好きな人
「マジかぁ!今度会わせろよぉ~♪見に行くから!じゃんじゃん遊びに行ってやる♪」
「・・ああ、そう・・。」
ほら。早速来たよコレ。
「照れてんのか?よっぽど惚れてるんだな!?だから考え込んでたのか。
・・ゴメンな?変な誤解とかしちゃってさ。好きな人できてよかったな仁!俺応援するからさ!」
「・・・サンキュ。」
斗真にしてみれば。
ダチの俺を祝福する心境と、恋敵になりそうな奴が消えたという心境が・・見事混ざり合った状態なんだろうな。
おそらくは。
何か、・・複雑~~・・。
「ぴぃ!おまえも一緒に仁の応援しようぜ!なんせ仁ってば、今まで沢山の女と付き合ってきたけど、ほとんどまともに長く続いた試しがないんだからなぁ。
次こそは永遠の愛を極めろよ♪」
「・・え、永遠って・・・。」
斗真はこう見えても結構ロマンチストで・・男のくせに運命の赤い糸とか信じてるタイプ。
友達も家族も本当に大事にするんだ。
恋愛関係も誠実に築いていくし、一度好きになるともうとこっとん一途。
まさに、絵に描いたふうな好青年だ。
ただ、恋が走り出すと周りが見えなくなる超情熱型だけども(笑)。
ソレがたまにキズ。
それでも、やっぱすげぇいい奴なんだよな、斗真はさ。
俺みたいな誤解されやすい奴とも妙な偏見なしで分け隔てなく真正面から明るく接してくれるし。
斗真とは中学からの付き合いだ。
当時、中学校に入学したばかりの頃、現在よりも人見知りで気が弱かった俺は、最初は誰に何を話しかければいいのかが思いつかず、何となく校内を1人フラついていた。
そんな俺に、一番初めに声を掛けてくれたのは斗真だった。
斗真のおかげで、俺の性格上スムーズとはいかないけども、それでも段々と色々な奴らへ交流は広がっていった。
斗真がいつも俺の背中を押してくれたんだ。
沢山の人間と関わり合うチャンスを与えてくれたんだ。
いくら感謝してもし尽せないんだよ。
だから俺も大事にしたい。
コイツとの友情は。
「おまえさぁ、俺が女ったらしみたいな言い方すんなよ~。俺、周りが思うより純粋なんだぜ?」
「わかってるって(笑)。でも仁ってモテるんだけどマジで長く続かないよなぁ。
つーことはだ。良い意味でも悪い意味でも、やっぱ癖が強いんだと思うよ。個性、っつの?だからさ、そんな仁自身をちゃんと受け入れてくれる人が現れればいいなってずっと俺思ってたんだ。」
「・・・癖ねぇぇ・・。」
完全に俺の恋路を応援モードに突入した斗真は、楽しそうに何やら語り出す。
俺はいたたまれなくて・・。
嘘をついたことによる罪悪感に胸を締め付けられ、ソレを何となく聞いては受け流していた。
ところが。
「私も是非見させて頂きたいです。仁様の意中のお相手を。」
「・・・・・・・へ?」
「そうでなければ、気になってしまって夜も寝つけませんから。」
・・・・驚いた。
そんなことを、アイツが言うなんて。
先ほどから暫しの間、不自然にも音沙汰のなかった人物から久しく発された、欲しくて・・欲しくて・・愛しくて・・・堪らないアイツの声が・・俺の耳に、甘く流れ込んでくる。
今度こそ完全に不意を突かれ、思わぬ人物から思わぬ言葉が飛び出したために、心地良い痺れが巻き起こり、睫毛に震えが訪れてしまう。
まるで、耳元で囁かれている錯覚に陥りそうだ。
ぴぃ・・。//