つりあげる前に、出会ってしまった
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もともと数多の世界を旅していた空だったので言語の習得は通常よりもずっと呑み込みが良かった。先日、ようやく日常会話程度のレベルなら大丈夫だと2人からお墨付きを得た空。
「うん、ここまで喋れるなら基本的な会話なら大丈夫だろうな!」
「そうだね。空は覚えも良かったし、もしわからない言葉があっても私たちが助けるから心配しないでね」
そういう2人の言葉に頷いて、空のテイワット大陸の旅は幕を開けることとなった。その旅をはじめる前に、空は自分を助けてくれたなまえとパイモンに自分の話をすることにした。まだわからない言葉や表現しにくい難しい言葉も多いために空は砂浜で絵を描いて説明した。空が自分の中でわかっていることだけを2人に教えた。座れそうな石が一つしかなかったためになまえと空は同じ石に隣同士で腰かけてパイモンはその近くでいつものようにふわふわと浮いて話を聞いた。今まで何の事情も話さなかったのにテイワットの言葉を教えてくれた2人はすでに空にとって信頼に足り得る仲間となっていた。
「よし、じゃあそろそろ行こうぜ!」
話も終わり、これから始まる旅に決意を新たにした空を見てパイモンはそう切り出す。海辺から離れて、先に行くパイモンのあとをおって空となまえは歩き出した。海から森へと入り、坂を登っていく。先を行くパイモンの背中を追いかけながらなまえが空に話しかけた。
「そういえば、前に一度話したけれど今、私たちがいるこの場所はモンドっていう風の国なんだ」
「風の国?」
「うん、このテイワット大陸には七つの国があってそれぞれを治めているのが『俗世の七執政』。通称、七神。モンドは風の神であるバルバトスの領域で自由の国なの」
「……自由の国」
なまえの言葉をしっかりと忘れないように頭にいれる空。その時、先を行くパイモンが何かを見つけたかのように2人に向かって手を振った。
「おーい! ふたりとも!」
「どうしたの? パイモン」
パイモンのところまで到着すると坂道の終点であり、崖になっていた。そこから景色が一望できる。空は初めて見たがどうやらここはかなり高低差のある土地のようだ。右手側には3人が立つ場所よりももっと高い崖がそびえたっており、その向こうはよく見えない。パイモンの後ろに湖が見えてその真ん中に像のようなものが見える。遠くにうっすらと見える街並みを除けば人工物はその像だけなので目を引いた。
「あれを見てみろ。あれが『七天神像』だぞ」
パイモンは湖の真ん中に見える目立つ像を指さした。七天神像は先ほどなまえの言っていた七神を象った神の象徴だという。風の国であるモンドの司る元素は風である。
「おまえの探してるのが、この風の神かどうかは知らないけど……。ここに連れてきたのはここが風神の領地だからなんだ」
言葉は詩となり風とともに流れる。そうパイモンが空に話した言葉は彼にとって初めて聞くものだった。目指す神がわからない以上、パイモンの言う通り最初に出会えるかもしれない神が風神というのは良い選択かもしれない。そんなことを空が考えている横でパイモンはなまえを見ていた。その視線に気づいたなまえがパイモンをみて首を傾げるとパイモンは顎に手を置いてなまえに問いかけた。
「そういやなまえは神の目をつけてるけど、使ったことないよな?」
「元素についての話は聞いていたけど、なまえはえっと、その神の目を持っているの?」
「なまえがつけてるそのガラス玉みたいなのが神の目だ」
どうやらパイモンはなまえが歩くたびに揺れる神の目を見つめていたらしい。その指摘に空が反応して、2人の問いに応える形でなまえが口を開く。空が知る限りなまえが元素を使ったところは見たことがなかった。だから気になった。
「あ、そうだったね。……うん、私は風元素を操ることができるよ」
空とパイモンの好奇の入り混じった視線を受けたなまえがなんてことないようにそう答えた。実際に見せた方が早いだろうと2人の前に手をかざすと手の中で小さな旋風が起きる。普段は見えないはずの風が螺旋状に視覚化されて思わず感嘆の声が上がった。
「元素はすぐ近くにあるから、その力を借りるんだよ」
「力を借りる?」
「うん、神の目は外付けの魔力器官といわれている。元素は人間の身に宿る力じゃないの」
「名前も神の目だしな。神の視線を受けるほどの願いがある者が手にすることができると言われているぞ」
「じゃあ元素っていうのは、魔法みたいなもの?」
なまえが神の目について簡単に説明するとパイモンが補足した。空にとって元素を使う姿はまるで別世界で見た魔法使いのように思えた。この世界に魔法という概念があるかわからないが思わず口にしてしまった。
「魔法かあ……。うん、まあそんな感じかな。触媒として神の目を使うって思ってくれるとわかりやすいかも」
その言葉になまえがそう答えたので空は元素と神の目について理解することができた。そのままもう少し進んでいくと湖が見えた。その湖の中心にある小島に七天神像が静かに建っている。
「見ろ。七天神像だ! ……よし、空になまえ! 泳ぐぞ!」
「「え、泳ぐの?」」
当たり前のように提案するパイモンに2人は躊躇した。いくら暖かい気候とはいえ水に浸かるのは抵抗がある。
「泳がなきゃ行けないからな。船も見当たらないし、オイラみたいに飛べない限りは難しいぞ……」
「まあ、そうだね」
なまえは辺りにヒルチャールやスライムがいないか見まわした。氷スライムがいればぬれずに済むかと思ったが残念なことに見当たらなかった。