信者のない使徒
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ダインスレイヴと共に調査をする過程で今回のアビス教団の狙いがどうやら遺跡守衛であることがわかった。いつも空やなまえが遺跡守衛から得ているような混沌の炉心や混沌の装置などの素材とは違うらしい。もっと特別な物を探しているのだという推察をダインスレイヴは披露した。
しばらく彼と共に調査を続けてパイモンは一つの疑問が頭に浮かぶ。アビス教団と遺跡守衛の関係性について。アビス教団の潜伏先に大抵いる遺跡守衛、これは偶然なのかというパイモンの疑問に答えたのはダインスレイヴだった。
アビス教団について調べているだけあって、彼はその関係にも詳しいようだ。彼は偶然ではないと言い、さらにふたつの関係について明確な答えをくれた。「――ヤツらは皆500年前に滅びた古国――『カーンルイア』で誕生したんだ」と。ダインスレイヴの答えにパイモンは困惑した。
「えっ? カーンルイアだって!?」
カーンルイア。なまえも空も知っている国の名前だった。
「でも、カーンルイアって、凄く古い国の名前だぞ……?」
パイモンに話していない秘密。言わなければならないのかもしれないとそう思った。なまえと空はダインスレイヴの言葉に驚くパイモンを他所に2人で顔を見合わせた。なまえの戸惑うような顔に空は安心させるように頷く。
「あっ、そうだ。2人にも説明しなきゃな。『カーンルイア』っていう国は……」
「パイモン。カーンルイアのことは知ってるんだ」
「えっ……?」
パイモンは空の言葉に耳を疑った。まさか空がカーンルイアを知っているとは思わなかった。空となまえは外の世界から来た異邦人でこのテイワットの共通言語でさえ不自由していたのだから。
「……俺たち、カーンルイアにいた記憶がある」
「記憶? でも、あの国は500年前に滅びてるんだぞ……」
空の言葉にパイモンは混乱するばかりだ。500年前の国に目の前の少年少女がどうやって存在することができるのか。パイモンにはわからなかった。
「……」
その中でダインスレイヴは沈黙を守り続けることもできた。旅人達の会話に参加していなかったのだから事の成り行きを静かに見守るという選択肢もあったはずだ。だが、彼はそうしなかった。
「人は誰しも、秘密を抱えている。貴様たちが俺に深く聞かなかったように、俺も貴様たちのことを深く聞くつもりはない……」
彼が助け舟のようにそう言葉を紡いだのは、あの時の3つの質問の答えのようになまえと空が、ダインスレイヴが共に旅をしたという「彼女」と似ていたからだったのだろうか。
「しかし、貴様たちに話す意思があるのならば聞こう――貴様たちが見たカーンルイアとは、どんな光景だった?」
ダインスレイヴのその言葉は空に話すという選択を選ばせる後押しとなった。空はなまえと2人だけで抱えていた秘密をパイモンとダインスレイヴに打ち明けた。2人がこの世界に来て最初に見た光景。すなわち、火の海とあの見知らぬ神の話を……。
「――あの時の話にそんな経緯があったのか……オイラはてっきり話の始まりは見知らぬ神との遭遇からかと思ってたぞ……」
「ふむ……この世界に来た時、隕石の中から妹に呼び覚まされたのか」
そう。あの時……なまえと空、そして蛍の3人がこの世界に来て最初に見たものは見知らぬ神ではない。なまえも空も、蛍に起こされた。そして蛍が2人に言ったのだ。カーンルイアの滅亡によって引き起こされる天変地異のこと。蛍の言うままに2人はこの世界から出ようとして見知らぬ神に遭遇した。
そして、蛍と離された2人はこのテイワットで目を覚ましたのだった。それからパイモンと出会い、モンドと璃月を巡っていまここにいる。その旅の途中で2人はあの国の名前がカーンルイアだということを知った。2人は話し合って記憶の整合性をはかった。そして火の海がこんな穏やかな風景に変わるほど長い年月が経っているのだという結論に至る。だから2人は古い書物を調べながら蛍の行方を探しているのだった。
「妹さんを探すために、カーンルイアについて調べてたんだな」
2人と共に旅をしてきたパイモンは彼らがよく古書を漁っていたのを知っている。
「七神を探したいなら七国を巡ればいいけど、カーンルイアは500年前に滅亡したから今はもうなくなってるもんな」
滅亡した国に行くのは難しい。だから古書を調べるしか手掛かりがなかったのだ。それでも蛍につながる手掛かりがあるかもしれないとなまえ達は藁にもすがる思いで、新しい地に行けばその国の古書を調べていたのだ。
「……カーンルイアについては俺の方が詳しいだろう」
話を聞いていたダインスレイヴがカーンルイアという国についての話を買って出た。ダインスレイヴ曰く、カーンルイアという国は建国から滅亡までずっと神のいない国であったという。
「あれは人類によって建てられた強大な国であり、人々はその輝かしい繁栄と文明に誇りを持っていた」
「神が……存在しない……国……」
このテイワットの歴史とは全く異なるその事実にパイモンの動揺が見て取れた。なまえも空も神は必ずしも世界に干渉しているわけではないことを知っていたのでそれほど驚くべきことではなかった。
「そして、貴様たちの記憶にあるように――全てが神によって滅ぼされた」
「それって……」
「500年前、神々が降臨し、カーンルイアを滅ぼした。『人類の誇り』も、雑草のように神々の庭から隔離された」
しかし、その後のダインスレイヴの言葉はパイモンだけではなく空もなまえも動揺させた。どういった経緯でそうなったのかは知らないが、神々の意向次第で簡単に国を滅ぼすことができるということだけは理解できた。その“気まぐれ”がいつ自分たちに降りかかるかはわからない。危険な世界である。今なら、なぜ蛍がこの世界から逃げようとしたのかわかる気がした。
「そんな、……ひどいことって……」
「危険な世界だ。……早く妹を見つけないと」
絶句したなまえの顔がまた青くなっていた。青ざめた彼女を落ち着かせるように背中をさすりながら空は危険な世界だということを認識しなければならないと気を引き締めた。早く蛍を見つけないといけないと気が焦る。
「ふむ、このまま過去のことを話しても気がそがれるだけだろう。まずは先に進もう。貴様たちが知りたがっていることは、進みながら教えてやる」
ダインスレイヴはなまえの顔色を伺ったのか話を切り上げた。3人は再びダインスレイヴについていくことになった。
先を歩くダインスレイヴの背中を見つめながらなまえはぽつりと呟く。
「ねえ、空……。カーンルイアのこと……ウェンティと鍾離先生も……」
知ってるのかなと続けられたなまえの力ない言葉は空も考えたことだった。
「(……次に2人に会ったら……きちんと聞く必要がある)」
なまえの手を引きながら空は嫌な予感がずっと拭えていないことに気がついた。あの神像から発せられた不気味なオーラ。それがいつまでも体にまとわりついているような憂鬱で不快なそんな嫌な感覚がある。もしかしたら、今回のこの旅の終わりは良いものではないのかもしれない。そんな気さえもしてきて空は少しだけ気が滅入りそうだった。