好きな人
ああ~~クソッ!・・自分でも泣けてきた!!
偽るのは・・・、ぴぃを想う気持ちだけのはずだったのに・・。
一度どこかで騙せば、ソレは根を這うようにしつこくどこまでも追いかけてくるのだ。
きっと・・。
本来の自分との矛盾が、段々と剝き出しになっていく。
元は正直者の俺。
だけど、今はなんだ?
斗真と自分を守るために・・・、自分や周りに嘘をついていくなんて、やっぱり俺も他の連中と一緒なのかも。
はぁぁ・・。
もう偉そうに物事語れなくなっちまうかな・・(苦笑)。
情けねぇ・・。
とうとう。
結局は巧く状況を回避する方法が見つからず、斗真に本格的に責められるのを覚悟した。
ソノ、時だ。
・・・事態は意外な展開を示す。
「・・・え。仁好きな奴いんの!?」
「・・・・・・へ?」
それまでは怒りの色に包まれていた斗真だったが・・。
何気なく零れ落ちた、俺の『好きな奴』発言に惜しみなく食いついてきた。
危険なオーラはどこへやら、斗真は興味津々に子犬の如くキラキラと瞳を息づかせている。
「なぁなぁ!誰々!?仁のすきな人誰!?いつから好きなんだよ~水臭いじゃん言ってくんないなんて!」
「・・は、はは・・。」
口元が明らかに引き攣っている俺。
もはや乾いた笑いしかでねぇ~・・。
つか、おまえ・・・何だかんだ可愛いよな・・。
俺、弱いんだよ、ソノ・・・小動物っぽい感じ・・(苦笑)。
けど。
折角何とか良い方へ話が向かってくれたんだ。
コノ、斗真の反応と言い・・・、今更『冗談』とか、・・無理だし・・(泣)。
そうなったら後が余計に怖い。
マジで情けない話なのだが、この時の俺には他の選択肢は存在しなかった。
「・・・・ほんの、ちょっと前から。バイト先にいるんだけど・・。」
あ。またしても、ヤベ。
バイト先って・・女いねぇじゃん・・。
俺のぶぅああかぁぁっっ!!
大学で知り合ったってことにすればよかったのか?
・・いや、待てよ。
つか、・・したっけ斗真も同じ学校なんだから、これから色々とやりづらくなっちまうもんな。
じゃあコレでよかったのかな。
にしたってなぁ~・・。
バイト先だって似たようなもんだ。
斗真が仕事場まで見に来れば、どっちにしたって面倒じゃね?
はぁぁ~~・・。
でも。
言い直すには遅かった。
ソレが許されるはずもない・・。