風を捕まえる異邦人
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「……濡れるね」
「うん、濡れる」
そんな会話をしながら水底が見えるほど澄んだ水面を見つめたなまえと空。パイモンはもう目的の小島に飛んで行ってしまった。2人は空中に浮かぶパイモンを羨ましく思いながら意を決して湖に足を踏み入れた。美味しそうな魚が泳ぐほどに綺麗な水で良かったと思いながら水の抵抗を受ける。そして像に近づくために泳ぐ。
泳いだ後は小島になっている岸から上がって先行したパイモンの待つ神像の前に到着したのだった。どぼどぼに濡れた2人の全身はなまえが風元素を使って乾かしたおかげで、不快感もなく風邪をひく心配もない。乾かせるからといって水に浸かるのは嫌だなとなまえは思った。すぐにまた泳がなければいけないことはすっかり忘れていた。
「近くで見るとやっぱり大きいね」
「七天神像なら空の願いが神に届くかもしれないな」
七天神像の前に立った3人は自分の背丈よりも高い像を見上げていた。フードをかぶった有翼の人型の彫像はたしかにそれが人外であるという感想を空に抱かせた。神の姿を現しているというが本当にそうなのだろうか。まだ風の神を見たことがない空はそんなことを思っていた。
「触った方が願いが届くかもしれないよ?」
「え? 触っていいの?」
神像を見上げたまま黙っている空になまえが声をかけた。空が他の世界を旅しているときは神聖なものには触れてはいけないということもあったために、眺めるだけに留めていたがどうやらこの神像に関しては大丈夫なようだ。
なまえに促されるようにして空は神像に近づき、そして触れた。すると不思議なことに七天神像から風の力が感じられて、空は失った力が少し戻ったような不思議な感覚を抱いた。
「……力が、」
「力?」
「風神が空に答えてくれたのかな?」
「そうだったらいいな! よくわからないけど、空は触れるだけで元素力を手に入れられるのかもしれないぞ」
独り言のように呟く空とそれを見ていたなまえとパイモンが謎の現象について話をしていた。
「さっきなまえが話していただろ? この世界の人間が力を得るのはおまえみたいに簡単じゃないんだぞ……」
「やっぱり空がこの世界の人間じゃないってことに由来しているのかもしれないね」
「うん、そうかもしれない」
空にとって世界を超えることは初めてではない。だから、パイモンとなまえがいう言葉は理解できた。同じ人間に見えるがその世界を構成する要素によって少しずつ異なっているものだ。
「そうだ、ここから西へ行くと、自由の都『モンド』に行けるんだ」
「さっきなまえがこの国は自由の国だって……」
「おう! それにモンドは吟遊詩人がたくさんいるから妹さんの情報が手に入れられるかもしれないぞ」
遠くにうっすらと見える風車が目立つ街並みを指さしてパイモンは次の目的地について話した。空の隣でパイモンの話を聞いていたなまえを見ると彼女はにっこりと笑う。
「風神に会えると良いね!」
「そうだな。神像が答えてくれたんだし、もしかしたら風神に会えるかもな!」
この地の神が空の探す神であろうとなかろうと会わなければ妹への手掛かりは得られない。神がうろうろしているとは思えないが、もしかしたら神のいる場所を知っている人間がいるかもしれない。
「この世界の『元素』はおまえの祈りに応えた。いい兆しだとオイラは思うぞ」
パイモンの言う通り、それがいい兆しであると信じて空は自由の都へと向かうことにした。