「普通」の世界は素晴らしい(Tartaglia)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「『すき』だよ。……あなたのこと」
すきだと口にすればなんだか照れくさかった。けれど、不快感はない。そんな自分に気づいてなまえはますます自分と密着するこの男が好きなのだと思いこんだ。
「(わたし、間違ってないよね。だって、こんなにぽかぽかするんだもの。このひとに抱きしめられて、『すき』だと伝えたらとてもあたたかいの)」
はじめてこの部屋に連れてこられた時は帰してほしいと泣いたけれど、きっともうそんなことはしない。だって、外は危ないしなまえにとっては危険が多い。彼女にとって安全なのはここだけだ。弱い役立たずのなまえを守ってくれるのはもう目の前の人間しかいない。人間にすがるなどおかしな話だと思われるかもしれないがなまえのよすがはもう彼しかいない。それに凡人達が力をつけつつある今、きっといつか凡人が仙人達を敬う心なんてなくしてしまう。凡人は忘れるのが得意な生き物だから。それならばなまえをあいしてくれると言うタルタリヤのそばにいた方が安全に違いない。
「俺も、なまえのこと愛しているよ」
「いつも、私にあいしてるって言うけれど『すき』って……あいしてるってこと?」
「うん。そうだよ。俺はなまえを愛してるし、なまえは俺を愛してる。……俺たち両思いだね」
密着していた体を少し離された。温もりがなくなってさみしくなる。でも、タルタリヤの笑顔が見ることができてうれしかった。
「りょうおもい?」
「気持ちが一緒だってことだよ」
「いっしょ……ふふっ、うれしい。わたしとあなたの気持ちが一緒ならとてもうれしい」
2人しかいない世界。閉じられた世界で生きる為になまえはこれまでの世界を捨てた。常識を捨てて普通を捨て、異常で歪な世界に足を踏み入れた。他者によって歪まされ、歪みを受け入れた2人。なまえは今度は自分からタルタリヤに抱きついた。やっぱり心があったかくなった気がする。恋人や夫婦というよりも幼子が母親に甘えるようにぎゅうと抱きついた。その行為こそが彼女が無知であるという象徴に他ならなかった。
「……本当になまえはかわいいね」
タルタリヤはなまえの耳元に唇を寄せて呟いた。彼の言葉はなまえの奥にある何かを眠らせた。
「えへへ。ありがとう、……あなた」
なまえは疑問に感じることなく当たり前のようにタルタリヤの言葉を受け入れる。世界がふたりのものならば、2人とも同じ気持ちになれたなら、……これがこの世界の正解になる。正解は正しいこと。正しいことは普通にするべきである。そんな歪んだ世界の正しさが今の2人をなるべくして引き合わせた。2人が出会ったことでなまえの運命はもはや歪んでしまっていたのだった。
――この日、1匹の麒麟は1人の人間の手に堕ちた。
設定
なまえ
仙獣。常に1人で行動している仁獣でそれゆえ偏った知識しかなかった。そのためタルタリヤに囚われた。仁獣であったために逃げ出すことはできずに、そして偏った知識しかなかったが故にそれがおかしいことだと気づかなかった。自らを守るために自らの普通を捨てて、彼の普通に染まることになった。きっと幸せ。
タルタリヤ
公子。戦闘大好き人間が初めて他者を好きになり、しかも一目惚れしてしまった。彼もある意味でねじ曲げられた人間なので普通の世界には生きることはできない。自分の周りに闘争が多いことを理解しており、そのためなまえが麒麟だと知ると彼女の安全のために閉じ込めた。結果、なまえは普通を捨てて2人は幸せになることができた。めでたしめでたし。
あとがき
めでたし……?めでたいってなんなんでしょうか?
人を拐って閉じ込めて、ヤンデレみたいな話を書きたかったんですが。なんか違いますね。病んでいるのかどうかさえも私には判断がつきませんので一応注意入れましたが、全然病んでないよって思われたらすみません。(そもそもこんなのタルタリヤじゃねーよというツッコミは心の中だけでお願いします)。実は結末は3通りありました。1番幸せそうな話がこれだったので…。
ちなみに仙人達ともほとんど交流はありませんが、なまえが慕っていたのと同じように仙人達も仁獣であるなまえをかなり気にかけています。しかし岩神の死という大事件が起こったためにそちらに気を取られて初動が完全に遅れました。そのため、探索し始めた頃にはもうタルタリヤのものになった後でしたという感じです。たぶんこれは帝君でさえも予測できなかった事態だと思われます。仙人サイドの話書いたらとても危険そうな香りしかしませんね。分岐とかあれば相手変えて書けそうですよね。なんか書いてみたい気もします。
今回のガチャでようやくタルタリヤが仲間入りしました。戦っていて楽しいです。たぶん気づいているかと思いますが週ボス公子ドロップ素材のテキストから着想した話です。こういうタルタリヤも私的にはありです。