ドキドキお悩み相談室
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ある夜のことだった。
旦那様は時々璃月港を一望できる場所に私を連れて来てくださることがある。
この日もまたそうだった。
火の灯る明るい璃月港を見ながら私の手を握ったまま旦那様は何かを考えられていた。
昨日もお一人でここにいらしていたようだ。
考え込む旦那様の姿に私はなんだかいつもと違うような違和感を覚えた。
そう思ったが、何も言わずにただ旦那様の隣で璃月港の灯を見ていた。
「――俺は、俺の責務を果たしたのだろうか?」
突然の旦那様のお言葉に私は何と答えて良いかわからなかった。
旦那様は璃月港をじっと眺められていた。
何も答えられずに旦那様のお顔を見ていると不意に旦那様も私を見つめられて目があった。
暗い闇の中でも旦那様の瞳は輝いているように見えて、旦那様が悩まれているのに私は少しだけ胸が高鳴ってしまった。
「なまえ、お前はどう思う? 俺は岩神としての責務を果たしたと思うか?」
旦那様の言葉に私はこの方以上に責務を果たされている方は存在しないと思う。
旦那様は多くのものを犠牲にして契約のもと璃月の民のために生きてこられた。
私は旦那様の妻として旦那様のお傍でお仕えして、ずっと旦那様を見てきた。
だから、私は旦那様の璃月の民達への多大なる貢献を知っている。
でも、それを私が旦那様に言うのは違うとも思った。
「旦那様、私は……私には判断がつきません。だって、私は旦那様の妻であり旦那様が岩神として守るべき璃月の民ではございません……」
私はある意味で旦那様の庇護下にいるがそれは璃月の民達とは全く異なる理由である。
だから、その契約に関わっていない私が旦那様の評価を口に出してはいけない。
神の務めは人類を導くこと。
それは旦那様がかつて璃月の民と契約した内容とは少し異なるけれど旦那様は今までずっとそれらを守ってきた。
だからこそこの国は繁栄しているのだ。
公平を掲げる契約の国、璃月は誰が何を言おうとも旦那様の御力によって発展、繁栄してきた国なのだ。
「判断を下すのは旦那様とその恩恵を受けている璃月の民達だけです。だから、私に旦那様の責務が果たされたか判断することはできません」
せっかく旦那様が私に相談してくれたのに私は旦那様の望む答えを口に出すことができなかった。
旦那様の心労を取り除いてあげられない。
私は旦那様の御心をお慰めしてあげることしかできないというのに。
「……」
「ですが、旦那様がどのような決断をなされても私はおそばにいます」
そう、何もできない私だけれど旦那様のおそばにいることだけならできる。
旦那様の妻として、たとえ何があっても旦那様をお支えしてずっとお仕えする覚悟はとうの昔からできている。
私はそこまで伝えて少しだけ緊張した。
繋いだ手から私の緊張が旦那様に伝わったらどうしよう。
「……そうか。いや、そうだな。お前の言う通りだ」
しばらくの沈黙の後、旦那様はぽつりとそう仰った。
旦那様の中で何か考えがまとまったのだろうか。
繋いだままの私の手を安心させるようにもう一度握りしめてくれた。
どうやら彼には私の不安などお見通しだったようだ。
私はそれに少しだけ恥ずかしくなったのと同時にそれよりもずっと嬉しくなった。
なぜなら旦那様の表情が少し明るくなったように見えたから。
「ありがとう、なまえ。お前のおかげで俺も決心がついた」
旦那様のお声は本当に吹っ切れたように聞こえた。
何の決心がついたのか、気にはなったがとても尋ねることはできなかった。
それでも私も旦那様の憂いが晴れて嬉しかった。
「もっと早くお前に相談するべきだったな」
「そんな、……私は旦那様のお力になんて……」
もし、旦那様が他の方にこの話をされていたら、きっともっとちゃんとした答えが返ってくるのだろう。
私がもっと気が利いて察しが良ければ、旦那様の御心をもっと早くお慰めできたはずなのに……。
申し訳なさで胸がいっぱいになり、目も合わせられなくなってうつむいていると旦那様は私の名前を呼んだ。
無視できるわけもなく、おそるおそる顔をあげる。
顔をあげた先で見た旦那様のお顔は特に怒っているようには見えなくて少し安心した。
むしろ、旦那様の顔はずっと穏やかで私を見つめる瞳は優しかった。
「大丈夫だ。お前は役に立っている。俺にとってお前は唯一無二だ」
「旦那様……」
旦那様は私の心を持ち上げるのがとても上手だ。
旦那様はいつもそうやって私のことを褒めてくださる。
けれど、私が璃月の民に行っていることなんて旦那様に比べたら小さなことだ。
まだ璃月が璃月になる前から旦那様は凡人達と結んだ契約を履行されている。
それを知っているから私は旦那様にとても答えを言えずに誤魔化したのだ。
「なまえ、俺たちは夫婦だ。夫婦とは一心同体。お前だけが俺の妻で、お前だけが俺の何もかもを知っている。俺もそれは同じだ」
「……はい」
「そして、それはこれからもずっと変わらない」
「……」
「なまえ、なにも心配しなくてもいい。俺が何者になろうとも、お前はずっと変わりなく俺の妻だ。俺にとってお前だけが不変なのだから」
旦那様はそう言うと私を抱きしめて下さった。
私も答えるように旦那様の腰に手を回した。
旦那様は一体どのような決意をされたのだろう。
それを知るのは、今はまだ旦那様おひとりだけだ。
でも、いつか私にも話してくれることは聞かなくても知っていた。
だから私は旦那様の御心が平穏であるように願いながら誠心誠意、彼の妻として旦那様のそばにいればいい。
私は頭を旦那様の胸に押し付けるようにして身をゆだねて、未来に起こるであろう変革に思いを寄せた。
設定とあとがき