風を捕まえる異邦人
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その後なまえは空に向かって困ったように笑った。
「……ごめんね。久しぶりのモンドだから色々考えちゃったみたい。空って聞き上手だから、つい色々話しちゃう」
なまえの言葉に空はもっと話してくれてもいいのにと思った。なまえはずっと空に親切にしてくれるけれど自分のことは簡単なことしか教えてくれない。その理由さえも空は知らない。空がなまえについて知っているのは風元素の神の目を持つのにその力を使わない弓使いの旅人だということ。たまたまモンドにいるだけのふらふらとあてもなく旅をしていると言っていた。空にとってこの旅の目的は妹の安否を確かめて、彼女と一緒に次の世界に渡ること。だからこそ、なまえのことは深く知る必要はない。彼女とはいつか必ず別れがくる。どうせ同じ時を生きることはできないのだ。だからこそ知らないで良かった。それなのに、なぜ空は知りたいと思ってしまうのだろう。
「空ー! なまえーっ!! 早く来いよー!!」
遠くからパイモンとアンバーが呼ぶ声がする。なまえが答えて、空に顔を向けた。
「二人が呼んでる。待たせちゃったね、……行こう空」
今度は笑顔だった。自然と差し出されたなまえの手。はじめて差し出された手だった。知る必要はなかった。彼女の手のぬくもりも、その優しさも。……仲良くなる必要も。いずれ別れがみえるなら、知りたくなかった。
「うん、――行こうなまえ」
差し出されたなまえの手に空は自分の手を重ねた。以前、森で握った時と変わらない自分よりも小さな女の子の手だった。それでも、なまえの手は力強く空を引っ張ってパイモン達の待つ場所へと空を
「(俺は……なまえのことが――)」
知りたくなかった。ずっと一緒にいられないのだから。それならこの感情は見えないほうがいい。今までも誰かと仲良くなっても空はその一線だけは超えることをしなかった。どこに行っても空と蛍、彼らは異邦人だったから。何かに関わり、誰かと出会うのは旅の醍醐味だ。そして、その途中で感謝されたり罵倒されたり、仲良くなったりしたとしても、どんなことがあっても最後に別れは必ず訪れていた。
世界を超えて旅をする空にとって出会いは別れと同義だ。だからこそ、いつも一定の距離を保っていた。誰かと一緒に旅をすることだって初めてじゃない。夜の焚火を囲い、笑いあったこともあった。別れの時に泣いて別れたこともあった。でも、それは友と別れる悲しさであって手を伸ばして渇望するようなものではなかった。それなのに。
「(なまえとずっと一緒にいたいなんて、……)」
そんなことは考えてはいけないのだ。繋がれた手の先にあるなまえの後ろ姿を見ながら、その先にある感情を知らないふりをすることにした。そうしなければ進めないような気がしたから。