はじめましておめでとう
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前提
・旅人に何らかの誕生日プレゼントをもらった鍾離
・去年も何かもらってる
玄関先で夫を迎えに出たなまえは出て行った時よりも増えた荷物に首を傾げた。
「誕生日、……ですか?」
「ああ、凡人たちにとっては生まれた日も祝いの日らしい」
旅人からもらったというそれを持って鍾離は家に帰ってきた。
そんな鍾離の言葉になまえは思い出すことがあったらしく気まずそうに目を泳がせはじめた。
「そ、そういえば去年も旅人さんたちから頂いて……ましたね……」
「どうしたんだ?」
あきらかに動揺しはじめた妻の姿に鍾離は首を傾げた。
「いえ、……えっと、旦那様……私、その、……」
歯切れが悪いなまえはその本質的な答えを言うことなく、もごもごと意味のない言葉を繰り返す。
「えっと、その……、そのですね」
「?」
なまえの気まずそうな態度にどうしたのかと気になったが鍾離はなまえが答えるまで辛抱強く待った。
「私……そのお祝いの用意を……してなくて……。誕生日がお祝いだと言う認識がまだできてなくて……、そもそも旦那様の誕生日もちゃんと把握しておりませんでした……」
鍾離に祝いの品をくれた旅人にとって彼は往生堂の客卿、鍾離という身分が真っ先に思い浮かぶが、なまえにとって彼は岩の魔神である。
仙人達も同じであるが彼らには凡人のように誕生日を祝う習慣などない。
だから、なまえは今日も特に変わりなく過ごしていた。
「申し訳ございません、旦那様! わ、私……何か買ってきます!」
居た堪れなくなりせめて、何かしなければと言う気に駆られたなまえは財布だけ持って家を飛び出そうとしたけれど、外はもう暗い。
そんな時間にそのような理由で妻の一人歩きを許すはずもなく鍾離は横切ろうとしたなまえの腕を引き止めた。
「別にお前に祝ってほしいわけじゃない」
「えっ……」
鍾離の言葉を勘違いしたなまえの顔が悲しそうに歪む。
常であれば鍾離の言葉の意図を正しく汲み取れるなまえであったが今は冷静ではなかった。
だから、額面通り受け取ってしまった。
「だ、だんなさまは……私からのお祝いはいらないのですか……?」
あからさまにショックを受けた顔をしてなまえは悲しくなった。
誕生日が祝い事であるのなら盛大にするべきものである。
なのに、鍾離はなまえを引き留めた。
つまり、彼の言葉通り祝いは不要ということだ。
「他の方からはお祝いされて喜んでいたのに……」
しょんぼりしたなまえに鍾離は内心慌てた。
「あっ、いや……、すまない。祝ってほしくないわけではない。……、俺の言葉が悪かったな。祝いの品は不要だと言うことだ」
「そうなの、……ですか?」
謝った鍾離になまえはきょとんとしながら目をニ、三度瞬かせた。
「ああ、食事も別にいつも通り、なまえの作ったものでかまわない」
「今日は、……えっと、私の好きな料理にしましたけど良いんですか?」
夫の誕生日であるのに自分の食べたい料理を作ってしまった。
忘れていたとはいえ言葉にすると恥ずかしい。
しかし、鍾離はなまえの言葉に何の問題があるのかはわからなかった。
「問題ない。お前の料理が一番俺の口に合うからな」
「……お、お上手ですね……」
何気なく言った鍾離の言葉を受けてなまえは顔を真っ赤にさせながら、繋いでいない片手を口に当てて恥ずかしそうに笑った。
「ここは冷える。居間に行こう、なまえ」
玄関先で話していたので少し冷えてきた。
凡人よりも頑丈であるとはわかっているが鍾離は妻の体が心配だった。
「あの、……旦那様」
居間へと歩き出そうとした時、なまえが鍾離を引き留める。
何か急用でも思い出したのかと思い、鍾離はなまえに尋ねるが彼女はまた少し考えるようなそぶりを見せる。
それから真っ直ぐと彼の目を見て口を開いた。
「えっと、お誕生日おめでとうございます……」
たしかそのように言うんですよね、となまえは小さく呟いた。
そんななまえに鍾離はありがとうと返した。
それから居間へと続く廊下を歩き出した。
「(……そういえば、なまえにおめでとうと言われるのは初めてだな)」
魔神戦争が終結しても、神の座に着いた時もなまえはおめでとうとは言わなかった。
その理由を鍾離も知っていたから気にはしていなかった。
だから、今日なまえに言われたのが初めてのおめでとうと言う言葉だった。
そこまで考えて、鍾離は立ち止まった。
なんだかじわじわと体温が上がっていくような感覚に陥って、思いもかけないことに彼の思考は一瞬停止した。
「? あれ、旦那様の手が急にあったかく……?」
急に立ち止まってしまった鍾離と共に歩くのをやめたなまえ。
さらに握り合った手のぬくもりが変わったことに気づいて、様子のおかしい夫を確認するためになまえは鍾離を見上げた。
そして見えた彼の顔になまえは思わず驚きの声をあげてしまった。
「えっ……だ、旦那様!? 大丈夫ですか!?」
「ああ、大丈夫だ。俺は……いや、何も問題ない」
そうは言うが、鍾離の顔は少し赤くなっているように見えた。
紡ぐ言葉もいつものように冷静なものではなく、彼にしてはしどろもどろであった。
驚いたなまえは繋いだ手を離して鍾離の両頬に手を置いた。
少し赤くなった頬を冷やすように手を当てて鍾離の顔がよく見えるように下を向かせる。
なまえはしっかりと目を合わせて話そうとするけれど鍾離はどうにも目を合わせてくれなかった。
「お酒でも飲まれていたのですか? と、とにかくお水飲みましょう! 歩けますか?」
けれど彼の瞳は酔っぱらい特有のものには見えなかった。
酒を飲んで顔を赤くするようなひとでもなかったはずだとなまえは不思議に思う。
まさかなまえは自分が言った「おめでとう」に照れてしまったなどとは微塵も思っていないので本気で心配していた。
そして歩けると頷いた鍾離を引っ張って居間へと連れて行くのだった。
設定とあとがき
・旅人に何らかの誕生日プレゼントをもらった鍾離
・去年も何かもらってる
玄関先で夫を迎えに出たなまえは出て行った時よりも増えた荷物に首を傾げた。
「誕生日、……ですか?」
「ああ、凡人たちにとっては生まれた日も祝いの日らしい」
旅人からもらったというそれを持って鍾離は家に帰ってきた。
そんな鍾離の言葉になまえは思い出すことがあったらしく気まずそうに目を泳がせはじめた。
「そ、そういえば去年も旅人さんたちから頂いて……ましたね……」
「どうしたんだ?」
あきらかに動揺しはじめた妻の姿に鍾離は首を傾げた。
「いえ、……えっと、旦那様……私、その、……」
歯切れが悪いなまえはその本質的な答えを言うことなく、もごもごと意味のない言葉を繰り返す。
「えっと、その……、そのですね」
「?」
なまえの気まずそうな態度にどうしたのかと気になったが鍾離はなまえが答えるまで辛抱強く待った。
「私……そのお祝いの用意を……してなくて……。誕生日がお祝いだと言う認識がまだできてなくて……、そもそも旦那様の誕生日もちゃんと把握しておりませんでした……」
鍾離に祝いの品をくれた旅人にとって彼は往生堂の客卿、鍾離という身分が真っ先に思い浮かぶが、なまえにとって彼は岩の魔神である。
仙人達も同じであるが彼らには凡人のように誕生日を祝う習慣などない。
だから、なまえは今日も特に変わりなく過ごしていた。
「申し訳ございません、旦那様! わ、私……何か買ってきます!」
居た堪れなくなりせめて、何かしなければと言う気に駆られたなまえは財布だけ持って家を飛び出そうとしたけれど、外はもう暗い。
そんな時間にそのような理由で妻の一人歩きを許すはずもなく鍾離は横切ろうとしたなまえの腕を引き止めた。
「別にお前に祝ってほしいわけじゃない」
「えっ……」
鍾離の言葉を勘違いしたなまえの顔が悲しそうに歪む。
常であれば鍾離の言葉の意図を正しく汲み取れるなまえであったが今は冷静ではなかった。
だから、額面通り受け取ってしまった。
「だ、だんなさまは……私からのお祝いはいらないのですか……?」
あからさまにショックを受けた顔をしてなまえは悲しくなった。
誕生日が祝い事であるのなら盛大にするべきものである。
なのに、鍾離はなまえを引き留めた。
つまり、彼の言葉通り祝いは不要ということだ。
「他の方からはお祝いされて喜んでいたのに……」
しょんぼりしたなまえに鍾離は内心慌てた。
「あっ、いや……、すまない。祝ってほしくないわけではない。……、俺の言葉が悪かったな。祝いの品は不要だと言うことだ」
「そうなの、……ですか?」
謝った鍾離になまえはきょとんとしながら目をニ、三度瞬かせた。
「ああ、食事も別にいつも通り、なまえの作ったものでかまわない」
「今日は、……えっと、私の好きな料理にしましたけど良いんですか?」
夫の誕生日であるのに自分の食べたい料理を作ってしまった。
忘れていたとはいえ言葉にすると恥ずかしい。
しかし、鍾離はなまえの言葉に何の問題があるのかはわからなかった。
「問題ない。お前の料理が一番俺の口に合うからな」
「……お、お上手ですね……」
何気なく言った鍾離の言葉を受けてなまえは顔を真っ赤にさせながら、繋いでいない片手を口に当てて恥ずかしそうに笑った。
「ここは冷える。居間に行こう、なまえ」
玄関先で話していたので少し冷えてきた。
凡人よりも頑丈であるとはわかっているが鍾離は妻の体が心配だった。
「あの、……旦那様」
居間へと歩き出そうとした時、なまえが鍾離を引き留める。
何か急用でも思い出したのかと思い、鍾離はなまえに尋ねるが彼女はまた少し考えるようなそぶりを見せる。
それから真っ直ぐと彼の目を見て口を開いた。
「えっと、お誕生日おめでとうございます……」
たしかそのように言うんですよね、となまえは小さく呟いた。
そんななまえに鍾離はありがとうと返した。
それから居間へと続く廊下を歩き出した。
「(……そういえば、なまえにおめでとうと言われるのは初めてだな)」
魔神戦争が終結しても、神の座に着いた時もなまえはおめでとうとは言わなかった。
その理由を鍾離も知っていたから気にはしていなかった。
だから、今日なまえに言われたのが初めてのおめでとうと言う言葉だった。
そこまで考えて、鍾離は立ち止まった。
なんだかじわじわと体温が上がっていくような感覚に陥って、思いもかけないことに彼の思考は一瞬停止した。
「? あれ、旦那様の手が急にあったかく……?」
急に立ち止まってしまった鍾離と共に歩くのをやめたなまえ。
さらに握り合った手のぬくもりが変わったことに気づいて、様子のおかしい夫を確認するためになまえは鍾離を見上げた。
そして見えた彼の顔になまえは思わず驚きの声をあげてしまった。
「えっ……だ、旦那様!? 大丈夫ですか!?」
「ああ、大丈夫だ。俺は……いや、何も問題ない」
そうは言うが、鍾離の顔は少し赤くなっているように見えた。
紡ぐ言葉もいつものように冷静なものではなく、彼にしてはしどろもどろであった。
驚いたなまえは繋いだ手を離して鍾離の両頬に手を置いた。
少し赤くなった頬を冷やすように手を当てて鍾離の顔がよく見えるように下を向かせる。
なまえはしっかりと目を合わせて話そうとするけれど鍾離はどうにも目を合わせてくれなかった。
「お酒でも飲まれていたのですか? と、とにかくお水飲みましょう! 歩けますか?」
けれど彼の瞳は酔っぱらい特有のものには見えなかった。
酒を飲んで顔を赤くするようなひとでもなかったはずだとなまえは不思議に思う。
まさかなまえは自分が言った「おめでとう」に照れてしまったなどとは微塵も思っていないので本気で心配していた。
そして歩けると頷いた鍾離を引っ張って居間へと連れて行くのだった。
設定とあとがき