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僕の帰る場所

 目が覚めると、ふかふかのベッドに寝かされていた。天井も、壁も、家具も、知らない部屋。ここはどこだろう。
 隣のベッドでは、夙が穏やかな寝息を立てている。
 立ち上がろうとしてバランスを崩し、派手に転んだ。痛い。でも、良かった。生きてる。
 部屋のドアが静かに開いて、現れたのは美人なーー。
「目が覚めたか」
「男ぉっ!!?」
 驚きのあまり、そのまま声に出してしまった。し、なぜか大笑いされた。
「いや……ふふっすまない。少し、懐かしくて」
 そう言いながら、彼は膝をついて、僕の頭を撫でた。
「夙を守って、よくここまで辿り着いてくれた。ありがとう。
 君に紹介したい人がいるんだ。こっちの部屋に来てくれるかーーあぁ、夙の傷はしっかり治療しといたから安心してくれ」
 半ば強引に部屋から連れ出され、紹介されたのは、この館の主人・ティムス。これからしばらくの間お世話になるらしい。
 何もかもが突然だけど、もう僕には帰る場所は無い。
「よろしくお願いします」


 夙が目を覚ました数日後、僕とティムスさんに「やるべき事がある」と言って、夙は依頼人と館を出た。次の依頼を受けたのだという。
 また会えたらその時は、たくさん話をしよう。
 命懸けで走ってくれた君のこと、何も知らないんだ。


 カゴいっぱいの薬草を持って、ドアを開けると、師匠がいつもの笑顔で迎え入れてくれる。
「おかえり、キルシュ」
 だから、僕も笑顔で応えるんだ。
「ただいまっ」
 あたたかな光で満ちた魔女の箱庭。
 ここが僕の帰る場所。




20250420
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