脅威
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
なまえの姿が近くなり、もう少しで到着するなと彼女の姿を眺めていたら、ふいに風が強くなったことに気が付いた。青い空が突然曇りだし、巨大な咆哮がどこからか響いた。なまえが強風にあおられて、バランスを崩す。
「えっ!? な、なに!?」
突然のできごとで何が起こったかわからずに混乱したようななまえから悲鳴が上がる。反射的に空はなまえを呼ぶ。
「なまえッ!」
空気がざわめき、龍が姿をあらわす。人々の恐怖をあおるように、その龍は低空で飛行し、その姿を人々に見せつけた。
「うそ……」
アンバーが龍の出現に思わず口元を抑えた。まさか、風魔龍がモンド城内にまで侵攻してくるとは思ってもみなかったのだ。戸惑うアンバーだったが、飛ばされたなまえを追いかけて空が駆け出したことで我に返った。逃げ惑うモンドの住民とは逆方向へと走り出した空にアンバーはすぐに追いかけることができなかった。なぜなら彼女は西風騎士団であったからだ。空と共になまえを探しに行くか、それとも他の人の避難を助けるか。騎士団の義務ともいえる救助の優先順位に迷った彼女はどうすればいいかと迷うあまり空について行くことができなかった。
「なまえ! 風の翼をたたんで!!」
空が必死にあおられたなまえを追いかけながら声をかける。風に飛ばされそうになったパイモンが空と離れないように彼の服に捕まった。なまえが空の指示に従って風の翼を閉じたけれど、一歩遅かった。彼女が風の翼を閉じたと同時に龍が再度咆哮した。するとその咆哮によばれるようにいくつかの竜巻がモンド城内に出現する。それはなまえの近くにも出現してまだ浮いたままだったなまえはいとも簡単に竜巻に巻き込まれた。
「空ッ…!」
「なまえ!!」
空へと手を伸ばしたままなまえは風に吸い込まれて姿が見えなくなった。空もまたなまえに手を伸ばしたけれど、その手が届くはずもなく彼女の姿を見送ることしかできなかった。それでも空はなまえの姿を追いかけるように走った。もはや彼の頭の中はなまえのことでいっぱいで自身のことなど顧みる余裕はない。だからこそ、彼は自身に迫る脅威のことに気づかなかった。
「空! 後ろ……!」
最初にその脅威に気づいたのは空にくっついていたパイモンだった。空の服をひっぱり、震える声で彼を呼んだ。パイモンの焦ったような言葉に空はようやく気付いた。自身の背後にもまた竜巻ができていたことに。けれど、それを認識する間もなく彼もまた風の渦に呑み込まれることになる。
強い風のなか空は何もすることができずにただ己の身を守ることしかできなかった。それほど巨大な力の前に無力なのだと痛感させられる。竜巻に巻き上げられることで上空に放り出された空。そうなって、ようやく空は風の翼をひろげて、とりあえず身の安全を確保することができた。
「(なまえは……)」
空は同じようになまえも上空に飛ばされているのではないかとあたりを見まわしたが彼女の姿は見えない。
「おい、空!ここはモンドの上か? それになまえは無事なのか!?」
「……」
空にくっついたままのパイモンが安定した体制に気づいて彼に話しかけた。けれどもなまえの安否がわからない空はパイモンに答えることはできなかった。
「……空?」
「……パイモン、ちゃんと捕まってて」
「えっ、お、おう!」
パイモンが返事をしない彼にもう一度空の名前を呼んだ時、己に刺さる敵意を感じ取った。
――何か来る。
そう思ってパイモンにしっかりと捕まっておくように指示すると警戒を強めた。
「うそだろ……! こっち来るぞ!!」
「わかってる! パイモンしっかり捕まって!」
敵意の正体はあの龍だった。パイモンが叫びながら空にぎゅっと捕まる。襲い掛かってくる龍に少しだけ当たったが、何とか動ける範囲であった空は風の翼で龍と対峙することとなった。