風を捕まえる異邦人
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「そういえば、任務ってなんなんだ?」
止まっていた歩みを再会させた時パイモンがそんなことを聞いてきた。
「簡単よ、見ればわかるわ」
「見ればわかる……? 一体どんな任務なんだろうな?」
パイモンの問いに答えるアンバーの言葉は今まで感じたような"毒"がなかった。先程のできごとからアンバーの言葉にとげがなくなり、彼女がもうこちらを疑ってはいないことは明白だった。そんなことを思いながら空は任務内容に少しだけワクワクした様子を見せるパイモンを一瞥した。すると、パイモンが前方を指さし何かを発見したようだ。
「あっ、ヒルチャール!?」
「え? ヒルチャールって……」
「逃がさないで!!」
ヒルチャール。なまえやパイモン、それからアンバーにとっては聞きなれた名前であったが空には聞きなれないその単語。どこかへ向かう途中なのかこちらに気づくことはなく背を向けて歩くヒルチャールの姿にアンバーは逃がさないようにと叫んだ。
森を通る前にパイモンが好戦的なやつらだと言っていたことを思い出した空はアンバーの声でそれが敵だと理解した。アンバーの言葉になまえはすぐさま弓を取り出して狙いを定めた。弓を引き絞り、矢を放つ。
「当たった!!」
そうパイモンが叫んだ通り、矢はヒルチャールの足にあたりヒルチャールは倒れた。そこをすかさず走りこんでいた空が近づいてヒルチャールに一撃を加えた。完全に沈黙して倒れるヒルチャールから目を離さない空。空のもとへ駆けつけるなまえ達の中で2人の息の合った連携にアンバーが感心したようになまえと空を見つめていた。
「アンバーの任務ってヒルチャール退治?」
「最近、荒野の化け物が城に近づいてきてるの」
なまえがアンバーに振り返って首を傾げた。アンバーはなまえに頷いて、任務内容がヒルチャールの巣の掃除だと告げた。
「ここにヒルチャールがいたからもう近くまで来ていると思う」
近くに巣があるはずだとアンバーは辺りを見回した。そんな彼女の行動をうけてなまえ達も同じように周囲を見渡した。
「あれかな?」
「……空、どれだ?」
しばらく辺りを見回して木の丸太で作られた原始的なやぐらの上にたつヒルチャールの姿を見つけた空。あれが巣かもしれないと声を出すと、なまえの隣できょろきょろしていたパイモンが近づいてきた。空の指さす方向をみてそれが巣であるとパイモンも思った。
「うん、あれっぽいな……。なまえ、アンバー! 旅人が見つけたみたいだぞ!」
パイモンの声につられてなまえとアンバーも近寄ってきて、一行は空の見つけたその場所がヒルチャールの巣であると断定した。
「巣には結構ヒルチャールがいるわね」
「巣の掃除ってことは巣を壊すってこと?」
「さすがにここまで城に近いところに巣があると大変だからね」
「俺たちに向こうが気づく前にどうやって巣を壊すか作戦をたてよう」
偵察騎士らしくヒルチャールの巣の内部をこっそり見渡して、アンバーが呟くとなまえがアンバーに彼女に与えられた任務について再確認をした。それに頷くと、空が3人をヒルチャールから見えないところへと手招きしてそれから巣を壊すための作戦を決めることにした。見つかりにくいようにししゃがみ込んだが、作戦を決めると言っても旅人2人に偵察騎士1人といった急造のチームである。それに幸いなことにヒルチャールの巣も小規模なものであった。砂地に簡単にヒルチャールの巣の敷地の形とどこにヒルチャールがいるかを描きながら話し合う。
「一般的なヒルチャールの巣の中で一番危険なのはあんたたちも見たことあると思うけどあの大きなヒルチャールよ。でも、今回の巣にはいないみたい」
「できたばっかりだからいないのかな?」
「そうかもしれないわ。とにかくこの監視役の飛び道具を持ってるヒルチャールを先に倒さないと厄介ね」
一般的なヒルチャールの巣をまともに見たことない空にはよくわからない話であったが、それは後で聞けばいいことだ。アンバーとなまえの会話に口を挟むことなく空は2人を見守る。砂地に描かれたやぐらにのったヒルチャールのいる場所を木の棒でさして最初に攻撃するべきであろうターゲットについてアンバーは意見を述べた。なまえも空もそれは同じで反論することなく頷いた。
「じゃあ、私がそのヒルチャールを射るからそれから空に切り込んでもらう?」
「それなんだけど、わたしに良い考えがあるの」
なまえの提案にアンバーは自分の考えを切り出した。
「なまえが提案してくれた通り、なまえは監視役のヒルチャールを狙ってほしいの。だけど、その前に……」
「「「!!」」」
アンバーはそう言うとどこからか人形を出した。突然あらわれた人形に驚くなまえ達。どこかアンバーの格好に似せたそれが作戦の要なのだろうか。
「これは?」
「ウサギ伯爵だよ!」
「うさぎ……?」
「うん、まずわたしがこの子をあの崖の上から投げるからヒルチャールたちがこの子に集中している間になまえは弓で監視役のヒルチャールを倒して」
なまえの問いかけにアンバーはその人形の名前をウサギ伯爵だと告げた。これはつまり囮役の人形ということか。アンバーの頭のリボンから着想されたのだろうかと空がウサギ伯爵を見つめる。そのままアンバーは作戦の続きを話し、彼女の指示になまえは頷いた。
「俺はどうすればいい?」
「えっと、しばらくしたらウサギ伯爵が爆発するから、その後にヒルチャールに切り込んでくれたらいいわ」
「ば、爆発!? ちょっと待て、爆発だって!!??」
自分の役目について尋ねる空に返事をしたアンバーの発言の中に不穏な言葉を聞きつけたパイモンは思わず大きな声を出してしまった。そんな危険のものだとは思わず呑気に眺めていた自分が恐ろしくなった。それなのにアンバーはあっけらかんと謝りながらウサギ伯爵について話し出した。
「あ、ごめん。言ってなかったね。ウサギ伯爵はただの人形じゃなくて爆弾なの」
「ええ!? そんな……! いま爆発したりしないよな……?」
アンバーが腕に抱くかわいらしい人形が爆弾であると聞いたパイモンはすかさず空の後ろに隠れた。空の後ろから顔だけ出してウサギ伯爵を恐々と見つめる。盾にされた空は何か言いたげな表情を隠そうともしなかった。
「それは大丈夫だから安心して。とにかく逃げ道をふさぐことも必要だから、わたしがウサギ伯爵をこっちの入り口の近くに投げ込むから……」
アンバーはウサギ伯爵を片手に抱えなおしてからなまえと空に説明しはじめる。砂地に書いたヒルチャールの巣の図の入り口に丸を書いた。空に反対側の入り口近くに待機するように頼み、彼も了承した。ヒルチャールの巣を中心として崖の上にアンバー、その反対側の崖になまえが弓でやぐらのヒルチャールを上から狙い、そしてウサギ伯爵を投げ入れると言う入り口とは反対側の入り口近くに空が待機することとなった。