風を捕まえる異邦人
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それから、案内するというアンバーの提案を受け入れた3人は彼女と共にようやく森を後にできた。龍に謎の人物、そして西風騎士団だと名乗る赤い少女……旅の始まりとしては思ったよりも騒々しい出会いだと振り返る。そんなことを考えながら空はようやく見えた青い空を見上げた。
その横でなまえがアンバーに彼女がなぜここに来たのかということを聞いていた。アンバーは任務があってモンド城外に出て、なまえ達と同じように空を飛ぶ龍を見つけたらしい。森に降り立つ龍の姿をみて騎士団の一員として龍を放っておくことはできずにその場へと向かった。しかし彼女が森に着いたときにはもう龍は飛び去っており、近くにいた不審人物として3人を呼び止めたというのが声をかけた経緯らしい。どうやら、龍の関係者だと思われていたようだ。
「ええっ! オイラたちは龍とは関係ないぞ……!」
「そうだよ。私たちは星落としの湖の方からモンド城に向かう途中だったから、この森を通っていただけだよ」
「……そうは言っても、龍がいた場所の近くをあんたたちが無傷で歩いていたんだから怪しいのには変わりはないわ」
話は平行線のままだ。それでもアンバーはこちらの話を頭ごなしに否定してくる人物ではないことは助かった。怪しみながらもなまえ達の言い分もしっかりと聞いてくれている。だからこそアンバーは判断がつかないみたいだ。少し考えるように黙ったアンバーをそっと見守っていると、彼女が顔をあげて忘れていたとばかりにこちらに改めて質問をしてきた。
「……ねぇ、得体の知れない旅人さん、あんたたちは何しにモンドへ?」
少しとげのある言い方はおそらく先ほどのパイモンのツッコミにも原因があるのだろうか。そんなアンバーの言い方に大して気にすることなくなまえは返事をした。
「私とパイモンは空についてきたの」
「うん、空は妹と離れ離れになってな。その妹を探すために3人で旅をしてるんだ」
「へぇ……家族を探してるのね」
なまえのその態度を見てパイモンもまたアンバーの態度に特に言うこともなくなまえの言葉の続きを話した。パイモンは空の内情を簡潔に彼女に伝えた。それを聞いてアンバーは思わず立ち止まりそうになった。行方不明の家族を探しているという言葉はアンバーにとって他人事ではない。なぜなら彼女の身内にも同じように行方不明者がいるからだ。
彼女にとって大切で大好きなその人は、アンバーに別れも告げずに突然姿を消した。身内との突然の別れがどれほどつらいことなのか彼女にはよくわかっている。だからこそ、アンバーは疑っていたはずの彼らにもう疑いの目を向けることはできなかった。
「そうだ! 今請け負ってる任務が片付いたら、城内にお知らせを……」
「? ……突然どうしたの?」
「えっ?」
「気にさわったならごめんなさい。でも、さっきまで怪しいって言ってたのに突然親切な提案をしてくれるから気になって……」
「言われてみればそうだよな。さっきまでオイラたちのこと散々怪しいって言ってたよな」
突然、そう話し出すアンバーの言葉になまえ達は急に変わった態度に不思議がる。アンバーが素直な人物だと見ていたなまえはその意図を直接聞いてみようと思った。だから尋ねたなまえだったがアンバーはまさかそれを指摘されるとは思わず驚いて足が止まった。
しかし心変わりともいえるような先ほどまでの正反対の態度はさすがに怪しいと思われても仕方のないことだ。けれど自分の事情を初対面の人間に話すわけにもいかず、優秀な騎士らしくアンバーは冷静になれと言い聞かせてその指摘に答えることにした。
「あんたたちが怪しい人だとしても、……えっと、ただ人を探すなら大々的に知らせた方が良いと思っただけだから」
「……そうか、ありがとう」
冷静に聞こえていたかなと少しだけドキドキしているアンバーに今まで黙ってやり取りを見ていた空が感謝の言葉を告げた。そんな空の態度にパイモンがうんうんと頷いたあとアンバーに話しかけた。
「おまえ……いいやつだな」
「うん、いいひと。変なこと聞いてごめんなさい。アンバーさん」
「えっ!? う、ううん。大丈夫! それにアンバーでいいよ! 同じぐらいの年でしょ? 気にしないで!」
そんなパイモンの言葉になまえも続けて彼女に話しかけた。2人から褒めるようなその言葉たちを受けてアンバーは慌てた。しかも、アンバーにとって聞かれて当然だと思っていた疑問を失礼だったと謝罪してくれるなまえの姿に好感度が上がらないはずがない。
「ありがとう、アンバー」
「ううん。わたしの方こそあんたたちのことを散々怪しいって疑って悪かったわ」
そのやり取りでアンバーは彼らを信じることに決めた。少なくとも彼らは身内を探している旅人であり悪人ではないと思った。