望まれない供犠
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その日、なまえ達3人は久しぶりに宿に泊まれることになった。ふかふかのベッドは気持ちがよく、普段の野宿とは快適さが格段に違う。その日の夜はベッドに対する興奮で3人はわちゃわちゃとはしゃいだ。そのためになかなか眠ることができなかった。それでもやがて眠たくなるわけで、はしゃぎ疲れて各々宛てがわれたベッドで良い夢を見られると言いながら3人は眠りについた。
そう、良い夢を見られるはずだった。
「……ぃ、……ぶ、…のか?」
「………」
気持ちの良い布団に包まれて寝ていたがなんだか部屋が騒がしいような気がして目を覚ました。目を開けるとすでに外は明るく、空の顔を窓からの射し込んだ光が照らしていた。
「おい……本当に大丈夫なのか……?」
「………っ」
騒がしい声はパイモンだった。でもいつもの明るい騒がしさではない。戸惑っている困惑した声で紡がれる言葉は心配しているというように聞こえた。
「……なまえ?」
パイモンが心配していたのは隣のベッドで寝ていたはずのなまえだった。なまえの様子がおかしいと気づいた空も彼女の名前を小さく呟いて起き上がった。
「あ……空、起きたんだな」
「うん。……それで、何かあったの?」
「それが、オイラにもよく分からなくて…」
起き上がった空に反応したのはパイモンだった。なまえはベッドの上で膝を抱えてい顔を伏せているばかりでこちらには反応を示さない。パイモンがなまえのそばを離れて空のところに飛んでくる。
「オイラが気がついたときにはもうあの状態で……どうも泣いてるみたいなんだけど、何を聞いても首を振るばっかりなんだ」
パイモンもなまえの様子に心当たりがないという。本人に聞いても答えてもらえず、だが放ってはおけないから時々声をかけながらそばにいたという。
「どうすればいいんだろう」
「……俺も聞いてみるよ」
そう言ってベッドから出た空がなまえのもとへ向かった。パイモンは心配そうに見つめていた。
「……なまえ」
「……」
空が声をかけてもなまえは反応を示さなかった。彼はなまえの背中に手を当ててもう一度彼女の名前を呼んだ。
「なまえ」
「…………、空?」
空が触れたことにより小さく反応を示したなまえは名前を呼ばれてようやく顔を上げた。空の見たなまえの顔は涙で濡れていた。涙を拭うこともせずに悲しそうな顔を隠そうともしないなまえの様子に空は動揺した。
「空ッ!!」
「……っ」
空と目があったと思えば、なまえは彼に力任せに抱きついた。あっという間の出来事に対応できずにそのまま後ろに倒れる。空は先ほどまで寝ていたベッドに逆戻りとなった。そのおかげでどこも痛くなかったけれど、完全になまえに押し倒されている形になってしまった。空は何とか起き上がろうとするがなまえは抱きついたまま動こうともしない。
「だ、大丈夫か……?」
パイモンの心配そうな視線を受けて大丈夫だというように空はパイモンに向かって手をあげる。無理に起き上がるのもできないことはないが空はその選択をしなかった。なぜなら倒される直前に見えたなまえの顔は涙で濡れていた。いつからそうだったのかわからないけれど彼女の目は真っ赤に腫れていて痛々しかった。それに気づいたからこそ空はなまえの好きにさせた。
「っごめんなさい、本当にごめんなさい……!」
何度も謝るなまえ。なぜそんなふうに謝るのか空もパイモンもわからなかった。けれど、空は寝転んだままなまえの背中を落ち着かせるように優しく叩く。
「なまえ……大丈夫、大丈夫だよ」
「うぅ……ッ!ご、めんなさ……っ」
空の優しさに触れたせいかはわからないがなまえは2人の前でとうとう声を上げて泣き出した。結局その後なまえは泣き疲れて眠ってしまった。ずっと共に旅をしてきた空だったが彼女があんなに取り乱して泣く姿を初めて見た。よほど動揺することがあったことは簡単に想像できる。
だが昨夜はいたって普通であった。だからこそ原因がわからない。再び目覚めたなまえはその理由を頑なに話そうとしなかった。そのため空もパイモンもその理由を知ることはできなかった。ただひとつ彼らがわかることはなまえがその日からあまり眠れなくなってしまったということだけだった。