても……」
戸惑う私を他所にウェンティは「……あ、そっか。君鈍感だもんね」と1人で納得したように頷くと目の前の酒を
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なまえ
ディオナとは同郷。すなわち清泉町出身。ウェンティの依頼でモラにつられてキャッツテールに通うようになった。今は立派な常連。あまりお酒を飲まないのにディオナが特別扱いするお陰でキャッツテールの常連客からは一目置かれてる。ディオナのファンはおじさんばかりなので若い女の子が珍しいという理由もあるかもしれない。
ウェンティ
吟遊詩人でお酒好き。いろんなお酒を飲みたいがためになまえをキャッツテールに連れて行ってる。なまえに依頼という名でモラを多めに払ってもディオナのなまえ専用特製カクテルが飲めるから連れて行く価値はあると思っている。
ディオナ
キャッツテールのバーテンダー。父親に続き大好きななまえまでも酒の毒牙にかかってしまったと思ってショックを受けている。飲酒をやめてほしくてゲテモノばかり入れているがどうやっても美味しくなるのであまり効果はない。そもそもなまえはお酒よりもウェンティの支払うモラにつられているので尚更期待は薄い。