隔たりのある魂
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空の猛攻にとうとうアビスの使徒は屈した。しかし、アビスの使徒には逃げ道がある。空の剣を弾いて後退したアビスの使徒は即座に異空間を作り出す。そのままそこに入ろうと空達から背を向けるがそこから動けなくなってしまった。ダインスレイヴだ。彼がアビスの使徒の動きを封じた。魔法のようなその拘束技は遠距離であっても発動できるらしい。アビスの使徒とダインスレイヴの距離は離れている。しかしその拘束は距離が離れているから弱まるというものでもないようだ。その力の強さはいくら戦闘後とはいえどあのアビスの使徒の動きを封じるほどである。すごいと感嘆しながらも、その力はどこか仄暗い感じがするとなまえは思った。元素力ではないような……でも、それが何なのかはわからない。
アビスの使徒がなんとかその拘束を解こうともがいている。しかし、それは意味のないことのように思えるほどに解けそうな様子はない。あの時、「最古の耕運機の目」を取り出したときもそうだがダインスレイヴの力は一体何によるものなのだろうか。自力でどうしようもできないならば、このままいけばアビスの使徒を捕まえることも可能なはずだ。しかしそういう時こそ、あと一歩で邪魔が入るものである。
なまえ達にとっての邪魔者はアビスの使徒にとっては助けとなる。突然現れたそれは一切の躊躇を見せずに剣を振った。斬撃がダインスレイヴに向かって飛んだ。
「……ッ」
捕まったアビスの使徒に加勢が入った。アビスの使徒を拘束するダインスレイヴへの攻撃。その人物はいつの間に現れたのだろうか。この場にいた誰もその存在に気づくことはなかった。突然の攻撃にも対応したダインスレイヴだったが、咄嗟のことでアビスの使徒を逃してしまう。ダインスレイヴが後ろに飛びのいて斬撃を回避する。
力と力のぶつかり合った衝撃で暗い闇を感じさせるような霧が視界を奪う。しかしそれもすぐに霧散した。最初に見えたのはその人が持つ剣。そして霧が晴れるにつれて、その人の姿がだんだんと明らかになってゆく。その加勢した人の姿を捉えてなまえと空は息を呑む。
「――『姫』様」
アビスの使徒をダインスレイヴの拘束から助けたその人を、助けられたアビスの使徒は片膝をつけて跪いてそう呼んだ。その言葉を聞いて、なまえはひとり時が止まったかのような衝撃を受けた。なまえにとっては夢の中で何度も聞いたその単語。それは彼女を指す言葉。姫様、と夢の中のなまえが慕っていた大切なひと。
「……」
霧が晴れた先に見えたのは、空と同じ薄い金色の髪、花の飾りに、そして白を基調としたその服。忘れるはずもない彼女の姿だった。無表情の蛍がそこにいた。
「そ、その人、もしかして……!?」
「蛍!!」
パイモンと空の声が重なった。その横でなまえが「ひめさ、ま……? 」と震える唇でなんとか声にしたその単語。その呟きはあまりにも小さくて2人の声にかき消された。それでも、その言葉は蛍に届いていた。蛍は何も感情のこもっていない瞳で空となまえの姿をとらえる。
「空……、なまえ……」
空の叫ぶ声よりもずっと静かな蛍の声だった。けれどその声は細波のように辺りに響く。空は名前を呼ばれたことで目の前のその蛍が本人であると確信して喜びが隠せない。しかし、ここは逆さ吊りの神像のある禍々しい場所である。本来であれば人がいてはいけない場所。
「蛍! やっと、……やっと見つけた……ここは危険なんだ! だから早く、ここから出よう!」
空が絞り出したようなその声は言葉を紡ぐたびに大きくなる。そして必死になって蛍に言い聞かせるように叫ぶ。飛び出して今にも蛍に近づきそうな空をパイモンが彼の服を掴んで止める。空がパイモンを咎めるように顔を向けるとパイモンは首を振った。
「だめだ……空。その人、さっきアビスの使徒のために攻撃を防いだぞ……」
空は動揺していた。探していた肉親がアビスの協力者であったという思わぬ事実に頭がついていかない。パイモンの混乱しながらも的確に現状を把握した言葉が非情な現実を突きつける。
「おまえの妹さん、『アビス』と……」
仲間じゃないかと言う言葉を告げられずにパイモンが言い淀む中、なまえが震える声で蛍を呼んだ。
「ほ、……ほんとうに、蛍なの……?」
「やっと、名前で呼んでくれたね」
「!!」
なまえの言葉に蛍は静かに返事をした。その言葉になまえは大いに動揺した。思わず両手で口を覆い、後ろに下がる。その動揺の表れとも言える行動、それが何故なのか空にはわからなかった。蛍もまた動揺したなまえに対して何も言わずに2人から視線を逸らしてダインスレイヴをちらりと見た。
「2人とも、どうしてダインと一緒に?」
「えっ、ダイン……?」
「蛍、ダインのこと……知ってるの?」
その言葉で蛍とダインスレイヴが顔見知りだと知った。でもダインスレイヴは一度も蛍の名前を出さなかった。空達がダインスレイヴを見ると、彼は観念したようにため息をひとつ吐いた。