望まれない供犠
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夢の中でずっと会っていたのに、ずっと忘れていた。ずっと探しているのに思い出せなかった。思い出したら何もかもが終わった。
彼女と2人だけの世界は崩壊し、私は記憶を維持したまま現実へと戻ることになった。
――すべての淀みを見届けたら
――なまえもわかってくれるはず……
――お兄ちゃんだって、きっと……
そう言って消えた蛍に手を伸ばしたところで捕まえられなかった。私が忘れていた現実を思い出した途端、あの子は私のもとから去った。あの時の蛍は私が作り出した夢の産物だと思っていた。でも、そうではなかった。それを知ったのは少し後のことだった。
――
甘雨と嵐姉から宝盗団の話を聞いたなまえと空とパイモンの3人はいつものようにその依頼を引き受けた。アビス教団が守る新たな遺跡の調査。近くのワープポイントまで飛んでその遺跡に入る。宝盗団が設営したであろうテントを発見したがその中にも周囲にも宝盗団らしき人影は見当たらない。代わりにいるのはアビスの魔術師。倒してから、宝盗団の後を追いかけるためにさらに奥に進む。
「アビス教団はこんなところで何をしているんだろう」
遺跡に入った3人はアビス教団の魔術師達の数も少なく、簡単な調査になると思っていた。この遺跡の最奥部に着いたとき、あの異様な神像の姿とその傍の動かない人の姿を見るまでは。
「……その人、動かないけど、」
「……い、祈ってるだけじゃないのか…?」
逆さに吊られた神像の前に跪く男の姿。ぴくりとも動かないその異様さに嫌な予感が消えない。最悪の事態を想定しながらも信じたくはなかった。けれどパイモンがその男に近づいて彼が息をしていないことを知って思わず叫ぶ。
「し、死んでる……こいつは例の『大宝盗家』だよな?」
「なんで、こんな……」
「なまえ、パイモン」
無残な姿になってしまった伝説の人物になまえとパイモンが動揺を隠せない。そんななか、ひとり神像をじっと見ていた空が突然2人を呼んだ。
「……空? どうしたの?」
「これ以上ここにいては危ない気がする」
そう空が言ったのと同時になまえは少し気分が悪くなっていたことに気づく。異様な雰囲気にのまれてたようで体調の変化に気づかなかった。気づいた瞬間、ぐるりと視界が揺れた。
「なまえッ! ……パイモン、いそいで!」
体勢を崩したなまえを支えて、意識がないと確認するとすぐさま抱え上げた空はパイモンに叫んで走り出す。神像から放たれる異様なオーラが辺りを包んでいた。それが何かはわからないが3人にとっては害悪なものらしい。
「(ここは、危ない……早く安全なところまで行かないと俺だけじゃなくてなまえも……!)」
空自身も体がだるくなっていく感覚があるが彼が倒れれば腕の中で眠るなまえも危ない。空はなまえを抱えて必死に走った。後に続くのは事態が飲み込めていないパイモンだった。だが彼らには強い信頼関係がある。すぐさま空のそばに来たパイモンは彼らの前へ行き、先行して安全が見込める場所を探す。
「空! こっちだ!!」
パイモンの導きにより来た道とは違う箇所から神像のある場所から離れ、坂を駆け上がる。坂の道は脆かったのか空が駆け抜けたところから床が崩れていった。なんとか坂道を登りきり、空は息を吐いた。
「ここまできたら大丈夫そうだな……」
パイモンが安心したように息を吐く。空もまた坂を駆け上がってもうあの嫌な雰囲気が消えていたのを確認した。彼はなまえを丁寧に下ろして座り込む。息を整えながらまだ目を覚さない彼女を心配そうに見つめた。
「なまえ……」
「最近あまり眠れてないみたいだったからそのせいかな?」
心配した様子でなまえの顔を覗き込むパイモン。睡眠不足のせいできっと神像が放つ不快なオーラに強く当てられたのだろう。その言葉に空はなまえの不調の原因のはじまりであろうあの日について思い出した。