涙のない明日のために
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空とパイモンが西風教会の地下へと忍び込み、天空のライアーらしき物の前に来た時、それはたしかに目の前にあった。しかし、割り込んできた誰かによってライアーは奪われてしまった。その誰かは瞬間移動のようにその場から立ち消えて、巡回していた守衛に見つかったのは空達だけであった。
「なんでオイラたちが追われなきゃいけないんだよ!!」
「あの状況なら仕方ないよ! とにかく捕まるわけにはいかない!!」
はっきり言って状況は最悪だった。何も取っていないのに犯人だと思われてしまった。不法侵入は確かだが、窃盗は冤罪である。捕まえようとする守衛をなんとか振り切りながら、空は走る。守衛たちがなぜか武器を持っていなくて良かった。やはり神聖な教会では武器の持ち込みは許されていないのだろうか。ともかく素手の相手には負けることはないし、どうやらライアーを盗む者など少ないようでその動きも少し鈍い。追いかけられている距離は縮まることはなく、そのまま地下から地上へと駆け上がり、西風教会から出るために扉を開いた。扉を開くと真正面に見えたのは二つの並んだ人影。緑と……、黒っぽい布をまとった背中。
「(……? なまえ?)」
緑はウェンティだ。こちらに振り向く顔が見えた。つまり、隣にいるのがなまえであるはずだが、見慣れた服からローブに変わっていて新鮮な姿に空は戸惑いを覚える。
「わ、わ、わぁあああーーーー!!」
しかし、パイモンが迫りくる追手を怖がってあげる声に今しなければならないことを思い出して、再び足に力を込めた。
「ふたりとも!!」
「気づかれた!! 走れ!!!」
空とパイモンが叫ぶ。その声にウェンティはすばやく反応して理解した。
「ついてきて!!」
ウェンティは座っていた手すりから飛び降りる。一方、なまえは空達が失敗するとは頭から思っていなかった為、パイモンの逃げると言う言葉に驚いていた。しかし、一応そう言う事態を頭に入れていたウェンティは作戦の失敗に驚きながらもすぐに切り替えることができた。逃げてきた二人について来るようにと叫んだあと「なまえ、飛び降りるよ」と声をかけてから飛び降りる。なまえも事態を飲み込めていないながらも逃げなければならないことはわかっていたため遅れて飛び降りた。その先でウェンティが待っており、なまえの手を握ると走り出す。あんな態度をとったのにウェンティはなまえを待っていてくれた。手を引くウェンティに何か言いたかったけれど、言葉にならない。ウェンティはずっとなまえに優しかった。
「ウェンティ……! 私……」
「なまえ、ボクを信じていれば大丈夫だから!」
なまえがウェンティの名前を呼んだとき、ウェンティが振り向いた。声がはっきりと届いたから布が視界を遮っていても彼が振り向いたことがわかった。そして、信じてと言葉を続ける。深々とフードをかぶっているせいで前がよく見えない。ウェンティとつながった手に力を込める。その力を感じ取ったウェンティもまた手に力をこめた。だからウェンティのその言葉を信じて、彼に引かれる手だけを頼りにそれだけを信じてなまえも走った。ウェンティは広場を駆け抜けて路地裏の狭い道に入って、右へ左へと曲がり、追手を翻弄していく。
「――ここだ」
目的の場所に到着したのだろうか。ウェンティは小さくそう呟いた。
「なまえ。ボクが良いって言うまでフードはとらないで」
それからなまえにそれだけを言った。その理由がわからなかったけど、このタイミングで言うのはきっと大切なことなのだと思ったなまえは彼の言葉に同意した。それを聞いて、追っ手との距離を開けた事を確認しウェンティはとある建物の扉に手をかけた。後ろから遅れてついてくる空の姿をしっかりと認識していた。