好きな人
「じ~ん?」
「仁様?」
「っわぁっ・・!!な、何!?」
二人からの声掛けの後、俺の視界一杯にぴぃと斗真の姿が映し出される。
ビクリ、と・・大げさに肩が波打った。
どうやら俺は知らぬ間に自分の世界へ意識を飛ばしていたらしい。
「何、って・・・コッチが聞きたいよ。突然ぴぃ見つめながらボーっとしちゃうんだもん。
ひょっとして、・・・ぴぃに見惚れてた?」
「えっ!な、なんだって!?//」
斗真の表情に鋭さが浮かび上がる。
俺は知っている。
斗真は、ぴぃが好きだから・・。
本気で恋愛対象として、特別に愛しているから・・。
友達の俺にも嫉妬心を露わにする。
俺は斗真からの冷たい視線と指摘を受け、内心ドキリとした。
ギシギシと、・・凄く痛くて・・。
刃物で胸を貫かれたようだ。
実際に、クエスチョンマークを主張させているぴぃと目が合ってから、一気に熱が俺の顔面に噴き出す始末。
若干の冷や汗を押し隠し、自然な言い訳を脳内から探して出してみる。
「・・・なんぼ話しかけても無反応だし・・自覚なかったの?つか、顔赤いんだけど・・・。」
「・・ばーか!気のせいだろ。ちょっと考え事してたんだよ。したっけ目を向けたとこに偶然ぴぃがいただけだろーが。」
「・・・・本当にそんだけ?」
「そうだよ!おめぇもしつけぇなっ!」
自然な言い訳、・・ねぇ・・。
御覧のとーり、俺は嘘が下手だ。
滅茶苦茶、・・下手。
うん。
自他共にソレは認めるぜ・・。
フッ・・(苦笑)。
「あの仁が考え事なんておかしい!おまえみたいな単細胞が物事を考える込むわけねぇじゃん!
やっぱぴぃに見惚れてたんだぁ!?」
「た、たんさ・・?!って、てめぇ、とことん失礼な奴!おまえ俺と長年のダチの癖して一体どういう目で見てきたんだよ!俺だってなぁ、考え事の一つや二つあるっつの!」
「へぇ~~!?そうなんだぁ!?」
「あ、信じてねぇな!大体なぁ、何で俺がぴぃに見惚れなきゃいけねぇの?俺、男興味ねぇし!女の子大好きだし!他に好きな奴いるしっ!!」
・・・・・・あ。
ヤバイ。
口から出まかせが・・。
嘘。嘘デス。
ボクにそんな人いませんよ~女の子大好きなのは本当だけど。
コノ正直者の俺様が嘘をポロポロ吐き捨てるなんてな・・。
いくら焦っているとは言え、よっぽど只今・・器に余裕がないみたいだ・・。
誤魔化すのに必死な俺。
コノ心情は・・斗真には知られたくない。
コレだけは知られちゃマズイから。
ダチの好きな奴には変なちょっかいは死んでも出さない。
俺の中での固い法則。
ダチは何よりも大切なんだ。
ダチを傷つける真似は絶対にしたくない。
そしたら・・・俺自身だって耐えられなくなる。
何も守れなくなる。
だから・・・・。