風を捕まえる異邦人
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「ガイア先輩!」
「……せんぱい?」
なまえと空が警戒する中、アンバーの声が響き渡った。先輩。たしかにアンバーはその男をそう呼んだ。単純に考えてその男は騎士団所属の人間であると考えていいのだろう。つまり、モンドの人間であるということだ。
「うん。こちらはガイア先輩、わたしたちの騎兵隊長なの」
アンバーはなまえ達にそのガイア先輩を紹介してくれた。騎兵隊隊長だという彼の肩書から西風騎士団に騎兵隊が存在することがわかる。騎兵隊が大隊なのか中隊なのか、それとも小隊なのかはわからないが隊長という身分なのだからそれなりに信頼されているに違いない。
「それで、ガイア先輩。この人たちは、えっと……遠いところから来た旅人で……――」
ガイアと向き合ったアンバーは彼になまえ達の名前を紹介した。余りに簡易な紹介だったためガイアは彼らが遠くから来た旅人であることしかわからなかった。だから本来ならば疑うべきであるはずの偵察騎士のアンバーがやけに肩入れする目の前の謎の旅人達のことを逆に怪しむこととなった。
考え込むようなそのガイアの態度にアンバーが旅人達との出会いを説明して、彼らが旅をしている動機も包み隠さずに話した。空の行方不明の妹を探していること、そのために風神に会いたいこと。なぜ風神に会うことが妹に繋がるのかアンバーは知らないためにあまり詳しくは説明できなかった。けれどアンバーなりに彼らが怪しい人物ではないことを精いっぱいガイアに説明したつもりだった。
「なるほど、モンドへようこそ」
そのおかげかガイアは納得した様子を見せてタイミングの悪さに苦笑しながらも3人の来訪を歓迎してくれた。
「俺にも分かるぜ、血縁者と離れ離れになるツラい気持ちがな」
同情したようにガイアは空を見て話す。その口調からそれが本心なのか空には判断が付かずに曖昧に頷いて答えた。
「それから、何で風神を探してるかは知らないが……誰にでも言いたくない秘密はある」
秘密。そう言われて空は少しドキリとした。彼は確定していない状況についてなまえとパイモンに話していない事があった。それを見透かされたような気がして、ふたりに対して後ろめたさを思い出してしまった。
「――お前もその口だろ?」
しかし、そう言ったガイアの目は空ではなくなまえを見極めるように見つめていた。つまり、彼が秘密について聞き出したかったのは空ではなくなまえだったようだ。それを動揺した様子もなくなまえもまたガイアを見ていた。しばらく何も言わずに見つめあっていたが、なまえの前にかばうように空が立ったことでそれは終わりを迎えた。その様子をみてガイアはアンバーの話を鵜呑みにすると出会って2ヶ月たらずであるのにずいぶんと信頼を得ているのだと思った。
「(この旅人の事情は理解したが、結局そのお嬢ちゃんの方は何もわからずじまいじゃないか)」
ガイアはなまえにカマをかけたつもりであったが彼女はのらなかった。年若い人間なら何らかの反応が得られたはずだったのだが、どうも空振りに終わった。ただの少女ではないということを理解して、彼女が身に着けている神の目を見ながら肩をすくめた。
「やれやれ……誤解しているようだから言っておくが、俺は別にそのお嬢さんに危害を加えようってわけじゃない」
「あ、当たり前だろ!! なまえに手を出してみろ!! オイラが……いやオイラと旅人が黙ってないぞ!!」
ガイアの言葉に空にかばわれたなまえの後ろからパイモンの声が聞こえてくる。なまえの肩から顔と手だけを出しているがパイモンの語気は強い。パイモンの言葉に空もガイアを睨んだまま肯定するように頷いた。
「わたしだって! たとえガイア先輩が相手でも……偵察騎士としてなまえたちを本部に連れていくまでは安全を保障する責任があるもの!」
しかも、ガイアと空達の間で話していたはずのアンバーもいつの間にか空の横に並んでなまえをかばっていた。
「 ……大丈夫だよ、なまえ! 騎士団の一員として、あんたのことはわたしが責任を持って守るわ!」
「待て、アンバー。お前まで話にのってくるな。ややこしくなるだろう。……とにかく俺は危害を加えるつもりはない。それに風魔龍のことについて騎士団を代表して礼を言いに来ただけだ」
なまえの旅仲間である空とパイモンだけではなく、アンバーまでもが話に参戦してきてガイアは頭が痛くなった。少しカマをかけるつもりだったのだが、ややこしい方向に向かっていきそうだったのを無理やり修正した。そのせいでガイアが受ける視線は冷たい。誰も疑わないからこそ、疑っていかなくてはならないのも大変な仕事だとガイアは心の中で溜息を吐いた。そんなガイアに空はなまえの前に立ったままその礼に答えることにした。
「……どういたしまして。それでお礼は?」
アンバーの時には謝礼の品など要求しなかったのに、空はガイアに要求する。そこから見ても空の気分が害されている様子がみてとれた。空自身も自分の話を完全に信じないのは国を守る人間なら当然のことだと納得していたはずなのに、あからさまになまえに疑いの目を持たれるのはなぜかとても不快だった。この男にはなまえを近づけないようにしようと空は心の中で誓った。
「モンド名物のニンジンとお肉のハニーソテーでもどうだ?」
「それはさっき聞いた」
「おう、アンバーからな!」
謝礼を要求する空にガイアはアンバーと同じものを提案した。ニンジンとお肉のハニーソテーとやらはモンド人の中では周知のメニューなんだと思いながらガイアの提案を突っぱねた。
補足
ガイアの言動としてはお嬢ちゃんの方が適切かなと思いますが、この状況でお嬢ちゃんと呼ぶと旅人をもっと怒らせる可能性もあるので言葉にするときはあえてお嬢さんと呼んでいます。