招かれた客人
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「……と、ここまでの経緯はこんな感じだ」
アンバーよりも地位が高いせいか、それとも代理団長の名代だったせいか今までのなまえ達の成り行きを説明したのはガイアだった。それを神妙な顔で聞き入っていたのは2人の女性のうちの薄い金色の髪を黒いリボンで高い位置でまとめた女性だった。
「――なるほど。まず、アンバーのことだが偵察騎士としての責任を果たしていたとはいえ、どうやら君たちにあらぬ誤解を与えたようだ。しかし、モンドを守りたいという気持ちから来たものなのだ、どうか許してほしい」
「それが騎士団の務めだってことは俺たちにもわかっている。気にしてないから大丈夫」
ガイアの説明を呑み込むように少し黙った後、答えたのはその薄い金髪の女性だ。彼女が真っ先に口に出した話題は歓迎の言葉ではなくアンバーの非礼を詫びるものだった。その言葉からおそらくこの人が代理団長なのだろうと空は思いながら、気にしていないと彼女の謝罪を受け入れた。それにありがとうと彼女が一言言うと、それからすぐになまえの方に向けてまた口を開く。
「そして、なまえさん。ガイアが失礼な態度をとったようだな。風魔龍と対峙していた時に見えていたのはこちらの彼一人だったからなまえさんがいることを知らなかったのだ。私の落ち度だ。申し訳ない」
「えっ……! いえ、騎士団ならモンドを守るために怪しい人を疑うのは当然ですから気にしないでください」
代理団長だと思われる彼女は空のことを手のひらを向けて丁寧な態度で指し示してからなまえに謝罪した。名指しで謝罪を受けてなまえは戸惑った。なまえだって旅仲間である空やパイモンにさえ自身のことは旅人であるという話しかしていないのだ。だから、ガイアのような警戒心の強い人が事情を話すこともないなまえを疑ってくるのは当然のことだと思っていた。
けれどなまえはたとえ問い詰められて追い出される羽目になろうとも、空達にさえ話していないことを初対面の人間に話すつもりはない。結局、空達のおかげでなまえの事情を話さなくて済んだのだ。だから代理団長に謝罪してもらう必要もなく、おそらく本来ならなまえが話さないことを詫びねばならないぐらいである。それなのに代理団長である彼女は一個人ではなく西風騎士団の代理団長としてなまえに詫びた。そこからみても彼女は謙虚で実に誠実な、できた人間ようだ。アンバーが尊敬する気持ちがよくわかった。
なまえ達が騎士団から受けた非礼について気にしていないことを知ると代理団長はほっと息を吐いた。風魔龍と対峙した様子を見て、彼女はこの異邦の旅人達に依頼したいことがあったからだ。非礼を詫び、そのうえで依頼をするべきだと彼女は思っていたから最初に謝罪を口にしたのだった。
「君たちが寛大な心の持ち主で良かった。あらためてモンドへようこそ、風と共に訪れし旅人たち。騎士団の代理団長として君たちを歓迎しよう。風魔龍から市民を守ってくれてありがとう」
そしてようやく歓迎の言葉と風魔龍の件の感謝を伝えた。それは彼らをモンドは受け入れるという証明の代わりでもあった。
「自己紹介が遅れてしまってすまない。私は代理団長のジン。こちらはリサ、騎士団の図書館司書だ」
代理団長は自身と共に部屋にいたもう一人の女性について紹介した。もう一人の女性は紫を基調とした服を着ていて、頭に大きなとんがり帽子を被っていた。それを見て空は(あ、魔法使い……)と心の中で思った。リサは3人に挨拶をすると、風魔龍がもたらすモンドへの影響について説明してくれた。彼女の話によるとどうやら、風魔龍が目覚めたのは最近のようだ。
「今のモンドは、元素の流れと地脈の循環が子猫ちゃんが遊んだ後の毛糸玉みたいになっていてね。魔法使いにとっては最悪な状況よ……肌も気分も調子悪いわ……」
風魔龍がもたらした混乱はどうやら人的被害だけではないらしい。リサはそう言いながら辛そうにしていた。
「それがなければ、尋ね人の張り紙を出すよりも、騎士団がもっと効率のいい方法で君たちを助けられるのだが」
風魔龍の件は騎士団も頭を抱える問題のようだ。人手不足がかなり深刻らしく、空の家族を探すことすら張り紙を張ることぐらいしかできないほどその件に人手を割かれているらしい。だから、ジンは空に言った。
「もうしばらくモンドに留まっていてくれ。西風騎士団が問題を解決してみせるから」
ジンの提案を聞いて空は首を振った。
「俺は……騎士団に丸投げするわけにはいかないと思ってる」
<次のページに関する注意>
人によっては不快に思うかもしれない表現があります。
・西風騎士団の問題点について軽く掘り下げています。
・旅人が騎士団に対してがっかりしている描写があります。旅人の考えみたいなものなので飛ばしても問題ないです。
読み飛ばす方はこちら→[#book=12:c=15]