涙のない明日のために
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空とパイモンが西風教会に入ったあと、教会の前でなまえはウェンティと共にいた。空とパイモンの無事を祈ってそわそわとしている。そんな風に落ち着かないなまえにウェンティは彼女に落ち着くように声をかけるがどうもうまくいかない。
「なまえ……君が焦っても、何も変わらないんだから、もう少し落ち着きなよ」
「で、でも……ウェンティ、私ふたりが心配で……」
「焦っても彼らは帰ってこないし、あの旅人の実力なら何も問題ないよ」
うろうろと忙しなく歩くなまえを見てウェンティは腰かけていた教会前の手すりから立ち上がり彼女の腕をとり、また手すりへと戻った。そして、なまえを手すりまで導いてウェンティは隠し持っていたあるものを見せるように彼女の前に掲げた。
「それより、見て!! ……じゃーん! なまえのために用意したんだ!」
「これは、……?」
ウェンティがひろげてなまえに見せたのは一枚のローブだった。全身をすっぽりと覆うようなものである。
「ほら、夜になったから寒いでしょ? だから、これを着れば……」
「えっ、でもウェンティ……私、別に寒いとか……ぶっ」
「いいからいいから」
なまえは押し切られるようにして無理矢理ウェンティにそのローブを着せられてしまった。
「うんうん。思った通りだ。かわいいよ!」
「……」
目深に被らされたローブは全身を隠して、顔も口元しか見えない。その口元もスタンドタイプの襟のせいでほとんど隠れてしまっていた。それなのにウェンティはなまえのことをかわいいだのと誉めそやす。当然なまえは馬鹿にされたような、子供扱いされているような気がしていい気分ではない。あからさまに不機嫌そうな顔に変わりそれを見せつけるためにフードを取ってウェンティを睨む。
「なんだいなまえ、そんな顔して。せっかくこのモンドで一番愛される吟遊詩人のこのボクが褒めているのに」
「……信用できない」
「ええっ! ひどいよ~! ボクはいつだって素直なのに……。なまえはボクの言葉が信じられないの……?」
なまえの返答を聞いた途端ウェンティは目をうるうると涙で滲ませた。自分が可愛らしい少年であるという彼が思うその武器を使ってなまえを見つめてくる。だが先ほどのシスターとは違い、それに彼女が絆されるはずもない。
「もう、ウェンティ。茶番はいいから」
「茶番って……。せめて寸劇って言ってよ。なまえってちょっとボクに対する当たりキツくない?」
腰に手を当ててむすっとする不機嫌ななまえはウェンティの言葉をまともにとることはなかった。それどころかそのウェンティの態度を茶番だと言って彼の言葉に取り付く島もない。
「思ってもみないこと言う子よりはマシ!」
「ええ~? でも、なまえのその格好が可愛いのは本当だよ」
「……」
可愛いと言われても正直信じられないなまえはウェンティをまた疑うような眼差しで見つめる。そんななまえの視線を遮るようにウェンティはもう一度なまえに着せたローブのフードを彼女に被せた。彼は自分の顔をなまえから隠してから彼女にもう一度言葉を紡ぐ。
「なまえは何着ても可愛いとボクは本気で思ってるよ」
それはウェンティの本心だった。ウェンティの表情はもうからかいを含んでいるような笑顔ではなかった。なまえにとってウェンティとは信頼のできる気の置けない友達であり、そしてかわいらしい“子”である。それは今までずっと変わらないことだった。その地位を変えるためにウェンティがどれほど努力しているかなまえは知らない。気づかないからこそこのやり取りを許されているのだ。それを知っているからこそウェンティはこうしてローブで二人の間を遮断した。そうして自らの顔を見せないようにしなければ本心を告げられないでいるのは今も変わらない。