風を捕まえる異邦人
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神殿の内部はやはりヒルチャール達の巣窟になっていた。さらに変わったギミックがあり、かつては試練を超えて神の眷属に会えるようなものだったのかもしれない。しかし、やはりというべきだろうか。内部は外からみた時よりもひどく朽ちており、何年もというよりももっと長い間放棄されていたように思えた。だが、最深部である場所は頑丈にできていたためかあまり朽ちているようには見えず、神殿の在り日の姿を残しているように思えた。そこに強い風の元素力が感じられて、この場所がかつては神殿の祭祀場だったのかもしれないと思った。
「龍の気配がする! あれが力の集まるポイントかな?」
アンバーが一つの石を指した。そして、その石を壊すとやはりそれが力の源だったようでそこに感じられた風の元素力も霧散してしまったようだ。なんだか少しだけ寂しく思っているとアンバーが安心したように息を吐いた。その後アンバーはジンの話をして、それから過去の歴史に興味があれば図書館司書のリサに聞けばいいと三人に話した。
「……先に言っておくけど、わたしが歴史苦手とか、そういうんじゃないからね!」
疑うようなまなざしを感じたのかアンバーがそう言った。だが、少し目を逸らして一瞬考えた後彼女の行動が真実を告げていた。
「図書館司書の知識が……偵察騎士を上回っているのは当たり前のことでしょ!?」
やはり、アンバーは嘘がつけないようだ。誤魔化すように重ねた言葉のせいで余計歴史が苦手だと言う事実を伝えているように見えて仕方なかった。少し変な雰囲気になってアンバーは誤魔化すように「と、とにかく、早く出ましょう!」と言って出口へと向かって行った。それにパイモンもついて行って、倣うように空も歩き出そうとしたが、なまえが立ち止まって神殿の奥の壁を見つめていることに気づく。同じようになまえの隣に立ち彼女の視線を追ったけれど、空にはただの何の変哲もない壁にしか見えなかった。しばらく、空もなまえのように壁を見つめていたがやはり何の変化も見られなかった。
「……」
「……なまえ」
「空、どうしたの?」
「いや、さっきからずっと様子がおかしいから……」
この神殿に入ってからなまえはほとんど話していない。先程の四風守護の話を聞いた時のなまえの様子も気になって、心配した空は彼女に声をかけた。なまえがようやく空へと視線を向ける。
「少しだけ、……この神殿について考えていたの」
「神殿について?」
空の問いに頷いてなまえはまた壁の方を見つめた。そんな彼女の横顔から目が離せない。
「どうして今の西風教会は風神だけを祀って、この神殿を……四風守護の祭祀を放棄したのかなって……彼らがモンドを……自由を得るために……守るためにどれだけ……」
なまえがぽつり、ぽつりと呟いた言葉。その言葉を聞いてなまえはモンドについてきっとよく知っていると思った。空が想像しているよりもずっと。でもそれがなぜなのかわからなかった。彼女は歴史が好きなのだろうか。それとも四風守護の祭祀をしていた関係者だったのだろうか。今のなまえの雰囲気では彼女にそれを尋ねることはとてもできなかった。
「あの広場に、巨大な風神像を再建できた時のような……、あの情熱があれば……」
「……なまえ」
空はただなまえを呼ぶことしかできなかった。