風を捕まえる異邦人
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「そうだ、一緒に騎士団本部に行く前に、2人に渡したいものがあるの」
そういって新たな話題を提供してきたのはアンバーだった。先程ヒルチャールの巣を片付けるのを手伝ってくれたお礼だと彼女はそう言った。
「おいおい! オイラにはないのかよ?」
「えっと……パイモンちゃんには使えないものだからね」
戦うことはできないけど、一緒にいたんだぞ! と言わんばかりに身を乗り出してくるパイモンにアンバーは気まずそうに少し視線を逸らした。
「パイモン、アンバーを困らせちゃだめだよ」
「だってなまえ~。オイラだってがんばって空のサポートをしたんだぞ」
不満そうにアンバーに文句をいうパイモンをなまえがとがめるがパイモンはまだ不満気な様子。しかし、アンバーの新しい提案によってパイモンの機嫌は一瞬でなおることになる。
「でも、今夜はモンド名物のニンジンとお肉のハニーソテーをごちそうしてあげる」
「ニンジンとお肉のハニーソテー!」
なんておいしそうな名前なんだとパイモンが言葉だけで口からよだれをたらしていた。
「(やっぱり、パイモンは野宿じゃなくて食事に不満があったのか)」
空が自分の考えが正しかったことを思いながら、パイモンの機嫌を損ねたらおいしいもので機嫌をなおすことができるのかもしれないとパイモンの喜びを見ていた。
「とにかく、わたしについてきて。今から……高いところに行きましょう」
そう提案するアンバーの案内でその高いところにやって向かった。途中、簡単にモンド城内の案内を受けた。いつもならモンドの住民や商人、そして旅人でにぎわうはずの広場や、風魔龍に人々が怯えていたとしても繁盛している酒場の話……。いろいろなモンドの話を受けてアンバーが連れてきた高いところというのは先ほど空が感心していた巨大な像の真下にあたる広場のような場所だった。
近くでみても大きな像で上の方は近くに来ると余計見ることが叶わない。なので未だに一体何の像なのか空にはわからなかった。翼をもっている人の像だということしかわからなかった。像の向こうにはこれまた大きな建物があり、先ほどの家屋とは違い石造の建築である。立派な建物であることはわかるのできっとここはモンド城にとって重要な施設なのであろう。
「それで、お礼っていうのはね――」
像の近くでアンバーが振り向いて立ち止まった。そして、2人に風の翼とよばれるものを手渡した。
「「風の翼?」」
「偵察騎士はこれで空を駆け抜けるの。モンドに住む人たちも、みんなこれを愛用してるんだ」
「へ~、城外で誰かが使ってるのは遠くから見たことがあったけど、こんなに近くで見るのははじめて……」
なまえが興味深そうにアンバーから手渡された風の翼をまじまじと見つめていた。そんななまえの姿に内心嬉しいと思いながらアンバーは高いところであるこの場所に連れてきた理由がこの風の翼にあることを話した。実際に体験してほしいとアンバーは熱く語っていた。
「ずいぶんと熱く語るんだな」
「『風』は、モンドの魂だからね」
アンバーがあまりに熱く語るものだから風の翼をもらっていないパイモンさえも驚いた様子で話しかけた。そう言われてアンバーは当たり前だと言わんばかりに腰に手をあてた。
風の国。風神の領地と呼ばれるその国は自由であることが最大の特徴といえる。だが、人々の心には風神を思う心はなくしていないということだろうか。人々は自由であるけれどそれはこのモンドが無法地帯であるというわけではない。そういうことだ。
「さあ、さっそく風の翼の性能を試しましょう」
操作は簡単だけど、指示はちゃんと聞いてねとアンバーは2人にそう言った。
「一度に飛ぶと危ないから順番に飛んでね」
そう言われてなまえと空は顔を見合わせた。
「どっちが先に飛ぶんだ?」
「俺が先に飛ぶよ。なまえは俺の後に飛べばいい」
「空……、ありがとう」
パイモンが聞いたことで名乗り出たのは空だった。風の翼を使ったことがないと言っていたなまえがこんな街中で飛ぶのを怖がっているのではないかと思っての判断だった。彼の予想は当たっていて、なまえは空の気づかいにとても感謝していた。
「じゃあ、わたしは先に到着地点にいるから飛んでみてね」
ルートと目的地、そして風の翼の使い方を指示したアンバーは手慣れたように風の翼を広げて飛び立った。そんなアンバーの姿を見届けた後空はなまえとパイモンに言った。
「パイモン、なまえの傍にいてあげて。俺はひとりでも大丈夫だから」
「おう! なまえはオイラに任せろ!」
胸を叩いてやる気をみせるパイモンに頷いた空は危険防止のための塀をつなぐ石柱にのぼり、その上に立つとそのまま飛び降りた。躊躇することなく飛び降りた空になまえが塀に乗り出すと風の翼を使用して宙を舞う彼の姿が見えた。
「……え、あんな狭いところ通っていくの??」
空が飛んで行ったところから正面を見ると背の高い建物が2つ並んでいる。その2つは並んで建てられているが隙間があり、そこを空が悠々と通り過ぎて行った。
「風の翼広げてるとギリギリだね……」
「そうだなあ……」
なんなく飛んでいる空の背中を見るが、建物と建物の間は風の翼を広げるとぎりぎりの広さで、操作に不安を覚えているなまえは冷や汗をかいていた。私、通れるかなと自信なさそうに呟くなまえにパイモンは返事をしながら、どうすればいいかと思って悩みながら腕を組む。そして周辺を見まわしていい考えが思いついた。
「なまえ! それならあっちからまわっていけばいいんじゃないか?」
そう言いながらパイモンは2つ並んだ建物の右側を指し示した。その場所は通りとなっており、多少風の翼の操作に自信がなくても大丈夫そうだ。
「もし、降りたとしても人は少ないから大丈夫だと思うぞ」
「そうかな……?」
「おう、大丈夫だぞ! オイラもサポートするし、せっかくアンバーがくれたんだから頑張って飛んでみようぜ!」
パイモンの励ましを受けてなまえはルートを変更することにした。空とアンバーが飛んで行った場所から少し右側に移動して、そこから飛ぶことにしたなまえ。
「……えっと、ここから飛び降りてそれから風の翼を開くんだよね……」
「おう、そしたら風に乗っていけばいいって言ってたな」
「ちゃんと開くよね……」
「大丈夫だ! なまえならできる!!」
オイラがついてるぞ! とまたパイモンに励まされてなまえはようやく飛び立つことができた。