好きな人
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『好きな人がいる』
昼下がりの午後。
親友の斗真と、その斗真の執事である超美形青年に、俺はそんな幼稚な嘘を吐いてしまった。
そして。
同日の夜。
俺は、とある男を我が家に呼び出した。
ソイツは、亀梨和也。
通称、亀。
俺のバイト先では同期で、年齢は・・・・・
・・・って、ソレの件はもうさっき軽く紹介してるから別にいいしょ(笑)?
とにかく!!
現状の危機を何とか回避できないか、頭が良くてシッカリ者のコイツに相談してみたんだ。
職場の中で一番親しいのもコイツ。
こう見えても本当に悩んでて、必死になって縋りついたってのに・・・・。
「くっ、っ、くく、アハッハハハッ!!(笑)」
「わ、笑うんじゃねぇ!この、馬鹿野郎!!////」
「ハハッ、わりぃ!もう我慢の限界っ・・!く、ハハッ!」
・・・・何故か、華麗なほどに爆笑された。
腹抱えて、床をドンドン叩きつけながら奇声を上げ続ける目の前の男。
俺って、・・一体・・何(苦笑)?
「ハハ、ハ、・・いやぁ~ウケる♪あー笑った!チョ~微笑ましい状況になってんじゃんか。
つか、馬鹿はおまえじゃね(笑)?」
「わ、悪かったなぁ馬鹿で!自分でもそう思ってるっつの・・。
どこも微笑ましくなんかねぇし、俺はこう見えても真剣でっ・・!」
「だろうなぁ~?おまえはそういう奴だよな。
・・まぁ、そんなおまえだから可愛いく感じるし、・・・他の奴なら馬鹿だなコイツ、って関わらないで終わるんだけど、おまえなら許せるっつーか・・・俺は好きだな。」
「・・・・え?//」
不意に向けられた・・どこか引っかかるような発言に、俺は落としていた目線を亀に戻す。
ソノ先には。
何秒か前までは口を大きく開けて声を立てていた亀だが、急に様になった顔付きで床に頬杖を突いていた。
焦点を俺に定めているのか、はたまた横たわっている体勢からなのか、上目遣いでコチラを見上げてきて・・。
・・・コレもまた強い意志が含まれている気がする。
珍しく真剣な眼差しを無言で俺に押し付けてくる亀。
缶ビールを手に取ろうと腕を伸ばしていたところまではよかったのだが、途中で熱っぽさを帯びた亀からの視線を浴び、俺は無意識にビクッと、少々身構えてしまう。
・・・・亀?
ハッと我に返った俺は、停止していた動作を再開し、ビールを掌に納めた。
・・何か今日多いなぁ、こういうの。
ったく。
ドイツもコイツも、何なんだよ一体。
言いたいことあるならもっとわかりやすく言葉にして伝えてこいよなぁ。
少々荒々しい熱を宿したコイツの瞳は、俺に『何か』を・・きっと訴えていたんだと思う。
何となくぴぃとちょっと似ているな、と感じた。
しかし。
やはりというべきか、『何か』・・というのを、コノ時の俺はまだ知る由もない。
・・・というか、考える気力が出ない。
「ふん。亀に好きとか言われてもなぁ~!//」
褒められることに慣れていない俺は、思わず茶化した口ぶりで顔を不自然に逸らした。
な、何ドキッ、となってんだ俺は?//
たかだか亀相手に!(←ヒドイ)
「・・なぁんか、臭うなぁ。」
「え!?俺!?さっき風呂入ったんだけど!」
「ばっ、ちげぇよバカっ(笑)!どこまで素でボケてんだよ!」
「・・え、違うの?・・す、好きでボケてんじゃねぇよ//
・・・ったく。なんだっつんだよ!」
「・・・・・ソノ、執事だよ。」
「・・・え、ぴぃが?」
「話聞いてるだけでもさ、何か奥深さを感じるんだよ。ソイツには。
こう、なんていうか得体が知れないっていうか・・。」
「・・・や、やっぱ亀も!?実は俺もそう思って「あと、おまえな。」
「・・・・・は?」
ぴぃへの、自分と同一の印象を口にする亀に、俺は湧き上がった興奮のまま食いつくが・・。
不可解な言葉と共に、ソレを亀に遮られてしまった。
・・・・結局、臭いの元は・・俺?
「・・・・おまえ、惚れてんだろ?ソノ、執事に。」
「っっぅぶっ!!っな、!!?//な、何でそうなるんだコラぁ!!//」
突然亀に正真正銘のまぎれもない事実を叩きつけられた俺は、タイミングが良いのか悪いのか、飲んでいたビールを自分でも清々しいほどの滑稽さで見事に噴き出した。
「そうなるような流れだろうが明らか。
しっかし、お坊ちゃまにもおまえにも一瞬にして好意持たれるなんて、よ~っぽど色気がある美人執事なんだろうなぁ~~。」
「・・・、ち、違うし!アイツ男だし!//そう言ってんじゃん!?
だ、大体、俺は男なんか好きにならねぇよ!女が良いに決まってるだろ!!」
「・・・・わっかりやす(ボソ)。・・・・っつーかマジ気に食わねぇ~。」
「・・??何が気に食わねぇんだよ?」
「べっつに。」
「・・・はぁ?」
眉を顰め、仏頂面で黙り込む亀。
俺が訳わかんねぇって面をすると。
その瞬間。
何を思ったのか、突然亀は不敵に口角を吊り上げると、長い間うつ伏せに寝そべっていた状態から自身の体を勢いよく飛び起こした。
「・・・うし!俺も是非会ってみたくなったぜ。おまえの親友坊ちゃんと、ソノ執事にな。」
「マジ・・?」
「協力してやるよ。」
「・・・本当に本当っ!?」
「ああ。いいぜ。」
・・ん?
頼もしい横顔だが、少しドス黒いオーラが渦巻いているように感じるのは俺の気のせいか?
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