隔たりのある魂
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結局、空は蛍に追いつけなかった。ダインスレイヴはあの空間に入れたようで姿は見えない。謎の空間は消え失せて、3人だけがそこに残された。なまえのそばについていたパイモンが空を呼んだ。パイモンの先にはうなだれるなまえの姿が見えた。
「……なまえ」
そんな彼女の姿をみて、空は蛍との再びの別れを自覚した。知らぬ間に気を詰めていたようだ。三人だけの空間に戻されて緊張が緩和される。はじめて自分の手がかすかに震えていたことに空は気づいた。
「……蛍」
それは妹の無事を確認できた喜びからか、それとも引き止められなかった自分への不甲斐なさなのか。その感情を隠すかのように震える手を握りしめて空はなまえに向かってゆっくりと歩みだす。
――なまえを守って
そう蛍は空に言ったのだ。
「(……俺がしっかりしないと)」
空は心の中で決意した。蛍に再び会うまで、それまでなまえを守る。そのためにはなまえを立ち直らせて、ここから離れなければならない。そして、彼女の不調の原因を聞く必要もある。
今まで有耶無耶にしてきたけれど、なまえと共に蛍と再会するためにもなまえを本当の意味で守るためにも。空がなまえとその周りを心配そうに浮遊しているパイモンに近づく。うなだれたままのなまえはそんな2人を気遣う余裕すらないようだ。
「会っていた……。あれは本物だったんだ……そうじゃないかって、思ってた……でも、わたし、私は……」
泣き出しそうな声で脈絡なく紡がれるその言葉達は何のことなのか空もパイモンにもわからなかった。
「なまえ……。落ち着いてくれよ。何があったかオイラたちにはわからないけど、……けど、オイラたちはなまえのそばにいるぞ……」
「……」
顔を上げないまま小さく肩を震わせているなまえを励まそうとパイモンがその小さな手を彼女の肩においた。なまえは何も答えなかったけれど、パイモンに応えるようにその小さな手に自分の手を重ねた。しばらく、誰も何も話さなかった。沈黙がしばらく続いて……。それから、なまえは蛍とあったあの夢を2人に話した。
「「……」」
それを聞いてようやくあの蛍がなまえに言っていた言葉についての合点がいった。けれど夢の中で会話をしたなど、にわかには信じがたかった。もちろん、疑ったのは一瞬だけだ。なぜなら先ほどなまえと蛍が相対したとき、2人ともあの夢を自覚していた。それを目撃したから疑うことなんてできなかった。「ごめんなさい、空。私がもっと早く……話していればよかった……」
「なまえ」
「空を差し置いて蛍の夢を見たなんて、いえなかった。でも言うべきだった」
なまえも空もまだ先ほどの出来事について何も整理できていない。もう頭がぐちゃぐちゃだ。こんな再会は望んでいなかった。こんな再会になるなんて思わなかった。それでもなまえ達が蛍に会ったのは現実で、彼女がふたりを拒絶して立ち去ったのもまた事実である。それはたとえ、なまえが空に夢の話をしていても変わらなかっただろう。
アビスの使徒。空間を移動できるあの力がある限り、きっと蛍はなまえと空のもとには帰ってくることはない。彼女のいう「天理」と戦って、神座を下すその時まで。理由はわからないけれど、蛍のその固い意志は揺らぐことはない。それは彼女が大切にしている空やなまえの説得でも揺るがない。なまえ達と離れていた間にいったい彼女の身になにがあったのだろうか。
それでも。それでも、蛍はふたりに、はっきりと宣言した。
――私たちはいずれ再会する
その言葉を
「なまえ、大丈夫だよ。蛍は生きてこの世界にいた。俺たちはこれから他の国に行って、このまま旅を進めよう」
「空……」
「蛍は待ってるって言ったんだ。……大丈夫。大丈夫だよ、なまえ。だから泣かないで」
空の話す言葉はなまえに向かっていながらも、自身に言い聞かせているようにも聞こえた。それだけ言って空はそのままなまえの頭を抱えるように抱きしめた。空の胸に抱きよせられて、なまえに空の体温が感じられた。その温かさを感じると、だんだん安心してきて、いつの間にかなまえの目から涙が零れ落ちた。
なまえは空の服がしわになるのも構わずにぎゅっと握りしめて彼に縋りついてその涙を隠すように顔を押し付けた。彼女のそんな態度に何も言わず空もなまえを強くかかえこむ。
「……っ」
「大丈夫。……大丈夫だよ、なまえ」
なまえへの優しさと慈しみを含ませた空の声がなまえを包んでいた。ゆっくりとなまえの頭を撫でて彼女の背中をやさしくさする。空だって突然の再会と別れに混乱していないわけではない。先ほどしっかりしなければならないと決意したけれど、そんなに簡単に気持ちを切り替えることはとても難しい。憔悴しきったなまえを見て、空は冷静さを取り戻しつつあった。蛍は2人に待っていると言ったのだ。この旅の果てに何があろうとも必ず蛍が待っている。そう信じて今は進むしかない。