風を捕まえる異邦人
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ガイアと別れ、神殿の外に出た三人は次の目的地である南風の獅子の神殿の場所を再確認するために地図を広げた。
「次の神殿は少し距離が離れてるね……」
「そうだな……」
「でも、風魔龍がいつまたモンドに戻ってくるかわからないから早く行こう」
連続で慣れない神殿を攻略して少し疲れが見えているが、モンドの人達の平穏を取り戻すために頑張ろうと三人はお互いを励ましあって、次の神殿へと歩を進めた。そして、たどり着いた先には今まで巡ってきた他の神殿のように先行して調査していた西風騎士団の一員であるリサが待っていた。
「あら、可愛い子ちゃんたち。危ないのに手伝ってくれるなんて、感激だわ」
「ちょっとオイラたち疑問に思ってたんだけど……」
「なにかしら?」
「どうして図書館司書が遺跡に?」
上品な雰囲気を醸し出したまま出迎えてくれたリサに道中謎だと話していた疑問をぶつけた。それに不快な思いをすることもなく、むしろいい質問だと話して答えてくれた。
「それはもちろん、ジンがわたくしを信頼してるからよ。だから、あなたたちもわたくしをもっと信じていいわよ」
話を聞いて抱いた印象からリサはどうやら優しいお姉さんのようだ。そう話すリサと一緒に三人は神殿に入った。神殿内はやはり今までと同じようにヒルチャール達の巣窟になっていた。リサが神殿の奥で強い元素力が感じられると話すのでそこを目的地に定めて道を探しながら進む。
この神殿も先ほどガイアと共に進んだ神殿と同じように床を浸水している場所が多かった。リサの神の目は雷。彼女の水と雷もまた元素反応を起こすらしく、はじめてみる元素反応は空にとって、とても新鮮だった。リサは元素の理論もよく知っているらしく、この元素反応は感電反応であるということや、その作用について説明してくれた。
「摩擦で生じた雷の火花は、落ちるような恋ほどの衝撃ではないけれどね」
そう笑ったリサの言葉が空の心に不思議なほど残った。そのままヒルチャールやスライム達を倒して進む途中、空はふと不思議に思っていた疑問をリサにぶつけることにした。リサなら答えてくれるだろうと思ったからだ。
「俺、ずっと気になっていたんだけど、リサさんのその首元のそれは……」
「ん? わたくしの首にあるもの? ええ、神の目よ。そっちの可愛い子ちゃん……じゃどっちかわからないわね。なまえちゃんが持っているものと同じものよ」
リサが身に着けている物が神の目だと言うことは薄々気が付いていた。だけど、空が気になったのはその色である。なぜ色がなまえのとは違うのかと次いで質問するとまたリサは丁寧に教えてくれる。
「あら、それは使える元素が違うからよ。わたくしは雷元素を使えるから紫色なの。なまえちゃんは風元素でしょう? そうやって見た目からどういった元素が使えるか判断できるのよ」
使える元素によって神の目も異なるのだということを教えてもらい空は納得して、リサに礼を言った。すると、今度はリサが逆に問いかけてきた。
「そういえばわたくしも気になっていたのだけれど、なまえちゃんの神の目はモンドの形のだけど、なまえちゃんはモンド出身なのかしら?」
「えっ!」
神の目にも形があることを初めて知った空はびっくりした。そんな空の声に苦笑しながらなまえはリサの質問に返事をした。
「えっと……、まあ……そうなるんでしょうか……?」
「あら、自分でもわかってないの? もしかして、なまえちゃんは記憶に障害が……?」
なまえの煮え切らない返事にリサはもしかしてまずいことを聞いてしまったのかもしれないと思ったが、それはどうやら違うらしい。
「いえ、そういうわけではないんです。ただ、ずいぶん前にモンドから出ているので……」
「あら、そうだったの。なまえちゃんの神の目を見て不思議に思っていたのだけど、謎が解けてよかったわ」
なまえの神の目の形は彼女がモンド出身であることを示していた。だからこそ、はじめて西風騎士団の本部でなまえと対面した時から不思議に思っていたのだ。しかし、リサはスメールに留学していた期間があり、その間にモンドにいたのかもしれない。そもそもモンド出身といっても、なまえの出身がモンド城内ではなく清泉町やアカツキワイナリーなどの出身だったら知らないかもしれないわねとリサは考えを終わらせた。神殿の奥に到着すると他の神殿と同じようにやはり風元素を帯びた石が鎮座していた。それを他の神殿と同じように壊した。壊し終わって、パイモンがリサに話しかけた。
「そうだ! オイラたち、もうひとつ聞きたいことがあるんだ」
「あら、なにかしら?」
「えっと、風魔龍のことなんだけど……アンバーとガイアが風魔龍は四風守護のひとつだったって話をしてくれたんだ。それで、なまえが昔、風魔龍が力を失ったから四風守護じゃなくなったって言ってて……」
「なまえちゃん、よく知っているわね」
「歴史が好きな友達がいて、その人が教えてくれたんです」
「へえ、どんなお友達なのかしら。少し興味があるわね……あ、ごめんなさい。話が逸れたわね。……風魔龍のことよね」
そう言ってリサはコホンと咳ばらいをひとつしてから三人に語りだした。
「東風の龍・トワリン、南風の獅子・ダンディライオン、北風の狼・ボレアス、西風の鷹、セピュロス……それらはモンドの四方の風の守護者で、風神『バルバドス』の眷属でもあるわ。トワリン――それが風魔龍の名前よ」
「「トワリン……」」
リサの言葉に空とパイモンが新たな情報に息をのんだ。
「彼は、初めに『自身の力』を燃やし尽くしてしまったからね」
かつて風神の眷属として、人々から祭り上げられていたはずの東風の龍、トワリンはいまや魔龍となってモンドを襲っている。自身の力を燃やし尽くして、他の神殿に残された元素力から力をもらっている。その原因をリサは憎しみだと言った。しかし、トワリンが魔龍となってしまった根本的な原因はリサが生まれるずっと前の話だから本当のところはわからないらしい。だから、その手掛かりとしてリサは一冊の本をくれた。それは百年以上も前の出来事が書かれた古い本だった。
「さて、これで元素の流れも元通りになったわ。わたしくの調子も戻ってきたし……」
その後無事に神殿の外に出た時、リサがそう話した。なまえ達は自分を信じてほしいと言ったリサの言葉を信じることにした。モンド城に帰ると言うリサと別れて、三人に戻ったなまえ達。
「やっと終わったな。これで元素の流れも、地脈の循環も元通りになるよな」
地脈の循環が戻れば一安心である。風魔龍が神殿から得ていた力の供給が止まればとりあえずモンドを攻めることはないだろう。なまえもほっとしたようで纏う雰囲気も穏やかになったように見えた。
「騎士団に戻ってみるか? もちろん、他にやりたいことがあったら、オイラも付き合うぞ」
そう言ったパイモンは空に四風守護の神殿で手に入れた「失われた風神の瞳」の話をした。
「騎士団に戻ろう」
パイモンの提案に空は考えることもなくモンド城へと戻る道を選んだ。モンド城の様子が正常に戻ったのだったら、いろいろ新たな情報を得ることができるかもしれない。そう思った。