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極寒の雪山。
ドラゴンスパイン。
その時、アルベドはちょうど絵を完成し終えたところであった。
ひとりでここに籠もって何日目かはもう忘れたが、とても有意義な時間を送っていた。
そんな中、遠くから雪を踏み締める音が聞こえてきた。
アルベドはその音に気づいて少しの間、音の状態を確かめるように耳を済ませていたが、また絵の方に集中した。
「さ、さっむーー!」
情けない声を上げながら焚き火のそばに走ってきたなまえに見向きもせずにアルベドは先ほど描いたヒルチャールの絵を眺めていた。
「あったかーい……」
背負っていた荷物を降ろして少し少なくなっていた薪を勝手に、しかも慣れたように追加しているなまえ。
そんなふうにして焚き火に当たっていたなまえの独り言がアルベドの耳に入るが彼は特に何もしようとは思わなかった。
ドラゴンズパインの中腹に設置した拠点に詰めているアルベドのもとになまえが現れるのは初めてではない。
だからアルベドはなまえの存在を気にしない。
「アルベドー。錬金術で防寒具って作れないのー?」
「可能だけど相応の材料が必要だよ」
「だよねー。やっぱりいるのかー……」
絵を見つめたままアルベドは答える。
無から有は生み出せない。
錬金術は古代の知恵ではあるけれど魔法ではない。
なまえは知ってるはずなのにいつもそうやってアルベドに聞いてきた。
そして、防寒着が欲しいと嘆きながらもこの寒い雪山に訪れてまでアルベドに会いにきていた。
それが彼には不思議で仕方ない。
「……ねえ、なまえ。キミはどうしてこうもボクのところに来るの?」
「どうしてって……。だって、私がアルベドとお話ししたいから」
なまえはアルベドの問いかけに何ともないように答えた。
彼は必要以上に人との距離を詰めない。
人当たりが悪いというわけでは決してない。
そうでなければクレーやスクロース、ティマイオスといった面々ににあれほど慕われるはずがない。
それでもどこか壁があるように見える。
なまえは彼がモンドの外から来たためだと思っている。
「(そんなこと気にしなくて良いのに)」
なまえはアルベドを初めて見た時から気になっていた。
モラを節約するためだけに行われていた錬金術を百歩も千歩も進めた天才。
「(いや、古代の技術だから進めたというよりは戻った……?)」
どちらにしろ彼はあのスメール教令院よりもずっと錬金術についての造詣が深かった。
彼がどこからきて、どうやってそんな失われた技術を学んだのかはわからない。
なぜならなまえはアルベドの弟子でもなければ凄腕の錬金術師でもない。
「(私はなんで、アルベドと話がしたいと思っているんだろう……)」
天才に対する物珍しさ?
違う。
それならば何度か会えば飽きるはずだ。
なまえはもう何度もこの寒さゆえにわざわざ装備を整えなければならない雪山に地図がなくても進めるほどここに来ているのだから。
錬金術に興味があるから?
違う。
合成台の基本的な使い方さえわかればいいと思っている。
「(私は、アルベドに何を望んでいるんだろう)」
なまえはまだ自分の気持ちが整理しきれていなかった。
なまえはあらためて絵の前に立つアルベドの姿を見た。
先程からなまえの方を見てくれない。
彼の背中を見ているとせっかく来たのに少し悲しくなった。
でもそれはなまえが勝手に来たことであってアルベドにおもてなしをしてもらう道理などない。
「(勝手に来てるのにお話相手になってもらおうなんて……ムシが良すぎるぞなまえ! アルベドは忙しいんだから!)」
なまえは悲しく思う自分の心を戒めた。
「(こんなんじゃ嫌われちゃうよ……。……え?)」
なまえは自分の考えに戸惑った。
なぜこんなことを考えたのか。
嫌われるって何だ。
アルベドに嫌われたら困ることなんて……。
「(え、ちょっと待って……わたし、わたしは……)……え!?」
混乱のあまり声を出してしまうのは仕方のないことだ。
でもその声にアルベドがようやく絵から目を離してこちらを見た。
「……何かあった?」
「(こんな時に反応しなくてもいい!!)」
タイミングが最悪だと本気でなまえは思った。
なぜこのタイミングなのだ。
他に反応するべき時はあったはずだと言葉にできない悪態をつく。
「な、な、なんでもないから! 絵に集中してて!」
「……」
思わずきつい言い方になってしまったがそんな自分になまえは全く気づいていない。
アルベドはそんななまえの言葉を意に介さずに絵から離れてなまえに近づいてきた。
「絵よりもなまえが心配だ」
「……っ!」
アルベドという人は空気を読めない――というかこの場合は明らかになまえの思い違いであるが――そういうところがある。
そうなまえは思っている。
周りから見れば様子のおかしいなまえを心配するのは至って普通の何らおかしくない行動である。
けれどもいまのなまえは混乱のあまり自分のことしか考える余裕がない。
だから、まったくの無罪であるアルベドに対して罪を着せて悪態をついていた。
「わ、私の心配なんてしなくてもいいから!」
一歩、また一歩と近づいてくるアルベドの姿になまえがわたわたと焦りだす。
先ほどまで寒さゆえにアルベドに錬金術で防寒着を作りたいと言っていたのに、なまえは自分の心がわからなくなって。
アルベドの前にいることができなくなって極寒の地へと戻っていった。
「……?」
何が何だかわからない様子のアルベドだけがその場に残された。
ドラゴンスパイン。
その時、アルベドはちょうど絵を完成し終えたところであった。
ひとりでここに籠もって何日目かはもう忘れたが、とても有意義な時間を送っていた。
そんな中、遠くから雪を踏み締める音が聞こえてきた。
アルベドはその音に気づいて少しの間、音の状態を確かめるように耳を済ませていたが、また絵の方に集中した。
「さ、さっむーー!」
情けない声を上げながら焚き火のそばに走ってきたなまえに見向きもせずにアルベドは先ほど描いたヒルチャールの絵を眺めていた。
「あったかーい……」
背負っていた荷物を降ろして少し少なくなっていた薪を勝手に、しかも慣れたように追加しているなまえ。
そんなふうにして焚き火に当たっていたなまえの独り言がアルベドの耳に入るが彼は特に何もしようとは思わなかった。
ドラゴンズパインの中腹に設置した拠点に詰めているアルベドのもとになまえが現れるのは初めてではない。
だからアルベドはなまえの存在を気にしない。
「アルベドー。錬金術で防寒具って作れないのー?」
「可能だけど相応の材料が必要だよ」
「だよねー。やっぱりいるのかー……」
絵を見つめたままアルベドは答える。
無から有は生み出せない。
錬金術は古代の知恵ではあるけれど魔法ではない。
なまえは知ってるはずなのにいつもそうやってアルベドに聞いてきた。
そして、防寒着が欲しいと嘆きながらもこの寒い雪山に訪れてまでアルベドに会いにきていた。
それが彼には不思議で仕方ない。
「……ねえ、なまえ。キミはどうしてこうもボクのところに来るの?」
「どうしてって……。だって、私がアルベドとお話ししたいから」
なまえはアルベドの問いかけに何ともないように答えた。
彼は必要以上に人との距離を詰めない。
人当たりが悪いというわけでは決してない。
そうでなければクレーやスクロース、ティマイオスといった面々ににあれほど慕われるはずがない。
それでもどこか壁があるように見える。
なまえは彼がモンドの外から来たためだと思っている。
「(そんなこと気にしなくて良いのに)」
なまえはアルベドを初めて見た時から気になっていた。
モラを節約するためだけに行われていた錬金術を百歩も千歩も進めた天才。
「(いや、古代の技術だから進めたというよりは戻った……?)」
どちらにしろ彼はあのスメール教令院よりもずっと錬金術についての造詣が深かった。
彼がどこからきて、どうやってそんな失われた技術を学んだのかはわからない。
なぜならなまえはアルベドの弟子でもなければ凄腕の錬金術師でもない。
「(私はなんで、アルベドと話がしたいと思っているんだろう……)」
天才に対する物珍しさ?
違う。
それならば何度か会えば飽きるはずだ。
なまえはもう何度もこの寒さゆえにわざわざ装備を整えなければならない雪山に地図がなくても進めるほどここに来ているのだから。
錬金術に興味があるから?
違う。
合成台の基本的な使い方さえわかればいいと思っている。
「(私は、アルベドに何を望んでいるんだろう)」
なまえはまだ自分の気持ちが整理しきれていなかった。
なまえはあらためて絵の前に立つアルベドの姿を見た。
先程からなまえの方を見てくれない。
彼の背中を見ているとせっかく来たのに少し悲しくなった。
でもそれはなまえが勝手に来たことであってアルベドにおもてなしをしてもらう道理などない。
「(勝手に来てるのにお話相手になってもらおうなんて……ムシが良すぎるぞなまえ! アルベドは忙しいんだから!)」
なまえは悲しく思う自分の心を戒めた。
「(こんなんじゃ嫌われちゃうよ……。……え?)」
なまえは自分の考えに戸惑った。
なぜこんなことを考えたのか。
嫌われるって何だ。
アルベドに嫌われたら困ることなんて……。
「(え、ちょっと待って……わたし、わたしは……)……え!?」
混乱のあまり声を出してしまうのは仕方のないことだ。
でもその声にアルベドがようやく絵から目を離してこちらを見た。
「……何かあった?」
「(こんな時に反応しなくてもいい!!)」
タイミングが最悪だと本気でなまえは思った。
なぜこのタイミングなのだ。
他に反応するべき時はあったはずだと言葉にできない悪態をつく。
「な、な、なんでもないから! 絵に集中してて!」
「……」
思わずきつい言い方になってしまったがそんな自分になまえは全く気づいていない。
アルベドはそんななまえの言葉を意に介さずに絵から離れてなまえに近づいてきた。
「絵よりもなまえが心配だ」
「……っ!」
アルベドという人は空気を読めない――というかこの場合は明らかになまえの思い違いであるが――そういうところがある。
そうなまえは思っている。
周りから見れば様子のおかしいなまえを心配するのは至って普通の何らおかしくない行動である。
けれどもいまのなまえは混乱のあまり自分のことしか考える余裕がない。
だから、まったくの無罪であるアルベドに対して罪を着せて悪態をついていた。
「わ、私の心配なんてしなくてもいいから!」
一歩、また一歩と近づいてくるアルベドの姿になまえがわたわたと焦りだす。
先ほどまで寒さゆえにアルベドに錬金術で防寒着を作りたいと言っていたのに、なまえは自分の心がわからなくなって。
アルベドの前にいることができなくなって極寒の地へと戻っていった。
「……?」
何が何だかわからない様子のアルベドだけがその場に残された。